中国、「軍産一体体制」軍は防衛型から拡張型へ「世界覇権狙う」 | 勝又壽良の経済時評

中国、「軍産一体体制」軍は防衛型から拡張型へ「世界覇権狙う」

 

 

 

軍事国家への道をひた走る

空母盾に海外領土拡張狙う

 

「新たに、『勝又壽良のワールドビュー』を開設します」

http://hisayoshi-katsumata-worldview.livedoor.biz/

 

どの国でも、軍隊は本質的に膨張型である。シビリアンコントロール(文民統制)が、必要な理由もここにある。中国はこれまで、人民解放軍の役割は本土防衛型と宣言してきた。だが、空母建艦によってその性格は海外拡張型へ転換した。他国領土へ支配権を及ぼそうという「帝国主義軍隊」の性格を前面に出すことを決めた。

 

EU(欧州連合)の軍隊は、典型的な意味で国土防衛型である。EU加盟国の安保体制の確立に資する目的である。日本の自衛隊も国土防衛型である。こういう軍隊であれば問題はないが、中国人民解放軍は、「海外解放軍」へと性格を変えてきた。その第一歩が、南シナ海で島嶼奪取による軍事基地化である。

 

先進国の軍隊は現在、第二次世界大戦までの領土拡張主義を卒業して、国土防衛型へと転換している。その中で、中国はあえて領土拡張型へと舵を切った理由は、国威発揚というメンツに関わった話だ。「中華帝国」を前面に出して「遅れてきた超大国」を演じたいのであろう。

 

軍事国家への道をひた走る

『SankeiBiz』(7月12日付)は、「米に中国軍産一体脅威論、対中制裁を断行、強硬姿勢の背景に」と題する記事を掲載した。

 

この記事では、中国が2050年を目途に米国に対抗する軍事力を備えることを発表したが、それを裏付ける「産軍一体体制」の構築に対して、米国が対抗する姿勢を明確にしている。中国伝統思想は、「大同主議」の実現である。国民は互いに助け合い、身分による権力の継承を拒否する民主的な制度を4000年前から渇望してきた。現在の中国は、この大同主議から逸脱しており、権力は選挙によらず身分で独占する点で、著しく伝統思想に背いている。

 

この中国が、「遅れてきた超大国」を演出しようとしている。独裁国家が世界秩序に挑戦して、自らの版図の拡大を目指すという信じがたい行動を展開しようとしている。かつての「非武装中立」を旗印にしていた中国が、ここまで変貌しようとする動機は何か。「中華帝国時代」が懐かしいというものだろうが、明らかに時代錯誤の振る舞いと言わざるをえない。

 

(1)「トランプ米政権は、ハイテク技術の覇権を狙う中国の産業育成策『中国製造2025』に対抗し、中国への制裁関税を強化する方針だ。強硬策は、米技術の流出防止が目的だが、民間の技術力を底上げし、先進的な軍事技術の獲得につなげようとする中国への警戒感も一因となった。米国では『中国の軍事と民間は一体だ』との不信感があり、ハイテク分野の米中攻防は長期化する見通しだ」

 

中国のIT企業は、政府との関係を深めている。「デジタル・レーニン主義」と呼ばれる政府による国民監視システムには、IT企業が動員されている。国民による日常の生活は、IT利用を通じて100%、政府が把握しているという不気味な社会に転落している。その意味では、中国に「プライバシー」が存在しない。この空間で、国民は生活を余儀なくされている。北朝鮮民衆と本質部分では似通った状態へ追込まれている。「人民」を代表する政府が、「人民」を弾圧する政府になっている。この中国政府が、世界覇権を目指す。調子に乗りすぎていることは言うまでもない。

 

(2)「米政権が7月10日、関税を適用する中国製品を2千億ドル(約22兆円)相当とする追加制裁を表明したのは、中国製造2025を実現するため、中国が米国の知的財産を侵害しているとみているためだ。中国は次世代技術の本命とされるAI(人工知能)などの分野で世界屈指の競争力を握る目標を掲げる。ハイテク分野に国家主導型で乗り出す中国に対し、米政権は『経済的侵略だ』(ナバロ大統領補佐官)と敵対姿勢を隠さない。強硬策に振れる米国の対中政策は、軍事・安全保障面での中国脅威論も背景にある。米国からの部品輸出が禁止された中国通信機器大手、中興通訊(ZTE)をめぐっては、『ZTEの通信機器を通じて米国の秘密が中国当局に漏れる』(米議員)などと、米国内の不信が表面化した」

 

中国は、IT企業を支配下に収めていることから、中国の民間企業ですら警戒しなければならなくなっている。IT企業を使った「経済侵略」はすでに始まっている。こういう事情から、米国は次のような対応策を決めた。

 

「米国では国家安全保障上の理由によって、中国国有通信大手中国移動(チャイナモバイル)の携帯通信事業参入を阻止する動きが出ている。同社が米でサービスを提供すれば、米国民もネット検閲の対象になりかねないと指摘した。一方、同社サービスを利用する中国人観光者が米国に訪れる際でも、中国のネット検閲システムがついて回る。チャイナモバイルは2011年に、米連邦通信委員会(FCC)に対して米市場参入の申請を提出した。米国と外国との国際音声トラフィックサービス提供を望んでおり、米国内でモバイルサービスを展開するつもりはないとしていた。ブルームバーグによる、商務省の電気通信情報局(NTIA)は7月2日電子メールで、申請を却下するよう米連邦通信委員会(FCC)に勧告した。同メールでは、チャイナモバイルの免許申請は『容認できない国家安全保障と法執行上のリスクを突きつける』と米情報機関担当者の提言を記された。また『中国政府に利用・操作されやすい』指摘した」(『大紀元』7月10日付「米、チャイナモバイルの市場参入計画を却下、中国当局の監視に懸念」)

 

中国政府は、口先ではフレンドリーを装っている。だが、本質部分では「乗っ取り」を策するという「三国志演義」の世界である。相手を踏み台にしてのし上がろうという意欲は、他民族に見られない強烈さだ。黄河の中原から始まった漢民族が、現在の広大な版図まで拡大した裏には、絶えず相手を利用する抜け目のなさが働いてきた結果であろう。

 

もう一つ、中華帝国で評価される基準は、国土拡張であろう。毛沢東は、ウイグル自治区・チベット自治区・内蒙古自治区を支配下に収めた。習近平氏は、南シナ海と尖閣諸島を手に入れたい。それには、アジアから米軍を追い出すことが前提になる。習氏が、その準備を始めたのは確実である。この実現によって、習氏の歴史的評価は毛沢東に並ぶのだ。こういう個人的な欲望が歴史を動かす動機になっている。ヒトラーはこれで失敗し歴史に埋もれた。さて、習氏はどうなるかだ。

 

(3)「米通商代表部(USTR)がまとめた中国による知財侵害の報告書は、先進技術の開発力を底上げするため、産業界と軍事部門が一体的に取り組むよう求めた中国の政府方針『軍民融合』に注目している。軍民融合は2014年、『国家戦略』に格上げされ、17年には専門の監督組織が新設されたという。軍事と民間を両輪として産業振興を進める戦略は、民生品を軍事用にも転用する『デュアルユース』と呼ばれる技術動向も後押ししている。かつて軍事から民間に広がった技術として、インターネットや衛星利用測位システム(GPS)が知られている。だが近年は、半導体レーザーやセンサーなど、優れた民生品を軍事用に改善して利用するケースが増えている」

 

中国は、産業界と軍事部門が一体的に取り組む「軍民融合」に乗り出したという。まさに、「軍事国家」の成立である。IT企業が、政府の情報収集の一部門に成り下がっている背景には、この「軍民融合」=「軍事国家」という一連の環の中に組み込まれていることが分かる。ここで軍事国家の定義をすると、最大の国家目標が軍事拡大に置かれている国家という意味である。中国は、極めて危険な存在の国家になっている。

 

(4)「“軍産一体”となってハイテク振興策を進める中国への懸念から、米政府は、輸出品を制限する輸出管理制度を強化する検討に入った。トランプ米大統領は6月下旬、『米安全保障と技術面のリーダーシップを守るため』として、商務省に検討作業を指示。米メディアによると、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)も作業に参画する」

 

私は、中国の存在を危険視してきたので、冷戦時代のココム(COCOM)の復活を提案してきた。軍事国家である中国に対して当然、行なう必要がある。ココムとは、1949年発足し共産圏国家への輸出を統制してきた。ソ連崩壊で1994年に解散したもの。ソ連が崩壊して世界は平和になったと喜んだが、再び中国がソ連に代って軍事覇権を前面に出して挑んできた。共産主義政治とは、こういう軍事覇権に挑戦しなければ存続し得ない国家組織であることを証明している。

 

空母盾に海外領土の拡張狙う

『大紀元』(7月10日付)は、「世界覇権を狙う中国、軍改革で国土防衛型から対外拡張型へ」と題する記事を掲載した。

 

この記事は、米軍の戦力を見くびる内容である。中国の奢りが、中国に危機をもたらすに違いない。現代史において新たな軍事国家の勃興する過程が露わになってきたことは、民主主議の脅威であると同時に、時代錯誤の共産主義国家の衰退を目の当たりにする機会として記録すべきである。歴史上、数々の軍事国家が登場し消えていった。習氏は、自国経済の基盤が脆弱そのものであることを理解していないから、このような歴史に学ばない奇想天外なことを言い出している。しかも、自ら言い出した「強軍思想」を拠り所にするという。毛沢東を意識した振る舞いである。

 

(5)「リークされた中国人民解放軍の内部資料によると、中国が2015年末から進める大規模な軍の組織改革では、これまで『国土防衛型』から『外向型』にスイッチし、軍事的影響力を海外に拡張する方針であることが明らかになった。文書では、中国共産党政権が米国、日本、ロシアを先例とし、『大国は軍事強国であることが不可欠』と覇権を狙う野心を表した。共同通信が内部資料を入手し、7月3日に報じた。文書は、中国軍の最高機関である中央軍事委員会の政治部門が、習近平主席による『強軍思想』を教える教材として、2018年2月に内部で配布したものだという」

 

習氏が、歴代の国家主席に比べて「軍事パレード」が好きであることは分っていた。部隊を閲兵する気分は格別のものに違いない。それが昂じて、人民解放軍は「外向型」にして領土拡大の先兵にする意思を示した。困ったことに、「大国は軍事強国であることが不可欠」という認識を深めている。その例として、米国、ソ連、日本が挙げられている。ソ連と日本は、軍事国家になって失敗した悪しき例である。中国も、この失敗した国の後に名前が載る危険性が高いことに気づいていないのだ。

 

米国の覇権は、基軸通貨ドルを手にしており、世界最大の市場の規模と深さを保っていることが背景にある。つまり、自由でオープンな市場が米国の強さの秘密である。中国が、米国並みの市場開放度を維持するならば、中国共産党は自壊するリスクを抱えている。共産主義は、閉鎖的社会でしか生き延びられない「隠花植物」である。自らの性格を理解しないで、米国へ挑戦することの「無駄」を知るべきである。

 

(6)「これまで組織改革は、指揮系統の近代化などと説明されてきたが、方針転換していることが、このたびの文書で明確になった。中国軍の拡張が続けば、東シナ海、南シナ海、朝鮮半島、台湾など、日本をはじめとする周辺国との摩擦が強まる可能性がある。防衛型から外向型へ転換する理由について、『中国の国益が国境を越え広がるにつれて、緊急にグローバルに国の安全保障を維持する必要がある』としている。また、『強い軍事力は強力な国になるためには必要不可欠であり、米国、ロシア、日本の発展がこれを証明している』と3カ国を先例にした」

 

世界に覇権国は一つあれば足りる。米ドルが基軸通貨である理由を考えれば、中国にその資格がないことは自明である。よって、中国は米国に取って代われない運命である。軍事力で対抗することは、核戦争も辞さない決意であろうが、習氏個人の欲望を満たすために核戦争をするとは、悪魔的な発想法と言わざるを得まい。ここまで来たら、正気の沙汰ではない。治療法は医師にしか分るまい。

 

(7)「文書は、『より影響を与えられる状況を作り、危機を抑え、紛争を収め、戦争に勝つ』ために、軍隊の力は米国を上回ることを目指すとある。また冒頭で、軍の組織改革は、軍の最高指導者である習近平主席による『強軍思想』に基づき、中国の特色ある新社会主義に則るべきだとした。さらに、米軍の力を『曲がり道を走る遅い車』と例え、ハイテク兵器や最新兵器により軍事プレゼンスで優位に立てると鼓舞している」

 

習氏は、自らを神格化する準備を始めている。自身による「強軍思想」で世界一の軍隊をつくり挙げるとしているからだ。世界覇権に値する価値を持たない中国が、仮に軍事力を蓄えても世界の孤児になるであろう。米海軍を頂点とする環太平洋合同演習(リムパック)は現在、ハワイ沖で実施中である。参加国は26ヶ国だが、中国海軍は直前になって招待を取り消される事態を招いた。南シナ海の窃取が原因である。こうした包囲網で将来、中国を動けぬようにするだろう。

 

中国は、世界一の軍事力を可能にできる経済成長力を維持できるだろうか。不動産バブルの後遺症の過剰債務は手つかずの段階で、世界一の軍事力を持つ夢がいかにかけ離れたことかを知ることだ。習氏は、18世紀型の国家像を描けるが、21世紀型は無理であることを自ら証明した。

 

【お知らせ】

ライブドアで「勝又壽良のワールドビュー」と題するブログを開設しました。「勝又壽良の経済時評」で取り上げられなかったテーマに焦点を合わせます。「経済時評」が中国論であれば、「ワールドビュー」で韓国論を取り上げるように工夫します。両ブログのご愛読をお願い申し上げます。『勝又壽良のワールドビュー

 

(2018年7月16日)

 

韓国破産  こうして反日国は、政治も経済も壊滅する 韓国破産 こうして反日国は、政治も経済も壊滅する

 

Amazon

 


勝又ブログをより深くご理解いただくため、近著一覧を紹介

させていただきます。よろしくお願い申し上げます。

勝又壽良の著書一覧