韓国、「底冷え景気」朴大統領の支持率急低下「父」より不人気 | 勝又壽良の経済時評

韓国、「底冷え景気」朴大統領の支持率急低下「父」より不人気

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父を超えられぬ娘大統領
大卒学生の就職「厳冬期」

韓国の大統領で「父・娘」が就任したのは、現大統領の朴槿恵(パク・クンヘ)氏だけである。父・大統領の朴正煕(パク・チョンヒ)氏は、不幸にも側近による凶弾に倒れた。だが、韓国の「奇跡の成長」を実現した立役者として、今なお根強い人気を保っている。ただ、「強権政治」を行い政敵の容赦ない弾圧をしたところから、「民主派」からは手厳しい批判を受けている。要するに、毀誉褒貶が激しい「元大統領」である。

朴槿恵大統領は、父・大統領に比べて経済政策で何らの成果も上げずにいる。かつての高度成長時代とは経済環境が180度も違うなかで、この「父・娘」大統領を比較するのは無理である。ただ、現大統領の支持派は、父・大統領の手腕再現を期待したものでもある。父・大統領は日本から多額の支援金を引き出したが、娘・大統領は対日政策では真逆の道を選んでいる。「私は父と違う」。こう意地を見せたのであろう。それが、「凶」に出ていることは疑いない。

父を超えられぬ娘大統領
『朝鮮日報』(1月5日付け)は、次のように伝えた。

① 「世論調査会社『リサーチ・アンド・リサーチ』が昨年末、『最も多くの業績を残した歴代大統領は?』と質問したところ、1位は53%で朴正煕元大統領だった。高齢者層や慶尚道などを中心に、朴正煕元大統領を支持する保守層は依然として国民の半数以上に達することの表れだ。昨年は旅客船『セウォル号』沈没事故、政府の人事問題、大統領府文書流出など悪材料が多かったのにもかかわらず、朴槿恵大統領や与党セヌリ党に対する支持率が大きく崩れることなく40%前後を維持したのは、こうした人々の影響が大きかったと思われる」。

昨年末の世論調査では、歴代大統領の評価では1位が53%の朴正煕元大統領であった。半分以上の支持を集めているのだ。朴槿恵大統領や与党支持率は、こうした保守派の高い支持率に助けられてきた。だが、この「メッキ」は今後しだいに剥がれる運命になりそうだ、というのである。国民生活を豊かにできない現大統領に対して、何時までも暖かい支持をする保証はないのだ。厳しい「北風」が吹き付ける前兆がいくつか出てきたからである。

② 「この調査で目を引いたのは、韓国初の父娘2代の大統領の支持率を、同時に調査したことである。それによると、朴槿恵大統領の支持率は39%だった。どんな理由であれ、朴槿恵大統領の支持率は朴正煕元大統領より14ポイントも低いのが現実である。朴正煕元大統領の支持者4人のうち1人は朴槿恵大統領を支持していないのだ。特に50~60代以上の熟年・高齢者層でも両大統領の支持率の差は少なくなかった。これらの年齢層は朴正煕元大統領に対しては73%もの支持率を示しているが、朴槿恵大統領に対しては半数を若干上回る程度の56%の支持にとどまっている。少し前まで、支持者は朴槿恵大統領とその父親をほぼ同一視していた。最近になって、朴槿恵大統領支持者が目に見えて減っており、与党にとっては危険信号として映っている」。

現時点での「父・娘」大統領への国民全体の支持率は、明確に分かれていることが浮彫になった。

父大統領は53%
娘大統領は39%

父大統領への根強い支持に支えられて、娘大統領が当選したことは疑いない。父娘大統領を支持する保守派は、50~60代以上の熟年・高齢者層とされている。この層の朴正煕元大統領に対する支持率は73%を示した。朴槿恵大統領に対しては、56%の支持率に止まった。明らかに、娘大統領への「不満」が表明されているのだ。「反日」では国民の広範な支持を取り付けたが、経済問題では「無策」という審判が下っている。朴槿恵大統領は、支持率回復のために再び「反日」のラッパを吹くのだろうか。その前兆として、すでに新年のビデオ・メッセージを『人民日報』へ送っている。日本へは挨拶なしだが、中国へは「忠勤」を励んでいるのだ。

③ 「朴槿恵政権3年目の今年は、大統領・与党支持率に『経済』が与える影響がさらに大きくなる見通しだ。同政権は折り返し点に差し掛かり、経済問題の責任が前政権や外部の環境ではなく現政権に問われ始めるためだ。国民が望む今年の国政の在り方は最近の世論調査にもよく表れている。昨年末の『エース・リサーチ』による調査では、政府が重点的に推進すべき課題として『経済活性化と規制改革』(43%)が最も多く、その次が『国民との意思疎通拡大』(21%)だった。『TNSコリア』の調査でも、『経済活性化と雇用創出』(39%)が主要国政課題として挙げられた」。

朴槿恵政権は、経済問題解決で真価が問われている。「反日」では国民の生活が豊かにならないばかりか、逆効果が生まれる。となると、これまでと同じ手法の「反日」を使えなくなるはずだ。真っ当な経済政策で「勝負」するしか道はない。この経済問題については、後で総合的に議論したい。結論を先取りすれば、何らの「活性化策」もないのだ。「円安=ウォン高」ですべてが帳消しになるであろう。

④ 「一部には、『大統領支持率は今年、30%台も危うくなるのでは』という見方もある。その根拠として、今年も経済が非常に厳しいという見通しと共に、少し前の『韓国ギャラップ』の調査で朴槿恵大統領の過去2年間の経済政策について『よくやった』と評価する回答が27%にとどまり、『よくなかった』という回答の49%の約半分である。その一方で、朴正煕元大統領を支持する過半数の保守層が健在なため、朴槿恵大統領の支持率は努力次第で50%台を難なく回復すると見込む意見もある」。

朴槿恵大統領の過去2年間の経済政策に関する評価では、「よくやった」が27%。「よくなかった」が49%にも達している。私は、韓国の経済政策が失敗であると言い続けてきた。最大の理由は、財閥が韓国経済を支配するという「寡占体制」が時代遅れであることだ。韓国経済の活性化とは、寡占体制の打破である。「アベノミクス」流に言えば、規制の岩盤を掘り崩すことである。日本では、農業の既得権益打破に向けてJA全中(全国農業協同組合中央会)の組織改編を行う。組織に胡座をかいて「眠り口銭」を懐に入れている組織の温存は、日本農業に死をもたらすだけである。

韓国も、同様な運命にある。公的企業が官僚組織と手を結んで、既得権益の甘い汁を吸い続けている。国鉄の解体も不可欠である。スト多発の国鉄が、国民の勤労意欲をどれだけ阻害しているか。「親方・太極旗」であることが惰眠を貪らせている。これと同列で、財閥企業が寡占体制を悪用し、中小企業の生産性向上分を横取りしている。韓国産業を「産業組織論」の視点から見れば、日本よりも30年以上は遅れている。この事実に目を向けねばならない。

朴槿恵大統領が、韓国経済に立ちはだかる厚い壁を乗り越える。そうした準備があるわけでない。ただ、お題目で唱えているだけである。韓国の与野党の激烈な対立を見れば、産業組織へメスを入れることは不可能である。このままだと、韓国経済は「立ち枯れ」の運命であろう。政治が妥協を知らないで、最後の最後まで白黒を付ける。そういう異常な体質を持っているのだ。「反日」もこの延長線で起こっている。

韓国統計庁が12月31日発表した消費者物価動向によると、昨年12月の消費者物価指数は前年同月比0.8%の上昇である。14カ月ぶりの低水準で、0%台に鈍化した。原油安の影響が大きかったと分析されている。年間の上昇率は、昨年と同じ1.3%で、1999年(0.8%)以来の小幅となった。韓国銀行(中央銀行)の物価安定目標(2.5~3.5%上昇)を大きく下回った。要するに、韓国経済が「低温体質」に陥っていることは疑いない。まさに、「ディスインフレ」である。デフレへの前兆が始まっている。

韓国銀行の物価安定目標は、2.5~3.5%上昇である。昨年も一昨年も消費者物価上昇率は、1.3%に止まった。韓国銀行の物価安定目標率の半分以下である。韓国経済も「病める」状態に陥っている。日本を「失われた20年」と嗤っていられる状態でないのだ。日本は「アベノミクス」で治療中である。韓国は自らが病気に罹っていることすら知らないのである。

大卒学生の就職「厳冬期」
『ロイター』(1月2日付け)は、次のように伝えている。

⑤ 「2014年の韓国の失業率は、過去14年間で最悪を記録した、2015年に卒業予定の大学生は、卒業を先延ばし留年する者が相次いでいる。経済が疲弊している韓国で就職は一層困難になっている。韓国の大学生の中では、『就職状況は毎年深刻になっており、来年はさらに悪化するのではと不安だ』と語る声も聞かれている。韓国の多くの大学では、卒業資格を持つ学生でも学生の身分を維持してもよいと認めている。さらに、中には就職できるまで、故意に単位を残して習得しない学生もいるという。2014年、韓国政府が33の大学に対して行った調査では、過去3年間で卒業を先延ばしにする学生は、倍近く増加しており1万5000人に達した」。

昨年11月の失業率が1年前より0.4ポイント上昇の3.1%になっている。もっと働きたいのに仕事を見つけられなかった。そういう人まで含めた広義の失業率まで計算すると、公式失業率の3倍を超える10.2%と集計された(韓国紙『中央日報』12月11日付け)。韓国統計庁では、上記のように「広義の失業率」を発表している。それによると、次のような実態が明らかにされている。

「週36時間未満で働き追加就業を望んでいる人が34万6000人、求職活動などをしていないが就業を望む潜在経済活動人口は175万2000人と集計された。公式失業者81万8000人まで合わせれば291万6000人が、まともに働き口を得られずにいるという話だ。このように労働欲求がしっかりと満たされていない人の数は11月が、10月の287万5000人よりも4万1000人増加した」。

韓国の就職状況は、表面的な失業率に見られるよりもはるかに厳しいことがうかがえる。昨年11月の失業率は3.1%であるが、広義の失業率は10.2%と3倍にもなっている。この実態を見れば、韓国の大学生が卒業を延期している事情が分かる。2014年、韓国政府が33の大学に対して行った調査では、過去3年間で卒業を先延ばしにする学生は、倍近く増加しており1万5000人に達した。日本では、「アベノミクス」の成果で失業率が低下している。昨年11月は3.5%で、54ヶ月連続の低下だ。大学生の就職率も向上している。つい最近までの就職戦線が一変しており、学生の「売り手市場」と化した。この点の評価はほとんど聞かれないのだ。

日本では、逆に「アベノミクス」批判が流行している。実質賃金がマイナスで生活が苦しい。だから、アベノミクスは失敗だというのである。中国『人民網』は、ここぞとばかりに批判している。お気の毒にも、次に述べるような事実を何一つ知らないで「批判の矢」を放っているのだ。昨年の消費税率引き上げ前の景気状況を見れば分かるように、景気は好転していた。それが3%の消費税率引き上げで、帳消しにされて実質賃金はマイナスになった。元凶は消費税率アップである。

そこで、次なる消費税引き上げを2017年4月へと延期する。その間に、円安に伴う企業収益改善によって賃上げを行う。賃上げは3%と5%を主軸にする。外形課税(売上高や給与などに課税する地方税)率の引き上げと、2%強の法人税率引き下げを組み合わせている。賃上げをした企業にはそれに見合った外形課税が減税される。

こうなると、企業は率先して賃上げし、外形課税率引き上げを免除される方を選ぶ公算が強まる。同時に行う法人税率引き下げは、設備投資への刺激になって雇用増加に結びつく。これが、当面の「アベノミクス」による消費税率引き上げ対策である。ここまで行って、日本経済が動き出さないという主張は成立し難いはずだ。一方、株式市場は企業収益の大幅改善を背景に、日経平均が2万円を超えて行くことは間違いない。「失われた20年」は過去の話になるはずである。

韓国には、こういった青写真がまったく存在しない。政治状況から判断して、「アベノミクス」のような手は打てないであろう。野党の捨て身の反対で国会審議は膠着して進まないと見られる。韓国は政争で二進も三進も行かぬうちに、時代の変化から取り残される懸念が深まるのだ。その意味で、小沢一郎氏の政治的な影響力減殺は、日本経済にとってきわめて好ましい。政争だけに興味を持つ小沢氏では、「日本丸」の舵取りは不可能であろう。この小沢氏を中韓は大変に高く評価している。不思議な話だ。

(2015年1月13日)



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