韓国、「支持率に影」文大統領4週連続で低下「経済問題が足かせ」 | 勝又壽良の経済時評

韓国、「支持率に影」文大統領4週連続で低下「経済問題が足かせ」

 

 

 

支持率低下に見える不満

経済音痴の文政権に試練

 

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「雇用大統領」を看板に掲げて大統領に当選した文在寅氏は、就任後に失業者の増加という皮肉な結果となった。今年の最低賃金を一挙に16.4%も引き上げたことが仇になったもの。これだけの最賃引上が可能な企業はわずかで、大半の零細企業はやむなく従業員を解雇する始末だ。最賃の引上げが失業者を増やすというアベコベ政策に、韓国経済界は頭を痛めている。

 

この文政権は、革新政権だがいたって権力的な振る舞いをしている。経済界から不平不満が出ると、「積弊一掃」という名の下に難癖を付けて威嚇する「トンデモ政権」なのだ。表面的に柔和な文氏だが、取り巻き連中がかつての学生運動の闘士だ。敵陣営をつるし上げる術に長けている。「ああ言えば、こう言う」連中である。弁解の達人でもある。こうして経済政策の失敗を認めようとせず、間違った自説を主張している。

 

だが、毎月の雇用者増はふるわない結果になっている。10万人台の増加に留まっており、世間の批判が沸騰し出している。これが、ここ4週連続の文大統領支持率低下に現れている。

 

支持率低下に見える不満

『聯合ニュース』(7月13日付)は、「文大統領支持率69% 4週連続で下落」と題する記事を掲載した。

 

(1)「査会社の韓国ギャラップが13日に発表した世論調査結果によると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率は前週に比べ2ポイント下落した69%となった。支持率の下落は4週連続。不支持率は3ポイント上昇の21%だった。不支持の理由は『経済・民生問題の解決不足』(45%)が圧倒的に多く、次いで『対北関係・親北傾向』(9%)、『最低賃金の引き上げ』(6%)などが続いた」


文氏の支持率は、下がったと言ってもまだ69%もある。政権維持にはゆとり充分だが、これまでの「不敗記録」が途切れてきたことは気になるところ。経済問題は、そもそも発想法を間違えている以上、解決の見込みはない。このまま屁理屈を言いつづけ、前政権と経済界を悪者に仕立てて、逃げ切り作戦を立てるのだろうか。浮かばれないのは庶民である。大統領選で、文氏に一票投じた人たちがバカをみるのは気の毒だ。

韓国文政権は、念願の南北対話の扉を開き米朝会談への仲介役も果たした。だが、これだけで国民生活が豊かになる保証はない。韓国国民は、文政権の外交手腕に拍手を送ったが、この熱気はいつまで保つわけでない。日々の暮らしをどうしてくれるのか。そういう切実な悩みは、一つも解決していないのだ。高い失業率と世界最悪の出生率。革新政権の看板が泣いている。

 

文在寅政権で、経済民主化公約を総括している公正取引委員会の金尚祖(キム・サンジョ)委員長が、朝鮮日報のインタビューに応じた。その口からは、「切迫」「いら立たしい」「危機」といった言葉が何度も飛び出したという。市民団体の幹部の身で政権に入ったが、「経済規制改革が必要」と言うまでになっている。在野の市民団体は、「反大企業主議」を強烈に打ち出している。いざ、政権の人間になって見れば、そんな「太平楽」を言っていられないことを認識したようだ。国民の台所を預かることは、きれい事だけ言っていれば済むものではない。それを、肌身で知ったようである。

 

『朝鮮日報』(7月11日付)は、「韓国公取委委員長、成果ない文政権の経済政策にいら立ち」と題する記事を掲載した。

 

(2)「金委員長とのインタビューは6日、ソウル市内の公正取引調停院で行われた。文在寅政権の経済政策で中心的役割をするブレーンに、この1年間の経済運用に関する評価と、今後の計画について説明を聞こうと企画されたインタビューである。金委員長は『国民が耐えて待ってくれる時間はあまり残っていない。こうした状況を文大統領もよく分かっており、規制改革点検会議を中止するほど切迫感を抱いている』と言った。また、『今年下半期から経済環境がいっそう厳しくなる可能性が高い。政府が成果を出す時間的余裕は短くて6カ月、長くても1年しか残っていない』と述べた」

 

この記事を読むと、文政権が経済面で一つも成果が出ていないことに焦りの色を見せている。国民は、黙って待ってくれるものでない。金委員長は、今年下半期から経済環境が悪化することを自覚している。だが、その対策の具体案が見えないのだ。

 

(3)「金委員長は、『文大統領が2年目に入り、規制革新のための政治的決断に頭を痛めている。支持層の批判を受けざるを得ない非常に難しいことだが、規制改革がなければ政府は成功できないということをよく分かっている』と言った。規制革新を推進する過程で、文大統領の支持層である進歩系陣営の反発が避けられないため、これを受け止めて正面突破する方針だという説明が続けられた。この1年間の文在寅政権による経済政策の成果については、『所得主導成長・革新成長・公正経済という3つの軸が別々に動いていた面があり、政府も反省している。今は動きがそろってきたと感じている』と説明した」

 

文政権は、この5月から2期目に入った。支持層は「反企業」で凝り固まっている。規制緩和には絶対反対と主張しているのだ。この身内の反対論をどのように説得するのか。先ず、ここから取りかからなければならない。ともかく、カネを稼いだ経験の無い支持者の「空論」が支配する世界である。これを克服するだけで、勢力を使い果たす恐れも強い。どうなるか、だ。

 

ここで問われるのは、文政権が労組や市民団体の利益に奉仕する「階級政党」か。そうではなく「国民政党」を標榜するならば、改革を実行しなければならない。文政権が、問われているのはこの点だ。南北問題では、こういう議論はないが経済問題の解決には、支持母体の意思に反しても「国民政党」として行動することが求められる。

 

経済音痴の文政権に試練

経済問題は今や、待ったなしの段階である。

 

『中央日報』(7月14日付)は、「韓国政府、投資・消費・雇用減るが8カ月連続『回復傾向』」と題する記事を掲載した。

 

この記事では、韓国政府の景気認識がいかに「甘い」かを指摘している。雇用が悪化しているにもかかわらず、全産業の生産が増えていることを根拠にし、景気は順調と言い張っている。だが、雇用が悪化していることが全てを雄弁に物語っている。全産業の生産が伸びていることは、輸出の数量増加が影響している可能性が大きい。そういう面での詳細分析をすることなく、「景気は良好」とは言えないはずだ。

 

韓国経済を語るには、対GDPの輸出比率が50%を超えていることでわかるように、米中貿易戦争の影響を最も受けやすいグループに入っている。グローバル・バリュー・チェーン(WTO調査)では、韓国が62.1%と世界5位だ。これは、世界経済が動揺を起こすと、その影響が極めて大きいことを示唆している。こういう肝心な面での対策がゼロである。

 

(4)「投資と消費が減少し、就業者数の増加幅は10万人台にとどまっている。こうした状況でも韓国政府は『経済は回復傾向』という立場を維持している。企画財政部は13日に発表した『最近の経済動向』7月号で『最近の韓国経済は全産業生産が2カ月連続で増加するなど回復の流れが続いている』と発表した。景気回復に言及したのは昨年12月から8カ月連続だ」

 

韓国政府は、昨年12月から「景気は回復」と言い続けている。ならば、雇用も順調に増えて完全失業率は低下すべきである。この点が、全く逆であって雇用状態は悪化している。雇用が悪化して景気が好調などという例はないのだ。

 

韓国政府は、最低賃金を引上げれば景気が持続するという「所得主導成長論」に立っている。これは、誤りだとの説が圧倒的多数に達している。現実には、①生産増加→②設備投資増加→③雇用増加→④所得増加→⑤消費増加→⑥完全失業率低下、という循環を描くもの。政府の主張は、①、②、③を飛ばして、④所得増加だけに力を入れているのだ。

 

(5)「回復傾向と話すには各種指標が良くない。就業者数の増加幅は先月10万6000人と、5カ月連続で10万人台にとどまった。特に良質の雇用と評価される製造業の就業者数が12万6000人減り、前月(7万9000人)より減少幅が拡大した。5月の設備投資は運送装備投資が減少し、前月比3.2%減、前年同月比4.1%減となった。小売販売も前年同月比1%減と、2カ月連続で減少した。乗用車のような耐久財(-33%)の減少幅が大きかった」

 

就業者の毎月の増加幅は従来、20万人台であった。それが、最近の5ヶ月は連続で10万人台へ低下している。とりわけ、製造業の雇用が落ちている点が深刻である。これは、設備投資の落ち込みと関わっている。企業による韓国経済の期待成長率が、低下している証拠だ。韓国の政情は、文政権の後も革新政権の続く見込みが強くなっている。革新政権は、「反企業主議」の立場が鮮明だ。これでは、企業が萎縮して設備投資に踏み切れない。こういう悪循環に落込んできた。革新政権の継続が、韓国経済を衰退させるパラドックスが起こっている。

 

(6)「専門家は景気沈滞に対応すべきだと指摘した。梨花女子大国際大学院のチェ・ビョンイル教授は、『現在の韓国経済は赤信号とまでは言えないが、大きな警報が鳴っている状況』と指摘した。チェ教授は『最低賃金引き上げや週52時間勤労制などで閉鎖する自営業者が増えれば、雇用状況はさらに悪化するしかない』と話した。信栄証券のキム・ハクギュン研究委員は『景気先行指数のKOSPI(韓国総合株価指数)が最近、年内最高値に比べて10%ほど落ち、経済協力開発機構(OECD)が発表した韓国の景気先行指数も2月から3カ月連続で悪化したのをみると、景気回復の流れが持続するのは難しいだろう』と分析した」 

韓国政治の欠陥は、物事の結果に性急さを求めることだ。卑近な例で言えば、角を回るに際して「直角」である。これでは、リアクションが起こって当然である。日本では、カーブを回るように時間をかけながら、次のステップへ進んでいく。これが一見、遅いようでも早く効果が出る道だ。韓国は、こういう改革の奥義を知らないで騒ぎ立てている感じが強い。最低賃金も一度に16.4%も引上げれば、これについて行けない企業が出るはずだ。こういう配慮がゼロの国である。文政権は、その最たるケースである。

 

(7)「現代経済研究院のハン・サンワン総括本部長は『経済がさらに悪化する前に補正予算を通じて財政政策を展開する必要がある』と述べた。延世大経済学部のソン・テユン教授は『補正予算で成長率3%達成は可能だと見込んでいたが、指標を見ると容易ではなさそうだ』と懸念を表した」 

 

景気が悪化すれば、すぐに財政支出依存というお決まりのコースが話題に上がる。これは正しい選択であろうか。最大の要因が、雇用をめぐる政府の規制にある以上、これを緩和ないし撤廃することが、最大の対策になるはずだ。労組や市民団体の鼻息を窺っているのは「階級政党」の弱点である。これを乗り越え、「国民政党」としての度量を示す段階になっている。支援団体を甘やかしてはならない。国民全ての生活に関わる問題である。

 

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(2018年7月18日)

 

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