中国、「カンニング経済」政府から民間まで「オール誇大宣伝」 | 勝又壽良の経済時評

中国、「カンニング経済」政府から民間まで「オール誇大宣伝」



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妄想で日本技術批判
全て宣伝に利用する

本当に驚くことばかりである。「メンツ」のためには、ウソも平気で言う国である。しかも、政府から民間までが誇大宣伝をして得意になっている。不真面目な社会だ。儒教の教えである精神面の自律は、何一つ実践されず悪用され続けている。秦の始皇帝以来、2200年間もこれで保ってきた社会である。グローバル経済の今日、それが厳しく問われているのだ。中国はどこへ行くのか。

中国情報では、官営メディアの「誇大宣伝」が度を過ぎている。「嘘八百」と言っても良いほどデタラメな記事を掲載する。これで恥ずかしくもないのか。逆に、読む側が気を使うほどである。「弱い犬ほど吠える」という。中国の誇大宣伝の原因は、この辺にあるのだろう。自信が持てないから法螺を吹く。哀しい心理と言うほかない。

妄想で日本技術批判
『人民網』(11月6日付)は、「革新の魂はどこに?失墜現象に直面する日本」と題し次のように報じた。筆者は、あの陳言氏(日本企業中国研究院執行院長)である。私が毎度、厳しく批判している彼の発言である。

①「各国の国際競争力に関する調査では、製造業のトップはずっと米国で、2位は1980年代までドイツだったが、日本の技術革新の成功にともない、90年代から2010年までは日本がドイツを抜いて2位の座を保った。その後急速に革新を進める中国に抜かれた。関連の論評によると、技術革新の停滞が日本の製造業に顕在化しており、製造業の順位が他国に追い抜かれることになったという」。

この記事は、何を意図して書かれたのか不明である。多分、中国国内の停滞気分を一掃するべく、「日本もこの程度の国ですよ」と言いたかったのかも知れない。「各国の国際競争力に関する調査」と漠然と言っているが、そのデータが示されていないのだ。陳言氏の記事は、いつも根拠不明・感情過多である。その都度、私が反論する理由はこれだ。今回もまた、同じ過ちに陥っている。

ならば、私が「国際競争力」なるものの最新版を紹介しよう。

ダボス会議で知られるスイスのシンクタンク、「世界経済フォーラム(WEF)」が9月30日発表した各国・地域の競争力を順位にした『2015~16年版報告書』は、次のような内容である。今年の競争力トップはスイス、2位はシンガポール、3位は米国である。日本は6位だ。中国はなんと28位に沈んでいる。このランキングから言えば、日本の国際競争力は健在である。自慢して止まない中国は世界28位であって、日本の比ではない。この事実を知りながら「大法螺」を吹いている陳言氏の神経は理解不能だ。『人民網』編集局は、彼の記事で必ず「裏」を取ることを勧めたい。

②「海外留学者数の減少が映し出すのは日本の高齢化問題だ。日本は65歳以上の人口が全人口の4分の1を超えた。社会が高齢化し、若い人にとって海外留学や海外で働くことは大きな負担になった。日本国内にとどまって暮らすのが最も安定し最も安全というのが一種の共通認識になり、日本が主体的に導入した技術や概念がどうでもよいものになりつつあり、社会が日に日に保守化し、革新のムードが徐々に失われている」。

日本が、世界一の高齢社会であることは事実である。だが、中国も2030年には現在の日本と同じレベルの高齢社会になることをご存じか。中国がなぜ、「一人っ子政策」を止めて、「二人っ子政策」に転じたか。その理由は、前記の超高齢社会到来の事実にある。日本の若い人が海外留学に出たがらないことはその通りである。日本国内に就職先がある点も理由である。

もう一つ、ノーベル科学賞の受賞者の学歴を見れば、海外留学経験が必須条件でないのだ。日本国内でも世界レベルの学問研究が可能になっている。問題は、研究者として世界の学会と交流するかどうかが問われている。日本の研究者はそれを積極的に行っている。ノーベル科学賞と言えば、今年初めて中国からも受賞者が出た。日本は2000年以降では、米国に次いで世界2位の受賞者数に上っている。日本人の「イノベーション」の能力と意欲は、いささかも衰えていない。

「(日本)社会が日に日に保守化し、革新のムードが徐々に失われている」とは、何を根拠にしているのか。ならば、申し上げたい。日本は、TPP(環太平洋経済連携協定)に参加する。国会批准はまだだが、間違いない。このTPP参加こそ、日本社会の「イノベーション能力」の健在を示している。中国はTPPに参加する「基礎条件」すら欠いているのだ。国有企業が「太子党」の利権の巣になっている。これを縮小しない限り、中国のTPP参加はあり得ない。中国に国有企業「解体」の勇気はあるのか。まさに、「中国社会が日に日に保守化し、革新のムードが徐々に失われている」結果である。

『人民網』(11月6日付)は、「中国の海外旅行者数、2年連続世界一、深刻化する購買力の海外流出」と題して、次のように報じた。

③「(中国の)“高級品購買力”の海外流出が続いていることは、中国の小売業と製造業の発展が、“消費アップグレード”によるニーズを満たしていない状況を反映している。中国商務部(省)研究院消費研究部の趙萍副部長は、『経済の下振れ圧力が高まるなか、消費の増加を国内だけに頼ることはできなくなり、もともと国内にあった海外消費の逆流を増やす必要が生じている。海外消費の50%を国内に戻すことができれば、国内消費を1%増やすことができる』と指摘した」。

この記事は、前記の陳言氏の主張をことごとくひっくり返している。日本が、「急速に革新を進める中国に抜かれた」と記述しているが、中国人訪日旅行者の「爆買い」現象によって完全否定されている。陳言氏の面目丸つぶれであろう。

中国人旅行者の「海外消費の50%を国内に戻すことができれば、国内消費を1%増やすことができる」という記述は深刻である。中国の所得が上昇するに伴い、これまで中国国内で「ニセ物」で我慢してきた消費者が、海外で「本物」と出会い購買意欲を高めている結果である。

④「専門家は、『国内小売企業が、従来の“野菜市場”という経営パターンから一日も早く抜け出し、ハイエンド小売業の競争力を高めるよう、政府はリードしなければならない』と提案した。さらに、『“海外消費”の逆流によって、商品の増加を促すのではなく、産業チェーン全体にメリットをもたらさなければならない。“メイド・イン・チャイナ”製品のレベルを本質的に高め、“逸品工業”の路線を進み、“メイド・イン・チャイナ”“中国ブランド”に、国内のハイエンド消費者を心から満足させることが重要だ』と指摘した」。

私は最近のブログで、中国国内の「ニセ物づくり症」が治らないと、中国の購買力は海外へ流出すると書いたばかりである。国内の購買力が上昇しても、国内での供給が「贋作」ばかりでは当然、海外での「爆買い」に流れる。あるいは「インターネット購入」で簡単に海外へ購買力は流出する。こうして、不真面目なサプライヤーは、中国国内の消費者から淘汰される運命にある。贋作は、中国政府も堂々とやっている。中国初の「国産ジェット旅客機C919」が、中国の「独自開発」と大嘘を言っているのだ。この国は、上から下まで「大嘘のオンパレード」である。

中国の「ニセ物づくり症」は、中国の汚職と同じで根治は不可能であろう。理由は、経済倫理が存在しないからだ。その淵源を求めると、2200年に及ぶ過酷な圧制政治が、「嘘も方便」という生活の知恵を授けてしまった。日本では「嘘は泥棒の始め」と教える。この日中の差が、「イノベーション」能力と意欲の差になっている。要するに、民度の高さを表している。中国は、過去の専制政治が歪めた国民の意識が、ここまで中国自身を苦しめる原因であることを知るべきだ。

⑤「復旦大学管理学院ブランド管理学科の盧暁博士は、『消費ニーズはアップグレードしたが、産業革新がそれに追いついていない。逸品発展路線を歩むよう中国製品を改善し、高い付加価値をつけ、ブランドを核心とし市場を風見鶏とするビジネスモデルを確立し、逸品を製造しなければならない』と提案した」。

「ニセもの作り」は、中国を滅ぼすであろう。もともと中国人には、長い目で見て「国産品」を育てる考えがない。ナショナリズムは強力だが、自分の懐を痛めることには拒絶反応を示す国民である。寄付金にはほとんど関心を示さない。目先の損得には極めて敏感である。生産者には、長い目で顧客の信頼を得る。そういう発想がもともと存在しないのだ。目先の利益だけで走るから、いとも簡単に「ニセものづくり」へ手を染める。これが、悪循環し拡大しているのが中国の偽らざる姿だ。

中国ブランドの工業製品を生み出すには、中国の民度を高める努力が前提である。正直者が、利益を得られる経済・社会システムを作らなければならない。それには、市場原理の貫徹しか道はない。政治が関与する現在の経済システムでは、百年河清を待つに等しいことである。現状から見れば、その機会は永遠に来ないであろう。

中国の特徴は、物事を大袈裟に言うことである。「大言壮語」(ほら吹き)や「針小棒大」という表現がまさにこれである。中国政府が発表した「中国初の国産ジェット旅客機C919」もこの類である。

全てを宣伝に利用する
『大紀元』(11月6日付)は、次のように伝えた。

⑥「中国初の国産ジェット旅客機C919が11月2日、はじめて公開された。座席数168~174席の狭胴型旅客機で、最大航続距離は5555キロである。『完全自力で開発・製造する国産機だ』という中国政府の触れ込み付きである。中央テレビ(CCTV)などの政府系メディアは、『全国民の力を注ぎ、全世界の英知を結集した』とし、『中国は、大型旅客機の製造技術を持つ数少ない国の一員となった』と称賛した。実は、重要な技術設備のほとんどがアメリカ製であることが明らかになっている。エンジンを提供したのは、米ゼネラル・エレクトリックと仏スクネマの合弁企業CFMインターナショナル。飛行制御システムや補助動力装置といった中枢システムは、米国の関連企業が供給、着陸装置はドイツのリープヘル社から技術提供を受けている」。

「完全自力で開発・製造する国産機」という触れ込みだが、これは「真っ赤な嘘」であるという。重要な技術設備のほとんどがアメリカ製である。航空エンジンを提供したのは、米ゼネラル・エレクトリックなどである。航空機エンジンは極めて技術難度の高い技術分野とされている。中国が独自開発できるわけがない。自動車用のエンジンすら日本から調達している程度である。自動車エンジンの開発ができない国が、航空機エンジンを開発したということは眉唾なのだ。

『サーチナー』(11月5日付)は、次のように報じた。

⑦「中国は高速鉄道や旅客機を『自主開発』したと主張しているが、なぜ自動車用のエンジンを自ら開発・生産できないのだろうか。中国メディアの『易車』は11月3日付で、中国では『自動車用エンジンはおろか、中国国内で生産されているバイクですら各パーツは国外メーカーの製品であり、エンジンも同様に国外メーカーのものだ』という記事を掲載した。エンジンにかぎらず、中国の自動車向け部品メーカーは『見た目こそ国外メーカーの製品と同じように作ることができる』としながらも、実際に使用してみると非常に問題が多いのが現実である」。

今日のブログ冒頭で取り上げた陳言氏の「革新の魂はどこに?失墜現象に直面する日本」とは随分、異なる中国技術の未成熟ぶりが取り上げられている。この程度の技術レベルにも関わらず、「日本技術は衰退」などと言いたい放題の心理状態はどんなものなのか。どう考えても理解不能である。この程度の発言を繰り返しているのは、中国全体の技術に関する認識が極めて幼稚な段階にあることを示唆している。

⑧「中国メーカーの部品の質が劣る理由として、工業の基礎となる金属の精製や加工の技術が低いことにある。日本やドイツでは高い技術力を持つエンジニアや職人が重宝されている環境にある。中国は、『技術者とは若いころの“過渡期”として就く職業に過ぎない』と指摘。そのため、中国では工業の基礎となる技術の蓄積や継承がなく、工業の基礎力が向上しない」。

旧中国の科挙(公務員)試験では、「職人」に対して冷淡な扱いであった。科挙試験の受験資格も与えずにきた。現代中国の技術軽視は、こうした中国の悪しき伝統がもたらした歪みである。歴史とは恐ろしいものである。過去の習慣がそのまま生き続けて、人々の意識に潜在的な影響を与えるのだ。中国の「職人」は、生涯をかけて取り組む職業として認識されず、「腰掛け」的なものである。私が、中国経済を論じるとき、努めてその文化的な背景に言及している理由はこれである。中国は古代国家意識である。現代のグローバル社会で、不適応障害を起こすのは当然である。

⑨「中国の自動車メーカーは、長年にわたって他社の自動車を分解し、コピーするという『リバースエンジニアリング』によって自動車を生産してきた。自ら研究し、開発するというプロセスを疎かにしてきたと言える。『テストのたびにカンニングしてきた学生が突然、自分だけの力で良い点数を取れるようになるだろうか』と疑問を呈し、中国の自主ブランドメーカーが、エンジンを生産できない理由は、『これまでの怠慢にある』と論じている」。

中国は、技術=職人を軽蔑している社会である。中国が、自ら研究し、開発するというプロセスを疎かにしてきた。だから現在、「サイバー攻撃」という名において、他国の技術を盗み出す卑劣な行為を繰り返しているのだ。「テストのたびにカンニングしてきた学生」は中国である。「突然、自分だけの力で良い点数を取れるようになる」はずがない。中国という国家の存在が、ここまで見透かされている。この程度の国家が、世界覇権を狙うという「妄想」を抱く。中国の限界を画しているのだ。

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(2015年11月20日)