中国、「技術後進国」産業スパイとサイバー攻撃で「先進国入り」? | 勝又壽良の経済時評

中国、「技術後進国」産業スパイとサイバー攻撃で「先進国入り」?

『習近平大研究』勝又壽良著

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米で中国人富豪が産業スパイ
歓迎されない中国寄贈の庭園

このタイトルをつけて、思わず自分でも笑ってしまった。中国は、「後進国の優位性」を根拠にして、今後とも世界経済をリードできると思いこんでいる。この「定義」を、在日中国人エコノミストが胸を張って主張しているのだ。私には理解不能である。技術後進国が経済先進国へ躍り出るには、先進国の技術を合法的か非合法的か、そのいずれかによって入手する以外に方法はない。もう一つ、独自技術開発の道もある。中国は、イノヴェーション能力が低くて不可能である。

先進国企業が、中国へ技術移転することにきわめて慎重である。ライバルになるかも知れない相手企業に、あえて虎の子技術を教えるはずもない。ならば、後は非合法な道しか残されていないのだ。産業スパイとサイバー攻撃である。この二つは、中国政府(人民解放軍)も絡んで大規模に繰り広げられている。この最大の被害国は米国と後述のドイツである。米国は「堪忍袋の緒が切れ」て、ついに人民解放軍将校を起訴するまでになった。中国は国を挙げて「技術泥棒」に成り下がったのだろうか。これならば、他国領土へ手を出しても不思議でない。

米国の中国を見る目は冷めきっているのだ。技術泥棒を公然と行っている中国に対して、友情を感じるはずもない。警戒心が先立っているのは当然である。中国が米国へ寄贈を申し出た「中国庭園」建設は、米国の対中感情悪化を反映して、頓挫したままである。米国議会は、この中国庭園への建設費補助金支出を禁じる法律までつくったほど。ここまで、対中ムードは冷え切っている。それを知らないのは中国政府だけだ。今日も、せっせとスパイとサイバー攻撃をしかけているに違いない。墓穴を掘っているにもかかわらずに、だ。

米で中国人富豪が産業スパイ
『サーチナー』(7月4日付け)は、次のように伝えた。

① 「『人民日報』は7月3日、米メディアの報道を引用し、米国当局が中国人富豪の妻を商業機密窃盗容疑で逮捕したと伝えた。記事は、アイオワ州のトウモロコシ畑から遺伝子組み換えトウモロコシの種子を盗み、遺伝子解析のため中国に送っていたとして、中国人女性がロサンゼルス空港で逮捕された。中国人女性が盗んだ種子は病気や虫害に強い特殊な種子だったという。さらに、逮捕された中国人女性の夫は、複数の企業を経営する富豪で、トウモロコシの研究を行う企業も経営していると紹介。また中国人女性の兄も同じく商業機密を盗んだ容疑で逮捕、起訴されたと伝えた」。

きわめて漫画的な内容である。中国人富豪の妻が、商業機密窃盗容疑で逮捕されたというのだ。普通、窃盗犯は生活費欲しさに犯行に及ぶケースが圧倒的である。中国人は、富豪でも産業スパイを「生業」にしているのだろうか。逆に、産業スパイをしたから富豪になれたのかも知れない。いずれにしても、著しく「倫理観」欠如の行為である。中国社会の一断面を映し出しているのだ。手段を選ばずに金持ちになる。これが、中国社会では許される。富が、社会的プレゼンスを高める要因であるからだ。

ノーベル文学賞(1938年)に輝いた、米国人作家パール・バック女史の『大地』は、乞食が大地主になるストーリーである。中国大都会で、強盗が残した宝石を手に入れ、それを元手に農地を買って行く話しだ。それ以降、3代にわたる物語である。中国人の倫理観を知るには好適な書物である。

② 「米国で商業機密を違法に盗み出したとして逮捕される中国人は後を絶たない。2009年には北京汽車(北京自動車)研究総院の職員だった中国籍の男性が米フォード社から企業秘密を盗んだ疑いで逮捕された。10年には米航空大手ボーイング社の元技術者だった中国人男性がスペースシャトルの技術開発に関する資料を、中国側に渡したとして禁固15年の判決を受けている」。

日本人による事件では、米国IBMのコンピュータ技術の窃盗未遂が起こっている。これは、FBI(米国連邦捜査局)の囮捜査にわざわざ引っかけられたもの。「甘言」に惑わされた事件である。それにしても事件は事件である。関連した日本企業は謝罪して多額の賠償金を支払った。それ以降は、この種の事件は起きていない。ところが、中国は懲りるどころか多発しているのだ。事件発覚後も、無実を言い募って白を切り通す。日本とは対応がまったく異なるのだ。やはり、「倫理観」欠如の社会と言わざるを得ない。

実は、ドイツが中国スパイの標的にされている。独紙『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング』(7月4日付け)は、「中国の産業スパイがドイツに約10万人存在し、その多くが中国の外資系企業に潜入している」とする連邦憲法擁護庁長官の主張を紹介した。

それによると、「ドイツはこの10年間、経済上のパートナーである中国と親密な関係を築いてきた。だが、中国との親密な関係により『負の局面』が生じている。メルケル独首相訪中のさなか、独連邦憲法擁護庁のマーセン長官は7月6日、ドイツの中小企業に対して中国の産業スパイに注意するよう警告する文章を独紙『ディ・ヴェルト日曜版』に発表した。マーセン長官は、『ドイツの企業は自分たちの有する技術の価値をはっきりと認識しておらず、中国側が自分たちの何に興味を持っているのかも理解していないため、中国の産業スパイにとって格好の餌食となっている』と指摘。『中国の技術情報機関だけでも10万人のスパイを抱えている』と訴えた」。中国社会の「泥棒根性」は、海を渡って欧米にも手を伸ばしているのだ。

『大紀元』(5月21日付け)は、次のように伝えた。

③ 「米司法省が中国人民解放軍の将校5人を米企業へのサイバー攻撃容疑で起訴した。起訴されたのは上海に拠点を置く人民解放軍のサイバー部『61398部隊』に所属する5人の将校だ。5人は米国を代表する企業のコンピューターシステムに違法に侵入し、情報を盗み取ったとして、産業スパイなどの罪に問われた。起訴された5人について、米政府関係者は5月20日付の『ニューズ・ウィーク』誌の取材で、『決してトップクラスのメンバーではない』との認識を示した。『トップクラスは政府に警護されていて雲隠れしている』『彼らの正体は我々には知るよしもない』とした」。

米司法省が、どのようにして人民解放軍将校5人を特定化したか。その具体的な手法は、『大紀元』(6月12日付け)で詳細に紹介されている。説明は割愛するが、米国の追及過程が驚くべき忍耐で行っていることは確かだ。それだけに、中国へ向けられる怒りも大きいのであろう。「アンモラルは絶対に許さない」。そういうキリスト教倫理から言えば、無信仰の中国社会はひとたまりもない。中国政府が、深く関与している事実も暴露されている。こうした汚い手を使ってまで、経済成長率をかさ上げする。国民に対して正統性への信頼をつなぎ止めたい。そこまで追い込まれているのだ。

④ 「もう一人の中国の犯罪に詳しい専門家は、5人はサイバー攻撃を行う中国軍の指揮系統樹の中に位置づけられており、系統樹の頂点には中国共産党の最高指導者がいると指摘した。中国によるスパイ活動は伝統的な諜報行為ではなく、経済スパイ行為であり、この犯罪によって、中国が富を成し遂げたのみならず、共産党幹部自らの家族や側近も巨富を築いたと批判した。米有力研究機関『国際評価戦略センター』主任研究員、リチャード・フィッシャー氏は同誌の取材に『法律的に、中国政府は有罪だ。(起訴は)中国共産党の指導者たちに、彼らの行いが世界中を敵に回していることを知らしめた』と述べた。米CNNは5月20日の番組で、スパイ活動は中国の経済戦略の一部だと指摘した。産業スパイ活動を行う国は中国だけではないが、中国政府は長期にわたって『もっとも積極的な経済機密情報の収集者』であると番組は専門家の意見を伝えた」。

驚くべき事実が明かされている。「経済スパイ行為の犯罪によって、中国が富を成し遂げたのみならず、共産党幹部自らの家族や側近も巨富を築いた」と言うのだ。産業スパイが「利権対象」にされているとは絶句する。ここまでモラルが墜ちている。こうなると、「盗賊国家」という不名誉なレッテルさえ貼られかねない。何が共産主義だ。何が人民解放行為だ。やっている事は、一握りの利権屋の盗賊行為じゃないか。そういう批判は免れないであろう。米国が、中国を警戒するのは当然である。中国政府から、「新しい大国関係を」といった呼びかけに対して、米国がまともな返事をするはずがない。米国の本心では、中国に対して「盗賊国家め」、「盗賊国家の首領め」という気持ちを持ったとしても不思議はない。

歓迎されない中国寄贈の庭園
英国経済誌『エコノミスト』(6月28日号)は、「米中関係 滞る中国の庭園外交」を掲載した。

⑤ 「ここ15年の間に中国の伝統的な庭園が多くの場合、中国当局の支援を受けてオープンした。中国が台頭するにつれ、中国の当局者はいよいよ壮大なプロジェクトを推進するようになり、ついには米国立樹木園内に12エーカー(注:1エーカーは40アール)におよぶ清朝式の庭園を造成することを申し出た。この『ナショナル・チャイナ・ガーデン』は、湖、2階建ての茶室、石庭、展示館、竹林、美術展示場、そして楊州の白塔に敬意を表す建造物を備えることになっている。米国の反応は表向き丁重だが、その後のフットワークが悪い。協議が始まってから11年経った今、建設予定地はまだ手つかずの草地と数本のアジアの立派な樹木、そして放牧された2頭の鹿だけだった」。

中国式の庭園を米国で建設するに当たり、これまで中国政府は資金の一部を負担してきた。やがてその規模は大きくなり、12エーカーに及ぶ大規模な中国式庭園の建設を申し出たのだ。それが、「ナショナル・チャイナ・ガーデン」である。だが、11年前に、米中の間で建設協議が始まったものの、話は一向に進まずにいる。その背景に実は、米国側で中国への政治的な警戒感が漂い、障害になっているというのである。先に挙げた、中国による産業スパイやサイバー攻撃を考えると、米国が内心では憤激ムードにある。それは容易に察しがつく。

戦前、日本が米国から排日批判を受けた雰囲気が思い出されるのだ。日本は、アジアの新興国として米国から物心両面の支援を受けていた。それにも関わらず、日本はしだいに米国との協調行動を離れ、独自の外交戦略を取るようになった。ついには、米国の経済的利権と衝突するまでになったのだ。ここで、米国は「親日」から「反日」へと外交路線の転換を図る。1910~11年にかけて、米国は「オレンジ作戦」と銘打って、太平洋上での「日米開戦」を想定するまでとなった。英国に対しては、日英同盟の廃棄(1923年)を迫るなど、アジアでの日本孤立外交を展開する。日本は、対英米に対して力による外交の「武断外交」で応えたのである。日本はついに自ら開戦して自滅した。これが、太平洋戦争の敗戦顛末である。

これら一連の米国外交戦略を見ていると、中国の領土膨張政策が米国の軍事警戒を呼び込んで当然である。中国は、それとも知らず無邪気にも「中華民族の再興」を叫んでいる。それは、単なるアドバルーンではない。南シナ海と東シナ海において、具体的に領土拡張へ動き出している。米国が、中国に対して厳重警戒に転じたのは当たり前である。

中国政府による「ナショナル・チャイナ・ガーデン」建設に対して、表面的は感謝を示しながら、建設段階になってモタモタしている感があるのは、「ありがた迷惑」に感じ始めている証拠であろう。米国は、誠実な国家にはそれなりの対応をする。危険と見た国に対しては、露骨な警戒感を示すのである。その点、韓国の中国寄り政策への転換が、賢明な外交戦略とは言い難いのだ。むろん、中国の軍拡路線にも厳重警戒である。

⑥ 「2008年に米国上院は、連邦政府の資金を『ナショナル・チャイナ・ガーデン』に使うことを禁止する、法的拘束力はないが冷淡な修正法案を可決した。民間の資金調達も遅々として進まない。中国は地上のすべての構造物を寄付し、組み立てのための作業員も送り込むことになっている。それでも、土壌整備と水景設備の準備は国立樹木園を運営する米農務省が行わなければならず、その費用は3500万ドルに上ると見られる。政府の規制により、建設予算を全額調達できるまで、工事には一切着工することができない」。

2008年、米国上院は強制力がないものの、「ナショナル・チャイナ・ガーデン」建設費として連邦政府予算の支出を禁じる法案を成立させた。中国の「庭園寄贈」に対する、米側の消極的な姿勢を示したのだ。この裏には、中国政府の産業スパイ事件などが悪影響を及ぼしているのは疑いない。建設費用3500万ドルは、民間資金に依存せざるを得なくなった。

⑦ 「このように、プロジェクト(「ナショナル・チャイナ・ガーデン」)の遅延は米国の世界観について多くを物語っている。(米国の)友情に対する中国の『衝撃と畏怖』的なアプローチは、より厄介な反応を招く。中国は一般的に、愛されるよりも恐れられている。6月24日、連邦議会の委員会は中国大使館の前の通りを、現在服役中でノーベル平和賞を受賞した反体制派の劉暁波氏にちなんで『リュウ・ギョウハ・プラザ』と名付ける法案を可決した。また、やはり6月には米国大学教授協会(AAUP)が、米国やカナダの多くの大学内で中国語や中国の歴史を教える中国資本の『孔子学院』は『国家の狙い』を推し進め、議論を制限していると非難した」。

「ナショナル・チャイナ・ガーデン」の建設が、遅々として進まないのはなぜなのか。米国で、3500万ドル程度の建設資金が集まらないはずがない。それは、中国の名前を冠するプロジェクト自体が、不人気になっている証拠である。太平洋戦争前、米国では日本が不人気であり、中国への同情が集まっていた。蒋介石は夫人を米国へ派遣して多額の国民党軍支援の義捐金を集めていた。代わって日本が非難の的にされていた。当時と現在では、日中の立場は完全に逆転している。日本が支援されており、中国が非難される立場になっているのだ。歴史とは皮肉なものである。非難される側に、不条理な原因が潜んでいるのである。

中国は、世界中で産業スパイ活動やサイバー攻撃を繰り広げている。プロテスタントが主流を占める米国から、道徳的に非難されないはずがないのだ。無信仰国の中国にしては理解不能であろう。自ら墓穴を掘っているのである。いずれ、戦前の日本が辿った軍事的破滅の道に転落するのであろう。歴史を鑑にするのは、中国であるが。

勝又壽良著『韓国経済がけっぷち』(アイバス出版)を刊行しました。よろしくお願い申し上げます。

(2014年7月14日)




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