中国、「豹変」米国との協議に応じる背景に安倍首相の「助言」 | 勝又壽良の経済時評

中国、「豹変」米国との協議に応じる背景に安倍首相の「助言」

 

 

 

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12月1日の米中首脳会談以降、中国政府は会談について詳細な発表をしなかったが、5日になって初めて商務省が発表した。会談は成功し、実現に向けた準備をはじめるという内容である。

 

詳細発表まで5日間も費やしたのは、中国側が事前の想定内容と異なる会談結果になったので、国内での摺り合わせが行なわれていたのだろう。となると、今回の合意事項は米国側が提出し、習近平氏の単独意思で受入れたものと見られる。習氏が、事前に何も知らされていないわけでなく、安倍首相からも合意を勧められていたことが判明した。この点については後で取り上げる。

 

APEC(アジア太平洋経済協力会議)でも、中国が孤立していることは分っていた。共同宣言をとりまとめる段階で、参加国は米国案に賛成し、中国案への賛同国がいなかったのだ。WTO(世界貿易機関)のルール改定もいよいよ、具体的な日程に上がってきた。ここで、中国が米国と対立していても売るところは何もない。そういう認識になったことが、米国との協議を受入れる背景になっているのかもしれない。

 

私は「メルマガ11号」で、「米トランプに追い込まれた中国、習近平の座に揺らぎはないか」と題するレポートを発表した。苦悩する中国経済の実情と習近平氏への政治的不満を集中的に取り上げた。ぜひ、併せて読んでいただければ、混迷する中国の内情をさらに理解いただけると思う。

 

『ブルームバーグ』(12月6日付)は、「米産大豆とLNG輸入再開、中国準備、貿易合意を速やかに実行」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国商務省は5日発表した声明で、米国との貿易をめぐる会談について『非常に成功した』との認識を示した上で、協議での合意成果を実行することに自信を示した。詳細について言及は避けたものの、関係者によると、中国政府は米国産大豆と液化天然ガス(LNG)の輸入再開に向けた準備を始めたという」

 

米中会談が、非常に成功したと発表したのは国内向けであろう。米国に追い込まれた結果でないと、虚勢を張ったものと見られる。そうでなければ、5日間も内部協議をしているはずがない。

 

(2)「声明では、中国は米国とコンセンサスに至った具体的な事項の実行に速やかに着手すると説明。『予定表・ロードマップ』にある90日以内に米国と通商協議を前進させると指摘した。中国が協議期間を90日間であることを公式に確認したのは初めて。ただ、期限までに合意に至らなければ米国が追加関税率を引き上げる方針を示していることには触れなかった」

 

中国が、90日間以内に協議を進めると指摘した裏には、国内事情の急変があるはずだ。あれだけ、逃げ回っていた中国が、米国案に対して真摯に対応するという姿勢に転じたのは、中国経済の危機が引き金を引いている。この上、2000億ドルの輸出に25%関税をかけられたら、製造業のみならず他産業へも深刻な影響を懸念する事態になる。ファーウェイ副会長がカナダで逮捕され、米国へ移送されると見られる事件も圧力をかけられた。また、習近平氏への政治的不満を抑えるべく、急遽、舵を切ったと見られる。

 

(3)「一方、米国との協議に詳しい中国当局者は、米国産大豆とLNG購入に向けて必要な措置を講じるよう指示を受けたことを明らかにした。中国が大豆とLNGに賦課した報復関税を下げるかどうかや、輸入が行われる時期は不明。国家備蓄用の大豆購入を対象に実施したように、関税を支払った輸入業者に政府がその分を払い戻す可能性もある。米国への報復関税で中国による大豆やLNGの購入は落ち込んでいた」

 

米国産大豆とLNGの輸入は即時、再開する方針だ。高い関税分は、政府が後から戻す形になるようだ。中国が、ここまで米国へ譲歩したのは、経済危機回避と習氏への不満を防ぐという苦肉の策であろう。

 

安倍首相が習近平氏に米へ歩み寄り薦める

安倍首相が10月に中国を訪問した際、習近平国家主席に米中貿易摩擦に関連して助言をしたという報道が出てきた。香港『サウスチャイナモーニングポスト』(SCMP)が6日、情報筋を引用して報道したもの。韓国紙『中央日報』が転載した。

 

『中央日報』(12月6日付)は、「安倍首相、米中貿易摩擦で習近平主席に助言」と題する記事を掲載した。

 

(4)「香港『サウスチャイナモーニングポスト』(SCMP)が6日、情報筋を引用して報道した内容によると、先月末にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議を控えて、習近平主席は安倍首相に助言を求めた。これに対し安倍首相は、トランプ米大統領が習主席を尊重しているという点を想起させ、トランプ大統領と直接会って対話をするのがよいと述べた。安倍首相は、中国政府の国有企業支援や中国に投資した外国企業の知識財産権保護に関する問題も指摘した。そして、習主席に市場開放を拡大することを助言したという」 

日本の報道では、先の安倍訪中の際の夕食会で、両首脳は隣同士に座った。習氏から米中会談の助言を求められた安倍首相は、「お互いによく話合って」という所までは報道されたが、その先の話はなかった。実際は、かなり突っ込んだ話し合いがされていたのだろう。

 

(5)「安倍首相がこうした助言をしたことについて、SCMPは『安倍首相がトランプ大統領と緊密な関係を維持しているため可能だった』と分析した。実際、習主席は12月1日、トランプ大統領と夕食会をした。米国の追加関税適用を中断し、両国が貿易交渉を再開してから90日以内に貿易摩擦解消案を見いだすことで合意した。中国は安倍首相の訪中後、2011年の福島原発爆発事故後に禁止した原発周辺地域の農産物輸入を再開した。日中関係の改善に誠意を見せるためというのが関係者らの見方だ」 

 

この「安倍助言」によって、習氏は考え方を整理していたのだろうか。米中首脳会談では、安倍助言が効果を現して、米国の要求を受入れる心の準備を一人でしていたのかもしれない。ただ、それを指導部全体の意思にまでまとめていなかったので、帰国後5日間で根回しを終わったとも思われる。安倍首相が、米中会談の裏で果たした「美談」とも言えるのだが。

 

メルマガ8号 「日本に背を向ける韓国、来たるべき経済危機をどう克服するのか?」が、『マネーボイス』で紹介

まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。

https://www.mag2.com/p/money/590125

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