米国、「中国資本」歓迎から警戒対象になった裏に「スパイ活動」 | 勝又壽良の経済時評

米国、「中国資本」歓迎から警戒対象になった裏に「スパイ活動」

 

 

輝きを失った中国資本

国防権限法で中国厳戒

 

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米国では中国資本と聞けば、すぐに警戒対象にするほど、「チャイナ」が嫌われている。米中貿易戦争だけが理由でない。米国の機密情報を狙っていると見られているからだ。確かに、中国資本が米国へ進出意思を示しても、進出地点が米国の技術を窃取する上で好都合と判断される大学周辺や、米空軍基地の付近など、情報収集が便利と思われる地点が狙われている。

 

米国が、こうした露骨な動きをする中国資本に対し警戒するのは当然だ。中国も、米国が神経過敏なっている事情を察知して、対米直接投資を激減させている。中国人にとって、米国は住みにくい場所になったようだ。習氏が、21世紀半ばに米国覇権へ挑戦すると発言したことが、現在の事態を招いた理由である。

 

輝きを失った中国資本

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月26日付)は、「輝き失った中国資本、米国内で警戒広がる」と題する記事を掲載した。

 

米国では、中国資本の対米投資へ警戒感が広がっている。過去数年に急増した中国投資は、当初表明していたほど米国では雇用は生み出さなかった。また、国家安全保障を巡る懸念を強めるなどの理由で、中国資本が警戒されている。

 

ここで、最近の中国による対米直接投資の実態を見ておきたい。資料は、WSJから転載した。

 

2015年 149億ドル

  16年 456億ドル

  17年 294億ドル

  18年  21億ドル(2018年は上半期)

 

この推移を見ると、16年の456億ドルがピークで、今年の上半期は21億ドルと急減している。米国の警戒観と中国の資金流出抑制策が重なった結果と見られる。米国は、この程度の投資によって、米国の機密情報を盗み出されるより、進出されない方が「プラス」という判断であろう。中国も嫌われ警戒される存在へと成り下がったのだ。

 

(1)「中国人のデベロッパー、タン・ジシン氏は昨年9月、のどかなテキサス州タイラー市に16億ドル(1800億円)規模の集合住宅建設計画を携えてやってきた。地元の学校に数千人の中国人留学生を呼び込みとうし、周辺の郡に1000人以上の雇用をもたらすとの触れ込みだった。だが、地元当局者や有権者らはここにきて、安全保障上のリスクに加え、タン氏の資金調達能力や新規インフラに関する納税者の費用負担を巡り、懸念を口にし始めた。批判的な向きは、経済・軍事上の競合相手である中国政府からの指示、または資金援助を受けている恐れがあるとして、中国資本による投資案件は国家安全保障上のリスクだとみる」

 

中国人デベロッパーが、16億ドルという巨額の投資計画を持ってテキサス州へ登場した。だが、地元では安全保障を理由にして警戒感を持ち始めている。中国人留学生の宿泊施設建設目的だが、後述のように、テキサス州立大学の研究システムを利用する諜報目的でないかと疑われ始めているという。米国内が、ここまで神経をビリビリさせていることは、習氏の「米国覇権挑戦論」がもたらした余波に違いない。

 

(2)「テキサス州の実業家ブランドン・スティール氏は、前記のタン氏について『見掛け倒しで、何もできないのではないかと心配している』と語る。テキサス州議会のマット・シェーファー下院議員(共和) は、タン氏の留学生向け住宅施設について、仮にタイラー市にあるテキサス州大学の研究システムを利用することが目的なら、国家安全保障上の懸念を生むと指摘する。『中国は手段を選ばず、人材と専門知識を中国本土へと持ち帰る術を確立している』と」

 

中国4000年の歴史が、権謀術策の繰り返しであること。相手を「敵」と定めた場合の戦い方は、筋金入りである。こういう中国の歴史を知っている者に、中国が一筋縄でいかない国であることは周知だ。かつて、日本人学者の中西輝政氏は、「中国と没交渉であった時の日本は、最も平和であった」とその著書に記述している。現在の米中関係を見ていると、米国は中国と没交渉になるほうが安保上で平穏と言えそうだ。現に、その道を選び始めている。中国との「鎖国論」であろう。

 

(3)「ルイジアナ州の経済開発局によると、中国の玉皇化工と万華化学集団は、同州に工場の建設を計画している。両社あわせて直接的に約400人、間接的には2000人の雇用を生む計画で、建設関連で数千人の雇用も期待できるとしていた。玉皇化工が当初確約していた半分の雇用しか生まない見通しだと明らかにすると、同局は実績に基づき提供する金融支援の合計額を1000万ドルに縮小した」。

 

中国人は、最初に大風呂敷を広げて相手をこちらのペースに乗せる「交渉術」を心得ている。だが、話が煮詰まるとともに、当初計画を縮小していく例が多い。これを心得ている米国当局は、最初の話に乗せられずに、相手の計画に沿って金融支援をする「堅実型」になっている。

 

(4)「昨年は、中国政府の支援を受ける電気自動車(EV)メーカー、法拉第未来(ファラデー・フューチャー)が、ネバダ州から受ける予定だった3億3500万ドル規模の支援策を断念することを余儀なくされた。同州ノースラスベガスに10億ドル規模の工場建設を目指していたが、頓挫したためだ。背景には、ファラデーの出資者で、中国テクノロジー大手、 楽視網信息技術 (LeEco)の創業者、賈躍亭氏の資産を中国の裁判所が凍結したことがある。これに先立ち、クレセント・ハーディー元下院議員(共和、ネバダ)は、中国はファラデーの工場を使って、近隣にあるネリス空軍基地を偵察する恐れがあると警告していた」

 

中国政府の支援を受ける電気自動車(EV)メーカー、法拉第未来(ファラデー・フューチャー)が、ネバダ州へ進出予定であったが頓挫した。この計画には、近隣にあるネリス空軍基地を偵察する恐れが指摘された曰く付きのものである。

 

中国の諜報活動は奇想天外なことを企む。ホワイトハウスから約20キロメートル離れた場所に、中国政府が中国式庭園を建設して寄付したいと申入れたている案件がある。米国は、場所を提供するだけだが、中国の諜報活動を警戒している。とりわけ、中国がその庭園に塔を建てると言い出してから、一層の警戒感を持たれているという。そこへ、無人カメラを設置されると、ホワイトハウスが丸見えになるというのだ。どこまでも、相手国の情報を貪りたいという中国人の習性は、秦の始皇帝以来2200年も続いているDNAである。島国の日本人には考えられない中国人の発想法である。警戒すべき点だ。

 

米国は、中国の諜報活動を警戒しているが、この背後にはマティス米国防長官の強い要請が存在する。

 

国防権限法で中国へ厳戒

『ロイター』(5月8日付)は、「米国防長官、海外投資の監督強化を国防権限法案に盛り込むべき」と題する記事を掲載した。

 

米国が、「通商法301条」によって、中国の不公正貿易の実態を報告書にまとめた。これは、マティス国防長官の対中危機感が強く滲んだものでもある。このマティス書簡では、中国が手段を選ばず、米国の先端技術を盗み出そうとしている実態を明らかにしている。

 

(5)「マティス米国防長官は連邦議会に対し、国防権限法(NDAA)案に海外からの投資に対する監督強化を盛り込むことを求める書簡を送った。ロイターが確認した。中国が米国の機密性の高い技術にアクセスすることを制限するのが目的とみられる。4日付けの書簡は、両院の軍事委員会における共和党の委員長や民主党の主要議員に宛てたもので、対米外国投資委員会(CFIUS)の権限強化をNDAA案に含めることを要請している。CFIUSは、外国企業による米企業の買収などについて、国家安全保障上の問題がないかを審査する機関である」

 

マティス国防長官が、国防権限法という国防予算を決める法律に、海外からの対米直接投資に対して監督強化する条項の挿入を求めた「異例の書簡」である。国防予算とは直接の関係がない事項であるからだ。だが、中国からの対米直接投資は、米国の先端技術を盗み出す目的の投資が紛れ込んでいるので厳重にチェックし、米国の安全保障維持に寄与させるべきである。これが、国防予算の拡大と同じ意味を持つという認識であろう。ここまで指摘するほど、中国の諜報活動が米国の安保戦略にデメリットをもたらしていたに違いない。

 

(6)「マティス長官は書簡で、海外からの投資を支持するとした上で『敵対する諸国がわが国の現行法や規制の弱点を研究し、いまも悪用していることをしっかりと見極めることが必要だと、国防総省は確信している』と述べた。さらに『特に大きな懸念は、合弁事業を通じて技術移転や関連企業の支援を強いる、強制的な産業政策により、国家安全保障上のリスクが生じるのではないかということだ』との見方を提示した。NDAAは連邦議会で毎年審議される主要法案の1つで、国防予算の水準を承認し、予算をどのように使うかを管理する政策を策定する」

 

マティス書簡では、「特に大きな懸念は、合弁事業を通じて技術移転や関連企業の支援を強いる、強制的な産業政策により、国家安全保障上のリスクが生じるのではないかということだ」と結論づけている。米中貿易戦争の本質はここにある。中国が、進出してくる外資系企業から技術を窃取することは公然の事実だ。中国は、「市場と技術の交換」と称して、悪びれもせずに要求している。

 

この知財権無視の行動こそ、中国の工業化を実現した「悪徳パワー」である。また、WTOが禁止している企業への補助金政策によって、強引な企業育成策を行なっている点も指摘している。中国は、西側諸国にとって「不倶戴天」の存在になった。ルール違反を公然と行い、自らのルールを押しつけてくる国であるからだ。遅かれ早かれ、米中は衝突する「運命」であろう。

 

マティス国防長官が要望した「国防権限法」の強化は、上下両院において意見の一致を見た。

 

『ロイター』(7月24日付)は、「米上下院、国防権限法案一本化で合意」と題する記事を掲載した。

 

国防権限法は、中国の猛反対を受けたが成立の運びになった。米国が、中国を「修正主義国」と名指しで非難している以上、国内法を整備して水も漏らさない体制を整える必要がある。米中関係はここまで悪化した事実を認識すべきであろう。「親中論者」にとっては、頭の痛い問題が起こってきた。

 

(7)「米上下院は、国防予算の大枠を定める総額7160億ドルの国防権限法(NDAA)案の一本化で合意した。海外勢による対米投資の審査を厳格化し、米政府機関の海外製通信機器の利用に関する規制を強化する規定が盛り込まれた。上下院の軍事委員会の指導部が合意を発表。両院の本会議で再可決した上で、トランプ大統領の署名を経て成立する。法案は、安全保障上の懸念を理由に、米政府機関が中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)と華為技術(ファーウェイ)の技術を利用することを禁じる項目が盛り込まれた。法案には、海外勢による対米投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化し、安全保障上の懸念に対応できるように審査対象を拡大する規定も含まれている」 

 

米国政府は、安全保障上の理由によって中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)と華為技術(ファーウェイ)の技術を利用禁止とした。これらメーカーは、外国情報窃取の先兵的な役割を果たしていると警戒されてきた。それが、条文化されるものだ。ともかく、中国のスパイ活動は常識の域を超えており、「何をするか分らない」という不気味さを持っている。こういう警戒心がなく、「親中、親中」と言っている人の姿を見ると驚くほかない。

 

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(2018年7月29日)

 

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