中国、「一帯一路」弱小国食い荒らす債務トラップ外交の「恐怖」 | 勝又壽良の経済時評

中国、「一帯一路」弱小国食い荒らす債務トラップ外交の「恐怖」

 

 

 

習外交に訪れた試練のとき

一帯一路を食いものにする

 

 

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中国外交は、苦しい場面に追込まれている。米中貿易摩擦は、貿易戦争にまで拡大する気配を見せており、米国の強い態度に押しまくられている。米国による360億ドルの追加関税(関税率25%:実施は7月10日)初弾の際は、意気軒昂であった。「中国は断固闘う」と息巻いていた。中国のこの姿勢に怒ったトランプ大統領は、5000億ドルの追加関税(関税率10%)を発表し、8月末に実施する方針を明らかににした。

 

これに驚いたのが中国政府である。ここまで戦線を拡大されると、もはや対応不可能である。従来の徹底抗戦の方針を引っ込め、「話合い」を臭わせ始めている。この軟化路線では、「一帯一路」への見直しムードも含めている。

 

中国国内メディアによると、中央政府は一帯一路に関する宣伝報道や発表を自粛している。指示では、次の2点を強調したという。1.マーシャル・プラン(米国による経済疲弊国救済計画)中国版ではない。 2.一帯一路はイニシアチブ(構想)であり、戦略計画ではない。この報道自粛指示は、関係国のなかで起きている懸念、例えば債務超過で現地政府機能を低下させ中国の影響力を強化する「債務トラップ外交」、また軍事圧力、現地政府の腐敗を招く金満外交など、ネガティブな論調を抑える狙いがある(『大紀元』7月5日付「中国で一帯一路、報道自重ぎみ、評判振るわず」)

 

「一帯一路」プロジェクトは、米中貿易戦争の焦点になっている「中国製造2025」と深い関係がある。中国の経済圏拡大の先兵である「一帯一路」でテリトリーを固め、ここを地盤にして「中国製造2025」で培ったハイテク技術を武器に政治的、経済的な拡大路線を軌道に乗せる。その暁に、米国の軍事覇権に挑戦するという大構想である。だが、米国はこの中国構想を完全に見抜いている。そこでまず、貿易戦争で「中国製造2025」を叩き、「一帯一路」も中国による「債務トラップ外交」を明確にして、中国外交のあくどさを浮き上がらせる戦略であろう。

 

習外交に訪れた試練のとき

中国の「習外交」は行き詰まりを見せている。これを反映した共産党内のゴタゴタ情報が出ていることに要注意である。

 

『共同通信』(7月15日付)は、「習主席統治に不満噴出か、党内に異変相次ぐ」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国共産党内で、権力集中を進める習近平国家主席の統治手法に不満が噴出しているとの見方が出ている。国営メディアが習氏への個人崇拝批判を示唆、習氏の名前を冠した思想教育も突然中止されるなどの異変が相次いでいるためだ。米国の対中攻勢に手を焼く習氏の求心力に陰りが出ている可能性も指摘される。『習近平同志の写真やポスターを全て撤去せよ』。12日、習氏の宣伝用物品を職場などに飾ることを禁じる公安当局の緊急通知の写真が出回った。通知の真偽は不明だが、写真は会員制交流サイト(SNS)などで一気に拡散された」

 

(2)「同時期に国営通信の新華社(電子版)は、毛沢東の後継者として党主席に就任した故華国鋒氏が個人崇拝を進めたとして党内で批判を受けた経緯を詳述する記事を伝えた。党が80年に『今後20~30年、現職指導者の肖像は飾らない』と決定したことにも触れた。記事はすぐ削除されたが、習氏を暗に非難したと受け止められた」

 

この記事を読むと、中国国内で習氏の指導力に対する不満があることが推測できる。習氏の指導の下で「中国製造2025」と「一帯一路」の両計画を推進してきた。それが今、形勢不利となれば、これに深く関わった習氏の力量が問われかねまい。

 

一帯一路を食いものにする

『大紀元』(7月17日付)は、「中国紙、債務外交批判で日本に矛先、専門家『日本と中国は違う』」と題する記事を掲載した。

 

この記事では、中国が日本を批判したことに対して、他国が中国を逆批判する形で話が展開している。これによって、中国の「一帯一路」プロジェクトに参加した国が、中国の債務トラップ外交の餌食にされていること明白にしている。こういう点が、中国の脇の甘さだ。他国を批判するには、論拠を明確にしないと「やぶ蛇」に終わる。中国が、他国を食い物にしている意識もなくやっているならば、「倫理観の喪失」結果である。

 

(3)「中国主導の現代版シルクロード構想『一帯一路』は、関係国のインフラ建設で、返済能力を汲みしない融資を結ばせているとして、英語圏有力紙は酷評している。中国官製紙は最近、この『債務トラップ外交』と呼ばれる批判をかわすため、発展途上国に借款を結ぶ日本を例にあげ『なぜ西側諸国は日本を責めないのか?』と矛先を日本に向けた。専門家は、『日本と中国の手法は違う』と反論した」

 

中国は、相手国の返済能力を調べずに融資=工事に着手している。竣工後、債務が返済できなければ、あらかじめ契約条項に示された通りの担保権を執行して、物件を差し押さえる。中国にとってはそれだけの話であり、あたかも国際高利貸しと言える。日本の場合は全く異なるのだ。日本はODA(政府開発援助)という名目で行なう。相手国が返済できるように、低利・長期の返済済計画を立てる。むろん、ODAだから無償援助も含まれる。最初から、相手国の支払い可能を前提にした返済の「設計」をするのだ。中国は高利貸しである。相手の支払い能力に無頓着である。高利貸し稼業の中国が、この日本を批判するとは、現状を弁えない振る舞いである。

 

(4)「スリランカは、一帯一路構想に基づくインフラ整備を受け入れ、巨額融資を受けて同国第3の国際港コロンボ港を建設した。しかし、国の経済規模にふさわしくない巨大港の未熟な運営計画により、返済目途が立てられない。このため政府は2017年7月、同国主要の国際港であるハンバントタ港を、中国側に99年契約で運営権を貸し出した。共産党機関紙『環球時報』(7月15日付)は、中国国内シンクタンクの中国現代国際関係研究所のワン・シー準研究員のオピニオン記事で、このスリランカの債務過多問題について『西側メディアは誤解を招いている』と反論した」

 

中国は、スリランカの財政力から見て、返済不可能な融資を承知で工事に着手した。安保戦略上においてインドを包囲すべく、スリランカを中国陣営に組み込む目的であった。中国が今になって、きれい事を言って国際的な批判を免れようとしても、それは大国・中国のやることではない。日本のODA精神から言えば、中国も返済不可能な金額免除するくらいの度量を見せるべきだ。中国は、債務免除をしないで担保権を執行する。この当たりに、最初から担保権狙いであったことを示唆している。

 

(5)「中国のワン氏は、インドの戦略研究家ブレーマ・チェラニー氏が、一帯一路は債務トラップ外交だと批判していることを例にあげて、『中国陰謀論は、欧米メディアの根拠のない誇大広告だ』と主張した。負債過多はスリランカの政治的不安定さと低収入、福祉政策などによるもので、『中国はその責任を負えない』とした。さらに、2017年の同国統計を引用して、スリランカの借款(国家間の融資契約)は日本が12%、中国が10%だが、『日本を批判しない西側メディアはダブルスタンダード(二重基準)だ』と述べた」

 

一帯一路が、中国の「債務トラップ外交」であることは明白である。中国外交では、伝統的にトラップ(罠)を仕掛けて相手を窮地に立たせて、中国の意のままに動かす権謀術策が得意である。「ハニートラップ」が、その代表的なもの。女性を使い、狙った相手に近づけて籠絡する。こうやって相手の弱味を掴んで由自在に操り、機密情報を得るという古典的スパイ行為である。中国が、この面で世界のトップだ。

 

スリランカの借款では日本が全体の12%、中国が10%である。この金額差から見て、日本を批判しないで中国だけを批判する。西側メディアはダブルスタンダードだ。中国はこう言って逆襲するが、見当違いも甚だしい。貸付金利が問題なのだ。高利貸しは、高い金利を付けて返済できない場合、遠慮会釈なく担保を抑える。中国のやっていることは、高利貸しそのものである。

 

(6)「インドの戦略研究家ブレーマ・チェラニー氏は、同日中にSNSで返答した。『環球時報さん、私の名前が挙がった以上、答えますね。あなたはスリランカが中国により背負わされた負担を過小評価しています。日本によるプロジェクトの金利は0.5%に過ぎないのに、中国は6.3%です』」。

 

中国の貸付金利は6.3%。日本は0.5%である。中国は、日本の金利の12.6倍である。この金利差を見れば、中国は最初から「ビジネス」として貸し付けていることが分る。一帯一路は、中国のビジネスの場であった。国際協力という美名に隠れて、自らの野望実現の舞台として一帯一路を利用してきた。この日中の金利差が、中国の野望を雄弁に物語っている。

 

中国の行為には、必ず裏があると見て間違いない。全てが打算で始まっている国である。一帯一路は当初、「マーシャル・プラン中国版」というふれこみであった。だが、年利6.3%もの金利を貪るビジネスが、無償であった「マーシャル・プラン」中国版を称するのは、恥ずかしくて口にもできない話だ。中国政府が、メディアに対して「マーシャル・プラン中国版」という表現を使わないように「口止め」したのは、自らの行為を恥じた結果であろう。

 

(7)「ほかにも、ワシントン拠点のシンクタンク南アジア遺産基金の研究員ジェフ・スミス氏は、中国の一帯一路に関する問題を列挙した。『日本は(外国における)インフラ計画の取引で、機密を犯したり、主権を侵害したりするような内容を盛り込まない。腐敗を促す違法な政治献金や、債務をほかの港の見返りに差し出させるようなことはしていない。コロンボ港のような高額計画にも、(政治)宣伝に利用したりしない』と指摘する」。

 

日本のODAと中国の一帯一路には、なぜこれほどの違いがあるのか。煎じ詰めれば、民度の差であろう。中国では、この「民度」という言葉が持出されることを最も嫌がる。これが、中国の本質を突いた言葉であるからだ。「モノ、モノ」と声高に叫ぶ物質至上主義の中国は、精神面の発達が全く遅れている国である。こういう前近代性の上に、共産主義政権が樹立した結果が、現在の跛行的な社会を生み出した理由である。精神的に未熟な国家が中国である。それゆえに、「世界覇権を狙う」などと臆面も無く言えるに違いない。普通であれば、恥ずかしくて言えない言葉のはずだ。

 

(8)「環球時報の記事のコメントには、中国側の意見に反論がほとんどを占めた。『日本は友好を築こうとしている、中国は支配しようとしている』『日本は、植民地主義に基づいて海洋戦略上重要な位置にある地域を借金漬けにし、港を99年契約で貸し出させるよう迫ってない』『普通の融資国なら、情報提供や共有を要求したり、返済できないことが明らかな、腐敗しきった国のリーダーと融資を結んだりしない』などだ」

 

実に、辛辣なコメントが中国に付けられている。これを自国の恥と思わなければ、今後の発展は望めないであろう。およそ、反省のない国家だから「馬に念仏」であろう。これが、GDP世界2位の国家へのコメントであることに、恐怖感すら覚えるのだ。軍事力だけ肥大化して、倫理面で劣っている中国の存在は、世界を波乱の坩堝に追込む危険性を秘めているに違いない。

 

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(2018年7月21日)

 

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