中国、「輸出急減」1~2月、コロナ禍で17.2%減と大揺れ「4年ぶり」
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中国経済が、コロナ禍で大揺れである。1~2月合算で発表された輸出額は、前年比で17、2%減に落ち込んだ。4年ぶりの大幅減少である。2016年以来の1~2月合算の輸出・入の増減率は次のような推移である。
輸出 輸入
2020年 -17.2% -4.0%
2019年 -4.5% -2.4%
2018年 23.7% 22.2%
2017年 3.7% 26.5%
2016年 -19.4% -17.0%
(資料;『ブルームバーグ』3月7日付)
エコノミスト予想では輸出が16.2%、輸入が16.1%それぞれ減少すると見込まれていた。輸出は、事前予想を上回る減少になった。貿易収支は70億9000万ドルの赤字。アナリストの予想は246億ドルの黒字である。予想とかけ離れた結果になった。
『ブルームバーグ』(3月7日付)は、「中国の1~2月輸出、ドル建て17.2%減 新型コロナで予想以上に減少」と題する記事を掲載した。
(1)「1ー2月は毎年、中国では春節の連休があるため、経済活動の変動が激しくなるが、特に今年は新型コロナの感染拡大で異例な展開となった。連休延長のみならず、隔離措置などで数週間にわたって経済活動の大半が事実上ストップし、移動や生産、輸送が混乱した。税関総署はウェブサイトでの発表文で、輸入への影響はそれほど大きくなかったとの認識を示した。中国政府は現在、企業に事業活動再開を促しているが、新型コロナ感染拡大前の水準への復活は容易には進まない」
米中貿易戦争は、「1段合意」によってさらなら米国による関税引上げは避けられた。だが、依然として重い関税がかけられている。すなわち、2500ドル相当分には25%、1200億ドルには7.5%の上乗せ関税が残されている。米中経済関係において、米国が中国に対して圧倒的な強さを持っていることを見せつけている。
普段は豪語する中国が、米国の前に立つとこれだけの差別的関税率を飲まされている。理由は、中国がWTO(世界保健機関)ルールに違反した貿易を行なってきたことへの「懲罰」である。中国が、米国から有無を言わせない圧力をかけられたのは、WTOに加盟した2001年12月以来、自由貿易原則を踏みにじった実態が、いかに大きかったかを物語っている。これを踏まえると、中国の対米輸出は今後、伸び悩むに違いない。中国のサプライチェーンは、今回の新型コロナウイルスの被害のほかに、構造的な米国の圧力に屈する事態となった。
(2)「UBSグループのシニアエコノミスト、張寧氏(香港在勤)は貿易統計発表前に、「中国の貿易活動は3月末か第2四半期の早い時期までに段階的に正常に戻るかもしれない」とした上で、「下振れリスクは向こう数四半期での新型コロナ感染の世界的拡大、つまり世界的大流行だ。そうなれば、世界の需要と中国の輸出を抑えかねない」とコメントした」
問題は、新型コロナ感染がいつ終息するかである。決して楽観できない情勢である。WHO(世界保健機関)は、東京五輪ですら無観客試合を想定する非公式会議を始めているほどである。このニュースについては別掲するが、短期終息論は影を潜めつつある。中国輸出が、第2四半期から回復するという予測は、現実を見誤る公算が強いのだ。
中国の1~2月貿易収支は、70億9000万ドルの赤字である。アナリストの予想では、246億ドルの黒字だった。これだけの誤算が出たのは、中国が、対米輸出での関税分を負担した結果とも読めるのである。そうでなければ、これだけの誤算になるはずがあるまい。
米国市場は、世界一の懐の深さを持っている。中国にとって、絶対に落とせない市場である。中国はいかなる犠牲を払っても、米国市場に繋がっていたいという切実な欲求を持っている。トランプ大統領は、この点を見抜いている。中国に対し、一貫した強気姿勢を取る理由なのだ。中国の抱える米国への弱味が、1~2月貿易収支で大幅赤字になった理由だろう。
中国は、相対的に米国へのバーゲニングパワーが低下してきた。今回の新型コロナウイルスは、中国にサプライチェーンを置くことのリスクを再認識させたからである。しかも、ウイルス発症責任を米国に押し付けるという、目に余る行動に出ている。これは、中国の責任回避の表れであり、根本的な問題解決をしないという意思表示と見える。SARS(2003年)に続いて、今回の新型コロナウイルス発症と、2回も世界を騒がせるウイルス感染源になった。その責任回避に急がしい中国当局の姿に、「反省」という二文字がないのだ。米国による、米中デカップリング(分離)の動きが強まるであろう。