韓国、「延焼中」生産・消費・投資すべてマイナスの「大統領不況」 | 勝又壽良の経済時評

韓国、「延焼中」生産・消費・投資すべてマイナスの「大統領不況」

 

 

 

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文大統領は、南北交流さえ上手く行けば国内経済不振も吹き飛ぶと信じ切っている。だが、米国政府はいたって不機嫌である。米国務省は韓国外交部官僚対して、「開城工場や金剛山観光開発問題で訪ねてくるならお断り」と申し渡しているほど。

 

韓国にとっては、南北交流事業に国内経済の浮沈を賭けているが、実際はそれほどの効果を期待できるものではない。仮に、収益が上がってもすべては北朝鮮の取り分になる。韓国は支援のための財政支出が嵩むだけの話なのだ。それを、文政権が誇大宣伝している。

 

それどころか、韓国経済は日一日と危険ゾーンに落込んでいる。政府自体が、国内経済よりも南北交流に関心を向けているため、「経済が危険」という認識に欠けるのだ。世にも不思議な政権である。国内問題よりも北朝鮮重視という本末転倒なことが起っている。

 

『中央日報』(3月29日付け)は、「韓国、2月生産・消費・投資トリプル減少、先行・同行指数9カ月連続同時下落」と題する記事を掲載した。

 

2月の鉱工業生産、個人消費、設備投資の主要3項目が、すべて1月よりも落ち込んだ。これは、韓国経済の屋台骨がひっくり返るほど重大な事態である。本来なら、政府は主要閣僚を集めて対策を議論すべきだが、それはなかったようだ。無頓着というか、無関心というか、言葉がない。国民生活が、大きく影響を受けるという認識がないのだ。

 

以下、項目を整理しておく。


①2月全産業生産指数(季節調整系列)は前月より1.9%下落した。1月は3ケ月ぶりに増加した後、1カ月で再び減少傾向に転じた。これは2013年3月(-2.1%)以来5年11カ月ぶりの最大減少幅だ。 

②2月の設備投資は前月より10.4%減少した。2013年11月に11.0%減少して以来5年3カ月ぶりに最大幅の減少を記録した。

 

③2月の小売り販売額も前月より0.5%減少した。食料品など非耐久財販売が減り、乗用車販売が振るわなかった。2つの指標は共に1カ月で下落に転じた。 

前記3項目のうち、設備投資が10.4%も減少した。5年3カ月ぶりに最大幅の減少を記録した。輸出が停滞し始めたことを反映し、設備投資が落込んだものと見られる。とりわけ、輸出の20%を占める半導体の低迷を先取りして、設備投資抑制に動いたもの。

 

韓国経済は、輸出依存度が高い。世界経済停滞がこれから起れば、輸出停滞→生産停滞→設備投資停滞→個人消費停滞という形で韓国経済を襲ってくることは確実である。韓国政府は、これに対する備えはゼロだ。すでに内需を台無しにしている最低賃金の大幅引き上げが、内需全体の足を引っ張っている。その上に、輸出停滞が起れば、八方塞がりになる。文大統領は、こうした事態への備えはあるだろうか。全くそうした動きは感じられない。

 

(2)「現在の景気状況を示す指標である一致指数循環変動値は前月より0.4ポイント下落し、11カ月連続で下降傾向を継続した。2017年12月の0.5ポイント下落以来14カ月ぶりに最も大きく落ちた。今後の景気を予測する指標である先行指数循環変動値も0.3ポイント下落した。この指数も9カ月連続で下降している。一致指数と先行指数が共に9カ月連続で下落したのは史上初めてのことだ」 

 

文政権の経済官僚は、こうした景気循環上で重要な指標である、先行指数と一致指数が同時に9ヶ月連続で低下している事実に対して無反応であることが驚きである。こういう政府が世界に存在するのか。正直に言ってそういう感想を持つほどだ。私は昔、経済企画庁(現、内閣府)の景気判定委員を数年、務めた経験がある。韓国の景気動向指数が、ここまで落込んでいるのは、「不況」局面に入っている証拠だ。知らぬが仏というが、ただただ、驚くほかない。

 

大統領の経済知識ゼロでは国の経済保たない

韓国では、経済も政治もすべて「思い込み」で行なわれている。その思い込みは、学生時代の「浅薄」な知識に基づいている。その後、進歩していないところが深刻だ。学生時代、軍事政権に対抗すべく火炎瓶を投げて闘った。それは、若者特有の「正義」のしからしめるもので、誰も非難はできない。

 

問題は、その時の闘争仲間を大統領府秘書官に取り立てて政治を行なっていることだ。まるで、学生時代のサークル活動の延長のようなものである。学生運動家の思想と言えば、「反資本主義」が通り相場だ。社会へ出て揉まれれば、市場経済が統制経済よりもはるかに公正・効率であることが分かるはずである。文在寅氏と学生運動仲間は、北朝鮮の「チュチェ思想」に凝り固まった集団である。「親中朝・反日米」が根本にあるから、市場経済の仕組みを勉強する意欲も機会もなかったであろう。

 

その結末が、現在の韓国経済の惨憺たる状況を招いても、それすら正確に認識できない悲劇的な事態だ。医師に喩えれば「ヤブ医者」だが、医師として国家試験に合格するはずもない人たちである。それが、医師のような格好し白衣をまとい、聴診器を持っている。韓国の悲劇は、まさに学生運動家上がりが大統領府を占領したことにある。あるいは、「無能力者革命」と言ってもいい。

 

『朝鮮日報』(3月30日付け)は、「文大統領『経済堅調』発言の10日後に発覚したトリプルマイナス」と題する社説を掲載した。

 

(3)「今年2月の経済3大軸(生産・投資・消費)が一斉にダウンする「トリプルマイナス」を記録した。現在の景気の流れを示す一致指数循環変動値はアジア通貨危機以降、二十数年ぶりに11カ月連続でダウンを続けている。3~6カ月後の景気を占う景気先行指数も9カ月連続でダウンしており、見通しはさらに暗い。どれ一つとっても良い所がない。「半導体の錯覚」がなくなり、不振にあえぐ経済のありのままの姿があらわになった」

 

文大統領は、執務室に30種類程度の経済統計パネルを持ち込んでいる。就任時に、記者団に公開したほど。そのパネルを毎日見ているのだろうか。経済統計の仕組みを知らない文氏である。「猫に小判」だ。秘書にも、それを説明できる基本知識を持っている人間がいないに違いない。今さら、恥ずかしくて「経済知識がない」とは言えないのだろう。この経済に対する無知識・無教養が、韓国経済を混乱に陥れている。朝鮮李朝の「バカ殿」と同じ振る舞いだ。

 

景気動向指数は、森羅万象と言われる経済現象を30前後の指標にまとめたものだ。航空機のコックピットに並ぶ「計器」そのものが、景気動向指数である。この指数の見方が分らないのだ。パイロットが、コックピットの計器の読み方を知らないで「盲飛行」すると同じで、韓国経済は墜落の危険性に遭遇している。40%の国民が、こういう大統領を事情も知らないで支持している。「盲飛行」の乗客なのだ。

 

(4)「それにもかかわらず、経済を総括する企画財政部(省に相当)は半月前、「今年に入って産業活動および経済心理の関連指標は改善している様子で、肯定的なモメンタム(勢い)がある」と診断した。これでは国の経済総括省庁ではなく、まるで与党・共に民主党の経済研究所のようだ。このデタラメな報告をもとに文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「経済は堅調な流れ」にあり、「改善する様子が見られる」というとんでもない発言をする状況に至った。今年1月の生産・消費が増えたのは「旧正月連休特需」のためだとかなりの人が分かっていた。官僚たちはこれを伝えず、大統領の耳に心地いい報告しかしなかった。そうして文在寅大統領はまた、とんでもない発言で国民をあ然とさせた。こうしたことはこれで一体何回目だろうか」

 

下線を引いた部分を整理しておく。

① 経済を総括する企画財政部(省に相当)は半月前、「今年に入って産業活動および経済心理の関連指標は改善している。肯定的なモメンタム(勢い)がある」と診断した。

 

② このデタラメな報告をもとに文在寅大統領は「経済は堅調な流れ」にあり、「改善する様子が見られる」というとんでもない発言をした。

 

③ 今年1月の生産・消費が増えたのは、「旧正月連休特需」のためだとかなりの人が分かっていた。官僚たちはこれを伝えず、大統領の耳に心地いい報告をした。

 

景気動向指数の一致指数はアジア通貨危機以降、二十数年ぶりに11カ月連続のダウンを続けている。3~6カ月後の景気を占う景気先行指数も9カ月連続でダウンしている。こういう事態を深刻に受け止めなかった企画財政部は、「無能力」と言うよりも「職務放棄」に値する。

 

先行・一致の両指数が揃って落込む事態は普通、起らないものだ。先ず、先行指数が低下した後、一致指数の低下になる。それが逆転して、一致指数の低下が先に起ったのは、「最低賃金の大幅引上げ」という人為的なブレーキが突然かかった結果である。その意味で、今回の不況は「大統領不況」と命名すべきだ。