韓国、「新政権」巧妙な原理主義で「少女像」の撤去を拒否へ | 勝又壽良の経済時評

韓国、「新政権」巧妙な原理主義で「少女像」の撤去を拒否へ

 

 

呆れた大臣候補3人の行状

与党代表の三百代言に驚く

 

文在寅(ムン・ジェイン)政権を支える与党「共に民主党」は、聞きしに勝る原理主義集団である。政権の座について以来45日間が過ぎ、新閣僚候補者の経歴を見ると、「脛(すね)に傷持つ」メンバーがずらりと並んでいる。いずれも、文大統領の強い推薦というから、側近の者も反対できず公表されたという。韓国国会では野党の猛烈な反対にあっている。当然であろう。

 

人間誰でも失敗はある。それをとがめ立てることは慎まなければならぬが、人から後ろ指を指される人間を大臣に指名するのは、任命権者文大統領の識見が問われるのだ。過去は過去、というものの過去は現在と未来につながるものだから、信頼感を損ねる危惧を拭いきれないのだ。

 

日韓慰安婦問題に対する韓国新政権の対応は、後述の大臣候補3人の過去を知りながら、あえて候補者に押し上げた背景がよく似ていることだ。大臣候補問題では、身勝手な与党「共に民主党」だけに通じる理屈を持ち出しているが、慰安婦問題に対する姿勢も同じである。相手側がどのように反応するかを考えずに、間違った「原理主義」で強引に迫ってくるのだ。慰安婦問題では、日本も腹を据えて対応し、一切の妥協を拒むべきである。合理性は、日本にあるからだ。

 

呆れた大臣候補3人の行状

『朝鮮日報』(6月17日付)は、社説で「チョ・デヨプと金相坤氏も閣僚指名を辞退せよ」と主張した。

 

社説の内容は、韓国の左翼陣営がいかに精神的に腐敗しているかを物語っている。日本人であれば、ここまで旧悪が公にされれば、自ら大臣候補を辞退するはずだ。問題を抱える3大臣候補のうち一人は辞退したが、残りの二人はこの原稿執筆時点では辞退しないでいる。韓国人は慰安婦問題で、自らを高い道徳観の持ち主としており、日本を指導すると言っていた。いやはや、韓国人の道徳観も地に墜ちたもので、日本を批判する資格など全く持ち合わせていないのだ。

 

(1)「文在寅大統領から法務部(省に相当、以下同じ)長官に指名されていた安京煥(アン・ギョンファン)ソウル大学名誉教授が16日夜に自ら指名を辞退した。安氏はこの日朝に行われた記者会見で、過去に交際していた女性の印鑑を偽造し、相手が知らない間に結婚届を提出したことと、これによって家庭裁判所から婚姻無効判決を受けていた事実を認めた。会見の際、安氏はこの問題について一旦は謝罪したものの辞退はせず、国会で人事聴聞会に出席した上で国民の評価を受ける意向を示していたが、その日のうちに一転して辞退に転じた。当然の判断だ」

 

法務大臣候補が、45年前とはいえ交際中の女性の印鑑を偽造して偽の婚姻届けを出したという。その本人が、素知らぬ顔をして法務大臣とは、余りにも世間を甘く見た話だ。文大統領は大臣候補者に5つの条件を課したが、明白な違法行為を働いた人間が法を守るべき役所の最高責任の座に座ることは許されない。

 

(2)「今回の安氏の辞退は、たとえ大統領の支持率が高くとも、国民を納得させられない場合は閣僚人事も思い通りできないことを改めて示した。雇用労働部長官に指名されているチョ・デヨプ高麗大学教授も問題は深刻で、すでに明るみに出た飲酒運転による免許取消しに加え、自ら起業に加わった会社で賃金未払いが常態化していたことも発覚した」。

 

文大統領は、大統領選挙の得票率は41%であったが、就任後の支持率は80%を超えている。「非正規雇用者を正規雇用に変えさせる」というポピュリズム発言がアッピールしたに相違ない。この「大衆人気」に支えられて、何でもできる、と錯覚しているのだろう。「原理主義者」の一端を垣間見せている。

 

雇用労働部長官に指名されているチョ・デヨプ高麗大学教授も深刻だ。飲酒運転による免許取消しに加え、自ら起業に加わった会社で賃金未払いが常態化していた。この事態はどう見ても、大臣の資格に欠ける。まともに賃金を払わない企業の創立に関わった人間としては道義的な責任を免れない。韓国では、中小企業労働者は、大企業労働者に比べて劣悪な賃金水準に泣かされている。しかも、その安い賃金をまともに払っていないとは驚きである。

 

(3)「教育副首相に指名されている金相坤(キム・サンゴン)元京畿道教育監(教育委員会の教育長に相当)はこれまで執筆したわずか3本の論文のうち、修士論文と博士論文では他人の論文の盗用、これとは別のたった1本の論文も二重投稿の疑惑が持ち上がっている」。

 

教育副首相に指名されている金相坤氏は、研究者として生涯に執筆した論文は3本しかないという。通常、研究すればその成果を世に問いたいというのが研究者本能である。それが3本に過ぎないのは、研究実績のない証明であろう。その3本がいずれも疑惑まみれである。修士論文と博士論文は他人の論文の出典を示さず、あたかも自分の意見のように繕っていた。これは、「盗作」と呼ぶものだ。もう1本も二重投稿が疑われている。まさに、研究者としては失格である。こういう人間が教育副首相とは、不適格であることはいうまでもない。

 

私のこのささやかなブログでも、出典を明らかにして引用している。ところが、学会事情に馴染まない人からは、「自分の知識をひけらかしている」というコメントがついたことがある。こういう無理解な意見を聞くと、脱力感に襲われるのだ。前記の金相坤氏のような脱法行為は、研究生命を落とす危険があるのだ。どうか、こういう事情を知っていただきたい。

 

6月13日現在、17ある部処のうち15部処で大臣(長官)が指名されたという。「ふたを開けてみるとやはり選挙の功労者、あるいは文大統領と考えが近い人物中心の人事スタイルがかなり露骨で、すでに指名が行われた15人の大臣候補のうち、大統領選挙で陣営のスタッフだった人物は11人に上る」(『朝鮮日報』6月14日付)。

 

つまり、左翼陣営から登用しており、反対派の保守派は除外されている。文大統領は就任にあたり、「協治」という言葉を使って保守・革新を統合する政権を目指すはずであったが、身近な「原理主義集団」で固めている。これが、この社説でやり玉にあがった3人のような「問題人物」が生まれる背景でもあろう。

 

前記の問題人物3氏が、いずれも大学教授であることに注目していただきたい。儒教社会では、学問のある人間を最高に評価さするという「錯誤」が存在する。この通念が、物の見事に間違っていることを暴露している。韓国の「左翼集団」は、儒教社会の「原理主義集団」と言って良さそうだ。朴槿恵・前大統領も「反日」に見せた原理主義は相当のものだったが、文大統領を支える「左翼」は、さらに強固な原理主義集団と見られる。

 

この牢固とした原理主義集団である韓国左翼は、日韓慰安婦合意についていろいろと物言いをツケ始めている。文大統領は、最初から「韓国国民は情緒的に受け入れない」と発言している。これは、ソウルや釜山の日本公館付近から「少女像」を撤去しないという宣言でもあるのだ。日本公館付近の「少女像」設置は、ウイーン条約違反である。こうした国際法違反を「韓国国民は情緒的に受け入れない」という、感情論で放置する無責任な態度である。中国が、南シナ海問題で常設仲裁裁判所の決定を「紙くず」呼ばわりして無視している。その態度と韓国は瓜二つなのだ。儒教社会の中韓は、揃って国際法を無視する困った存在である。

 

与党代表の三百代言に驚く

『中央日報』(6月14日付)は、「日本の慰安婦合意主張 韓国与党代表が韓国のことわざで一蹴」と題して、伝えた。

 

この記事では慰安婦合意について、日本に派遣された韓国特使発言と異なり、あくまでも日本に謝罪を求めるという姿勢を示している。文大統領とこの「共に民主党」代表は、韓国政府が慰安婦合意をあくまでも実行しない決意を表明したと見るべきだろう。日本政府も、甘い期待を持たずに言葉は悪いが、「外交的に締め上げる」意思を見せてけん制すべきだ。

 

(4)「 秋美愛(チュ・ミエ)『共に民主党』代表が 12日、秋代表は自身のSNSを通じて『(日本自由民主党の訪韓団に会って)慰安婦に対する日本の明白な謝罪と韓日慰安婦再交渉を要求した』と明らかにした。 秋代表はこの日、国会党代表室で安倍晋三首相の特使として訪韓中の二階俊博自民党幹事長や議員らの表敬訪問を受けた。秋代表の説明によると、二階幹事長は両国間の約束なので(慰安婦)合意は守らなければならないと主張した。 これについて秋代表は、『約束なので守らなければならないというのは、契約法上の論理に過ぎないと反論した』とし、『被害者を脇に置いたまま、真実の発見にはいかなる努力もしなかった国がいくばくかのお金を出して合意したことに韓国国民は同意できないとはっきりと声を上げている』と伝えた」

 

「共に民主党」の秋代表が日韓合意の履行について、「約束なので守らなければならないというのは、契約法上の論理に過ぎない」と反論したという。ご本人は、慰安婦問題は、「契約法」を超えた問題だとしている。この記事の後で、慰安婦問題は「人権という自然法概念」であり、契約法より上位概念とまで言っている。一般論ではその通りである。法律では、「公序良俗」に反する契約は無効としている。この場合、「公序良俗」が自然法の位置にあるからだ。

 

秋氏は重大な事実を見落としている。慰安婦は、当時の日本では「公娼制度」で合法化されていた。韓国では慰安婦が、強制連行という朝日新聞の誤報記事を真実とする仮説に基づいている。だから、人権問題としてとらえ「自然法」概念が日韓合意に優先すると見ている。ここが間違いなのだ。

 

強制連行説は、日本人の吉田清治が小説(フィクション)として発表したものを、朝日新聞が事実として報道し世界中に虚報をばらまいてしまった。最大の責任は、吉田と朝日にある。慰安婦は、当時の日本では自由意志によるものだから、現在の概念である「人権思想」で取り上げ議論するのは、飛躍した見方である。この問題は、私もこれまで繰り返し証拠の書物を提示して、慰安婦が自由意志に基づく志願であることを示してきた。

 

秋氏は、慰安婦合意という契約を履行しない理由として、慰安婦を「人権問題」にすり替えている。すでに日本側は、10億円を「問題解決金」として韓国に支払い、元慰安婦の方々の過半が受領済みだ。受け取り拒否は11人で少数派である。韓国政府は、当人が受領した解決金について、「国民が情緒的に受け入れない」として拒否する。これは、どういう論理なのか。慰安婦問題によって、日本をもう一度揺さぶり、「少女像」を撤去しない口実に使おうとしている。大変な「三百代言」的な言い方である。日本は理屈の上でも、絶対に韓国の言い分を認められない。

 

(5)「 秋代表はまた、『慰安婦問題は戦時に幼い少女を性奴隷として連行していった人権と正義に関する自然法の問題であり、契約法論理を適用できないと伝えた』と付け加えた。秋代表は最後に『“千両の借りも一言で返す”という韓国のことわざで、お金よりも信頼が重要だと繰り返し強調した』とし、『近い隣国同士、正すべきことは正し、相互尊重して良い関係に進むことを希望する』と伝えた」

 

慰安婦問題は、戦前の「公娼制度」下で起こった問題である。この点は、韓国側がいかなる理屈をつけても変わらない事実である。当人の自由意志で行なわれたものだ。それを現在は否定するが、韓国は今も昔も「虚言」を弄することの多い社会である。今回の大臣候補者の見せた過去が、最高学歴者でもやってきた恥辱であり、倫理感の一片も感じられないことだ。こうなると、韓国社会に巣くう病根と言うほかない。

 

秋氏の言い分は、日韓政府間で取り決めたことを反故にしようとしている。朴・前政権において、外務大臣は再交渉があり得ないと繰り返し発言している。この手前、再交渉とは言わずに「少女像」の撤去を実行しない口実に「韓国国民の情緒」を持ち出している。元慰安婦の過半は受領済みである。韓国はこの現実を覆い隠してはならない。

 

日本側の提供した「解決金」10億円の過半を分配済みの段階で、秋氏は「お金よりも信頼が重要だと繰り返し主張した」とは、どういう意味なのか。もらうべき金を受け取った。さらに、もう一度謝罪せよと言っているのだ。こんな理不尽な要求があるか。ならば、最初から金を要求すべきでなかった。日本は当初、1億円を提案した。それを10億円に引き上げたのは韓国側である。今になって、「金より誠意」とは驚く。口とは、便利なものだと実感する。韓国人の信用を落とすだけである。

 

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(2917年6月25日)

 

 

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