韓国、「北の核脅威」米軍は先制攻撃態勢「F―35B」緊急追加 | 勝又壽良の経済時評

韓国、「北の核脅威」米軍は先制攻撃態勢「F―35B」緊急追加

 
 

北の核弾頭は最大で60発

ステルス戦闘機16機配備

 

韓国野党は暢気なものだ。依然として、THAAD(超高高度ミサイル網)の設置に反対している。北朝鮮の核攻撃の危険性など、端から頭にないようである。同じ朝鮮民族だから、韓国へは核を落とすまいと楽観している。野党系メディアも情緒的だ。問題は、そんな楽観論を吹き飛ばすような事態に向かっている。北朝鮮はすでに核弾頭60発を生産できるところまできたのだ。

 

現状は、10発以下とされるが今後、時間が経てば経つほど危険性が高まるので、米軍の先制攻撃でこれを除去する準備が開始されている。日本としても対岸の火事ではすまされない。重大な関心をもって臨むべきだ。10日の日米首脳会談で、トランプ米大統領は北朝鮮について、「非常に危険」であると指摘した。「非常に」という言葉を二度も使った点に、事態の急変をうかがわせている。

 

次のニュースは、前述の危機感を具体的に伝えている。

 

『朝鮮日報』(2月10日付)は、「中国は韓国を地図から消そうとした国」と題して、こう報じた。

 

「『現在の韓国社会の状況を見ると、2年、3年後には韓米両国が“北朝鮮の核能力の高度化を防ぐ方法はない”ことを認めざるを得ない状況が来るだろう。私の感覚が間違っていることを祈りたい』(元米国務省当局者)。本紙と米国のシンクタン『ブルッキングス研究所』、韓国国家戦略研究院(KRINS)が共同で9日に開催した非公開の討論会で、米国側から参加した元米国務省当局者は、『北朝鮮の核保有を阻止するチャンスの扉は閉まり始めており、時間がない』とした上で、上記のように述べた。この元当局者はまた『北朝鮮の核を阻止するためには、強力で断固とした、ある程度危険性も伴う政策が必要だ』とも主張した」。

 

この記事を読むと、北朝鮮の核能力が急速に向上しており、これを阻止する時間はもはや秒読みで少なくなっている、と元米国務省当局者が指摘している。そして、「北朝鮮の核を阻止するためには、強力で断固とした、ある程度危険性も伴う政策が必要」とも言っているのだ。その具体策は、米軍による北朝鮮の核生産能力の破壊である。その準備が進んでいることに、最大限の関心を持つべきであろう。

 

北の核弾頭は最大で60発

『中央日報』(2月9日付)は、「北、核弾頭60個生産可能、HEUだけで758キロ」と題して、次のように報じた。

 

米マティス国防相が、就任初の外国訪問地として韓国を選んだ理由が分かってきた。北朝鮮の核攻撃で危険性が高まっているからだ。韓国では、日本より先の訪問と大喜びしたが、それは糠喜びである。北朝鮮は、米韓情報筋が予想していた以上の濃縮ウラン(HEU)やプルトニウムを保有していた。

 

(1)「北朝鮮が核弾頭を最大60個ほど生産できると、韓米情報当局は判断している。韓国政府はその間、北朝鮮が生産できる核弾頭はプルトニウム保有量を中心に10~15個と話してきた。しかし、8日に中央日報が確認した軍と情報当局の北朝鮮核物質に関する対外秘文書には、2016年を基準に北朝鮮の高濃縮ウラン(HEU)保有量を758キロ、プルトニウム保有量を54キロとしている。軍事専門家は核弾頭1個を作るのにプルトニウム4~6キロ、高濃縮ウラン16~20キロが必要とみている。情報当局の推定値を考慮すると、北朝鮮が保有する核物質でプルトニウム弾9~13個、高濃縮ウラン弾37~47個を作ることができ、計46~60個の核弾頭を生産できる。 北朝鮮の核物質、特に高濃縮ウラン保有量に関連して情報当局が把握した具体的な数値が表れたのは初めて」。

 

韓国政府はこれまで、北朝鮮が生産できる核弾頭数は10~15個と予想してきた。だが、最新の対外秘文書によると、過去の推定数を大幅に修正する必要に迫られている。すなわち、プルトニウム弾9~13個、高濃縮ウラン弾37~47個を作ることができ、計46~60個の核弾頭を生産できるのだ。38度線を挟んだ北朝鮮が「核大国」になる。ここまで来ると、緊急事態発生である。

 

(2)「情報当局の関係者は、『北の核物質生産施設と動向は韓米両国が持続的に追跡してきた』とし、『専門家らが予想してきた保有量を上回る核物質を北が保有しているという結論を出した』と話した。国防部は先月出した『2016国防白書』でも、北朝鮮のプルトニウム保有量を2014年比10キロ増の約50キロと推定しながらも、高濃縮ウランについては『相当な水準』とのみ評価した。軍の関係者は、『昨年、北が2回の核実験をしながら所持した量まで勘案すると、韓米は北の核脅威が予想より速く近づいているという判断をしている』と明らかにした」。

 

高濃縮ウラン(HEU)保有量が758キロ、プルトニウム保有量は54キロも保有しているならば、北の核脅威が予想よりも早く近づいているわけで、事態解決は「六ヶ国協議」という生温い対応ではだめだ。北朝鮮の引き延ばし作戦に翻弄されている時間的はない。

 

『中央日報』(2月8日付)は、「米国務長官 北朝鮮の核は差し迫った脅威 今が決定的な岐路」と題して、次のように報じた。

 

(3)「ティラーソン米国務長官が7日、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官と初めて電話会談し、北朝鮮の核を『差し迫った脅威』と規定した。尹長官はイランのミサイル発射(1月29日)の3日後に米国が制裁したことに言及しながら『北のミサイルは技術などの側面ではるかに深刻だ』と強調した。これに対しティラーソン長官も『全面的に共感する。私も今が決定的な岐路になると認識する』と答えた」。

 

ティラーソン米国務長官が、韓国の尹炳世外交部長官との電話会談で、北朝鮮の核を「差し迫った脅威」と表現した。前述の北朝鮮の核製造数が飛躍的に高まっている点から、「一分一秒」を争う事態である。国連は、北の核製造を禁じる決定を下している以上、「核保有国」と認めるわけにはいかない。とすれば、どのような解決法があるのか。

 

北朝鮮が自発的に核を放棄する。放棄しなければ、次の手段は強制的な排除なのか。事態がここまでくれば、戦争という最悪のステージに上がってくる。トランプ大統領は、大統領選中に、でまかせで「北朝鮮指導者を米国へ招く」と言ったこともあるが、実現性は薄い。

 

切り札は、米軍による実力行使であろうか。実はその準備が、今年に入って急ピッチで進んでいるのだ。

 

ステルス型戦闘機16機配備

『中央日報』(2月7日付)は、「10機のFー35Bを日本に配備したトランプ大統領の思惑は?」と題して、次のように伝えた。

 

この記事で、注目点は二つある。F―35Bという最新鋭のステルス戦闘機が、米本土以外で初めて米海兵隊岩国基地に配備されたことだ。このF―35Bは、垂直離着陸時や短距離離着陸という性能を備え、敵地にギリギリまで接近して攻撃を加えることが可能だ。岩国基地に配備されるのは、日本近海での攻撃を想定している。先ずは、北朝鮮である。次に、中国が南シナ海や東シナ海で侵略行動に出れば、出撃するであろう。

 

北朝鮮攻撃のFー35Bが、岩国基地に配備される。韓国はこの点で、日本に感謝しなければならない。韓国防衛のために日本の基地が使われるからだ。韓国は「反日」という理不尽な言動をしているが、日本の米軍基地によって韓国防衛が行われていることを知るべきだろう。

 

(4)「北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の動きが可視圏に入った中、米国が対応戦略の準備に拍車を加えている。北朝鮮は年初、『ICBM発射準備完了段階』を宣言し、実際にその後ICBMを移動させる場面が情報当局に確認されたりもした。 ボブ・コーカー米上院外交委員長は先月31日の公聴会で『米国が発射台にある北朝鮮のICBMを攻撃する準備をするべきか』と述べ、マイク・ペンス米副大統領も昨年『先制打撃』に言及した。こうした中、米国は先月18日、岩国の在日米海兵隊に垂直離着陸ステルス戦闘機F-35Bを配備した。米国の対北朝鮮先制打撃作戦の可能性と重なり、注視するべき点だ」。

 

米国が、北朝鮮の核開発を自国の危機と捉えたことは、北朝鮮問題をもはや一刻も放置できない課題へ変えたことだ。従来は、北の核やミサイルの開発を甘く見てきた傾向がある。ところが、予想を上回る速度で開発を軌道に乗せているので、米国の対北朝鮮先制打撃作戦が現実問題にさせた。その表れが、岩国基地の垂直離着陸ステルス戦闘機F-35Bの配備だ。

 

(5)「兵器関係者は、『米国がF-35Bをこれほど早期に在日米軍に配備するとは考えていなかった』と話した。米国はF-35B戦闘機10機を岩国に配備したのに続き、6月までに6機を追加で送る計画だ。また年内にF-35Bを載せて作戦する米海軍強襲揚陸艦ワスプ(WASP、4万トン)を日本に配備する。ワスプは垂直離着陸機F-35Bを載せてステルス作戦を遂行できる。これに先立ち米海兵隊は昨年、F-35Bの作戦遂行能力点検を完了した」。

 

米国は、今年の2月にF-35B戦闘機10機を岩国基地に配備したのに続き、6月までに6機を追加する計画という。全部で16機のステルス型戦闘機が配備される。これに合わせて、年内にF-35Bを搭載して作戦する米海軍強襲揚陸艦ワスプ(WASP、4万トン)を日本に配備する計画だ。これによって、夜陰に乗じて敵陣深く侵入した強襲揚陸艦からF-35B戦闘機が作戦開始という戦略である。

 

(6)「米海軍研究所によると、強襲揚陸艦を離陸したF-35Bは数十にのぼる敵の対空網を突き抜け、敵の海岸の標的を除去する訓練を実施したという。F-35Bを載せたワスプが夜中に北朝鮮海岸近くに密かに浸透して作戦を遂行できるということだ。韓半島(朝鮮半島)に危機状況が発生すれば、ワスプが日本に到着する前でも待機中の2万トン級揚陸艦にF-35Bを載せて作戦が可能だ。このようにF-35Bは大型空母を利用しないため作戦がはるかに円滑に進行する」。

 

米海軍では、すでにF-35Bが、数十にのぼる敵の対空網を突き抜ける訓練を実施済みとしている。F-35Bは大型空母を利用せず、揚陸艦から発進できるメリットを生かせば、はるかに迅速な作戦が可能である。奇襲攻撃には、F-35Bが最も有効という結果が出ている。

 

(7)「ワスプを離陸したF-35Bは北朝鮮対空ミサイルのレーダーを避けて北朝鮮海岸まで浸透できる。北朝鮮は元山(ウォンサン)と黄海道沙里院(サリウォン)付近に長距離対空ミサイルSA-5(射程距離300キロ)を配備している。このSA-5ミサイルは南北対峙状況のたびに韓米連合軍の航空機に脅威を与えた。しかしF-35Bに対しては特に効力を発揮できない。ステルス機能があるF-35BはSA-5のレーダーにゴルフボールほどの大きさで小さく表れるからだ。北朝鮮SA-5は一般航空機なら200~300キロの距離でも探知するが、F-35Bは30キロ付近まで近づいてこそ認知できる。作戦に投入されたF-35BはSA-5の探知範囲外で精密誘導弾(SDBII、射程距離72キロ)を投下してSA-5を簡単に除去することができる。SDBIIの正確度は1メートル以内であり、一発で原点打撃が可能だ」。

 

北朝鮮の長距離対空ミサイルSA-5のレーダーには、ステルス機能を持つF-35Bがゴルフボールほどの大きさで表れるので捕捉されにくい。F-35Bは、SA-5のレーダー30キロ付近へ近づいてはじめて認知されるという。そこで、レーダーの探知範囲外で精密誘導弾を発射すれば、SA-5レーダーを簡単に除去できる。これは、すべてステルス機能による効果だ。こうした米軍の作戦計画を見ると、北朝鮮の「一点豪華主義」の核やミサイル開発も、米軍のステルス戦闘機や強襲揚陸艦による小回りの効く戦闘で大きな打撃を受けそうな気配である。

 

(8)「北朝鮮がSA-5基地と離れた。昨年のように北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長が、新浦基地で潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射を観察していれば、F-35Bの精密爆弾やミサイルはいつでも攻撃可能だ。ここに太平洋に配備された米海軍ステルスイージス艦「ズムウォルト」(1万4500トン)が加勢すればさらに致命的となる。ズムウォルトは北朝鮮の海岸レーダーの探知を避けながら精密攻撃が可能であるからだ」。

 

北朝鮮は元山(ウォンサン)と黄海道沙里院(サリウォン)付近に長距離対空ミサイルSA-5(射程距離300キロ)を配備している。ここから離れて、東海岸ムスダンや新浦(シンポ)基地からICBMを発射する場合は、F-35Bの浸透攻撃がさらに容易になるという。米海軍ステルスイージス艦「ズムウォルト」は、北朝鮮の海岸レーダーからの探知を避けながら、精密攻撃が可能になるとしている。北朝鮮が、世界一の科学技術を持つ米国と互角に戦えるはずもない。無駄な軍備をもって他国を威嚇する無駄を知るべきだろう。結局、核は、北朝鮮を守らず破滅させる恐れが強い。

 

(9)「米国が3月に予定された韓米連合訓練キー・リゾルブ演習を過去最大規模で実施することにしたのは一種の誇示戦略だ。北朝鮮が核・ミサイル挑発をできないようにする措置だ。一方では米国の先制攻撃を実施する場合、北朝鮮の2次的な報復行為を抑止する効果がある」。

 

この3月の米韓連合訓練キー・リゾルブ演習は、過去最大規模になるという。米国の先制攻撃を実施する場合、北朝鮮の2次的な報復行為を抑止する効果がある。米国がここまで厳密な作戦計画を立てていることは、「水も漏らさぬ」ものであろう。米国はいつ、伝家の宝刀を抜いて、北朝鮮脅威を事前に除去するのか。オバマ政権時代では実現できないことが、トランプ政権下では起こりうることに注意する必要があろう。

 

(2017年2月13日)

 

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