映像化は不可能と言われていたあの名作をトランアンユン監督はどう描くのか。
ということで小説ノルウェイの森の大ファンである私も
どきどきしながら見てきました
ネタバレかもしれないので嫌な方は読まないでください。
しかも長いです。w
あまりにも原作が好きすぎて思い入れが強すぎて、
映画を見るのも少し躊躇してしまう程でした。
それでもハードル上げすぎないように期待しすぎないように気をつけて、
ひとりで見に行きました。
誰にも何にも影響されずに映画を見たくてひとりで見に行ったくせに、
結局ひとりでは消化しきれなくなって、見終わったあとになんだか呆然としてしまいました。
この映画がすきかきらいか、とか、
よかったかそうでもなかったか、とか
一切わからなくなってしまうぐらい、
なんだかやられてしまったんです。
映像化は難しいと言われていたこの作品がこうして2時間の映画になって、
映画としてはこれ以上のものはできないんじゃないかなって素直に思いました。
過不足なく、といった感じ。
最高の名作とはいえないけれど、
あの小説を今映画化するならこれができる限りの最上なのではないかと思います。
きっと原作のファンたちは、
レイコさんと女の子とのエピソードが全カットだとか、
ミドリのお父さんが1度しか出てこないとか、
突撃隊の存在感とか、
いろいろと言いたいことがあるのかもしれないけれど、
2時間という枠の中では
ちゃんと大切な場面と台詞が盛り込まれていたように思います。
特に賛否両論の菊池凛子の直子がわたしはかなりすきでした。
わたしの中ではイメージ通りどんぴしゃで、儚さも狂気さも本当に直子にしか見えなかった。
対照的にミドリはあまり好きになれなかった。
なんだか出落ち。
顔やスタイルはまるでミドリなのに、話し方が違った。
わたしは演技がうまいとか下手だとかそんなのはわからないけど
、ミドリの快活だけど裏悲しく、
ヘビースモーカーでかっこいい感じがあまり出ていなかったのが残念。
あとは個人的にはキズキの自殺シーンがよかった。
あまりにも謎に満ちたままの原作とは違い、
キズキの人間らしさと若さを感じることができた。
だからこそキズキの不在による直子の狂気と、
直子の不在によるワタナベの無関心さを実感として見ることができたんだと思う。
ワタナベが永沢を形容する台詞が、
やはり映像になっても素晴らしく心に響きました。
「彼は時として僕でさえ感動してしまいそうなくらい優しく、それと同時におそろしく底意地がわるかった。
びっくりするほど後期な精神を持ちあわせていると同時に、どうしようもない俗物だった。
人々を率いて楽天的にどんどん前に進んで行きながら、その心は孤独に陰鬱な泥沼の底でのたうっていた。
僕はそういう彼の背反性を最初からはっきり感じ取っていたし、
他の人々にどうしてそういう彼の面がみえないのかさっぱりわからなかった。
この男はこの男なりの地獄を抱えて生きているのだ。」
まだ映画を見るか迷っているなら、見て損はないと思います。
音楽も映像も素晴らしくきれいで、ワタナベと直子が本当にそこに生きています