韓国、「SF小説」、最低賃金の大幅引上げ完全破綻で「デフレ入り」 | 勝又壽良の経済時評

韓国、「SF小説」、最低賃金の大幅引上げ完全破綻で「デフレ入り」

 

 

 

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韓国の8~9月の消費者物価は、2ヶ月連続のマイナスとなった。1月以来、一貫して「0%台」であった消費者物価上昇率が、前記のように8月以降はマイナス圏に落込んだ。これを背景に、韓国国内でも景気警戒論が高まっている。

 

背景には、米中貿易戦争による輸出不振もある。輸出は、昨年12月から今年9月まで、前年同月比でマイナスである。韓国経済は、輸出立国だけに痛手は大きい。だが、それにも増して、内需不振が深刻である。

 

GDP成長率は昨年の2.8%から今年上半期は1.9%に鈍化した。成長率の急落よりも深刻な様相は、民間部門の成長力が極端に低下したことである。4~6月期の成長寄与度では、政府部門が1.8%ポイントと、民間部門は0.2%ポイントにすぎなかった。このように民間部門が急速に力を失ったのは、最低賃金の大幅引上げによる雇用破壊である。進歩派の文政権が、大企業労組のご機嫌取りで始めた最賃大幅引上げは、庶民生活を破綻させる結果となった。

『朝鮮日報』(10月2日付)は、「平和経済はSF小説、所得主導成長は寝言」と題する記事を掲載した。

 

韓国プレスセンター(ソウル市中区)で1日、「国家競争力強化、保守と進歩を超える第3の道」をテーマとする政策討論会が韓国経営者総協会(経総)の主催で開かれた。保守と進歩の経済学者が集まったが、文在寅(ムン・ジェイン)政権の経済政策に対する批判の場となった。専門家は経済政策に対する「政治過剰」を現在の問題点として挙げた。

 

この政策討論会では、保守・革新の双方が出席して文政権の経済政策を徹底的に批判する形となった。経済実態が悪化している以上、文政権としては批判を甘受すべき立場である。代表的な批判では、次のような批判が寄せられた。

1)「平和経済という空想科学小説のようなことを言うのはやめ、現実を見るべきだ」--趙章玉(チョ・ジャンオク)西江大名誉教授。

2)「景気が悪い最大の原因は世界的に貿易秩序が揺らぎ、不確実性が高いからだが、韓国政府にも優先順位と速度調整の面で政策的エラーがあった」--柳鍾一(ユ・ジョンイル)KDI国際政策大学院長」

 

1)では、平和経済という「南北交流による経済運営」が、韓国経済を支えるという「欺瞞情報」を批判したもの。現在の北朝鮮と経済交流を盛んにしても微々たるもの。雀の涙程度のことを誇大宣伝してきた。2)では、世界経済の流れに目を配り、国内政策を機敏に調節すべきであったという主張だ。最賃大幅引上げを修正するなど「速度調整」しなかった失敗を上げている。

 

(2)「討論の初題を担当した西江大の金広斗(キム・グァンドゥ)碩座教授は、「社会主義は歴史的に成功したことがない。パイを大きくして分配すべきであって、パイを小さくして分けるやり方では駄目だ」と述べた上で、「政治で手にした力で経済でも平等に分配しようと求めるのがすなわちポピュリズムだ。正義の経済政策とは、相対的に高い水準の賃金を受け取れる良質な雇用を多く創出することだ」と主張した」

 

曲がりなりにも、市場経済システムを採用する韓国が、労組や民団体の主張する「社会主義的」な政策の最賃大幅引上げを実行した誤りを自覚することである。この政策がなけば、ここまで韓国経済が不安定化することはなかった。韓国経済の基盤を破壊したのだ。

 

(3)「金教授は文在寅政権初期に国民経済諮問会議の副議長を務めた「Jノミクス(文大統領の経済政策)」の設計者だ。金教授は「当初は人間中心成長経済という用語を使い、人的資本に投資しようと提示したが、進行過程を見ると、投資は行わず、補助金の性格で賃金ばかりを引き上げ、雇用安定資金で埋め合わせている」とし、「個人的に失望した」と語った」

 

文政権は、ポピュリズム政権である。補助金のバラマキで人気を得ようとしている。すべて財政にしわ寄せさせて、次期政権に問題先送りで逃げよういうのだ。その意味では、労組的な体質を持つ政権である。

 

(4)「討論のパネラーとして登場した趙章玉名誉教授は、「過去2年余りの経済実験は国家経済を破綻の方向へ導いている。所得主導成長とは寝言で虚しく過ごした歳月だ」と批判した。趙教授は「この政府は大韓民国の政府ではなく、特定派閥の政府と言える。大韓民国の繁栄を追求するのか、特定の派閥の政権掌握を追求するのか、何を追求するのか分からない」とも発言した。趙教授は「2年半近くの政策失敗の中心には大統領の無知がある。経済をまるで知らない大統領はしきりに経済を語るが、もうこれ以上政策失敗をしないようにと忠告したい」と続けた。

 

文政権は、特定階層の利益奉仕が目的であると決めつけている。具体的には、労組と市民団体の利益増進である。いずれも、自ら利益を稼ぐことでなく、相手に要求するだけが目的の団体である。過剰要求になりがちだ。文政権は、その過剰要求を満たそうとして右往左往している政権である。与党の「共に民主党」は、階級政党であり国民政党に成熟できない矛楯を抱えている。

 

(5)「李仁浩(イ・インホ)ソウル大教授は、「分配が改善されれば、消費増大、投資増加、総需要増加につながる。所得主導成長の基本構造はそこから生まれたものだ」と述べながらも、「現政権は最低賃金を急激に引き上げ、自営業の基盤が崩壊し、分配も悪化した。結局現政権は分配をぶち壊し、景気がさらに悪化した」と分析した」

 

文政権は、一言で言えばアマチュアである。確かに、分配が改善されれば経済は活発化する。これには条件がある。生産性を引上げる過程での分配改善である。生産性が上がらずに、分配率だけ引上げれば、雇用が失われて、消費も投資も増大せず萎縮する。現状が、まさにこの局面である。この「さじ加減」を間違えたのが文政権である。アマチュア政権という批判は、避けられないのだ。