「海の水はなぜからい」
脚色 青地忠三
漫画 村田安司
海の水は、最初は今のように塩辛くなかったのです。
Tむかしむかしあるところに
T兄と弟が住んでいました。
T兄は金持ち
T弟は貧乏
T正月が来るのに、弟はお支度が出来ないので、兄の家を訪れました。
(餅を搗いている兄)
弟「(臼に手をかける)手伝うよ」
T兄「よしてくれ、汚い手で触るんじゃない!T何か用か?」
弟「実は……Tお鏡をひと重ね貸していただきたいんで……」
T兄「貧乏人のくせに、正月の餅なんかぜいたくだ。さあ帰った帰った」
弟「そこを何とか……」
兄はそれっきり弟の方はちらっとも見ようとしません。
弟「弱ったなあ」
兄「まだそんなところにいるのか!早く帰れ!」
弟「……わかったよ(出て行く)」
兄「ふん!」
弟がいろいろ思案しながら歩いていると、一本橋を踏み外したお爺さんがーー!
弟「あっ、危ない!」
弟は走って行ってお爺さんを助け、一本橋を無事渡りました。
弟「(お爺さんを降ろして)危ないところでしたね、お爺さん」
お爺さん「本当にどうもTご親切かたじけない。そこでお礼のしるしに差し上げたいものがあるのじゃが」
弟「ーーえ?」
お爺さん「この饅頭を持って、向こうの森へ行ってごらん。T森の小人たちがこれを欲しがるに違いないが、お金にはかえずに、石の挽臼と取り替えなさい。お前さんの運がそれから開けますぞ!」
弟「そうですか。それはどうもありがとう(受け取って)」
お爺さん「では、ごきげんよう」
こうしてお爺さんから饅頭をもらった弟は、いわれたとおり村はずれの森に行くことにしました。森では小人たちが新しく皆で住む家を建てるため、力を合わせて働いていました。(坂道を丸太を運んでいる)
小人「それ引け、やれ引け!」
ところが突然縄が切れてーー
小人「うわーっ!助けてーっ!」
小人たち「待て待て待てーっ!」
丸太は大岩にぶつかってやっと止まりました。
弟「あははははは」
小人「ああびっくりした」
弟「小人さん、この丸太をTどこに運ぶんだ?」
小人「おいらの普請場へだ」
弟「そうかい、それじゃあわしが運んであげよう」
心根の優しい弟は、丸太を小人たちの普請場まで運んだだけではなく、家を建てる手伝いまでやってあげるのでした。
小人「(全員でお辞儀をして)このたびは本当にお世話になりました」
弟「いやいや、このくらい朝飯前のこと」
小人「そこでお礼といってはなんですがTつまらんご馳走様だが召し上がってください」
弟「いや、実はTわしもご馳走をもっているんだ」
弟が取り出したのが例のお爺さんからもらったお饅頭の包み。ひとつ手に取るとーー小人たちが身を乗り出します。
小人「親切な人、どうかTそのおいしそうなものを、ぜひおいらにも分けてくだされ」
弟「うーん、そうだなあ。でもTただじゃあやれないなあ」
小人「では、(袋から小判を出して)おいくらで分けてくださいますか?」
弟「いやT金はいらない。お前さんたちが持っている石の挽臼となら取り替えよう」
小人たち「ーーええっ!挽臼と?」
弟「(饅頭を手に取り)やあうまそうだ」
どうやら小人たちの挽臼は大変大切なもののようです。(鳩首会議)
小人たち「わかりました、ただいまあの石臼をお持ちいたしましょう」
(数人の小人たちが納屋の裏から挽臼を運んでくる)
弟「……ほう」
小人「これが挽臼でございます」
弟「うむ、では(饅頭の包みを小人の手に載せる)」
小人「この挽臼はT右へ回して欲しい物の名をいえばいくらでも出て来る。左へ回せばとまる」
弟「なるほど……ひとつやってみよう。T駕籠一挺出ろ!」
するとたちまち臼の中から駕籠が一挺!
弟「(腰を抜かして)こいつはたまげた、では今度はT駕籠かきふたり出ろ!」
今度はいかにも足の早そうな駕籠かきがふたり。
弟「やあやあ、これは誠に良いものをもらったものだ」
手を振る小人たちに見送られ、弟は駕籠に乗って帰って行く。
(ぐるぐる回る臼)それにしてもこの不思議な挽臼、
T家出ろ!
T蔵出ろ!
T田地出ろ!
T不思議な石臼のおかげで、貧乏な弟はたちまち村一番の長者になりました。弟は金持ちになっても穏やかで優しい性格のまま、あれだけ邪険にされた兄を招いて新年の宴を開いたのでありました。
兄「のうのう弟よ、Tそのありがたい石臼様をちょっとの間わしに貸してはくれまいか?」
弟「いや、あの石臼はT兄さんのようなお金持ちには用のないものですよ」
兄「ーーなに?」
弟「それよりも兄さん、Tさあ今夜は村の衆と一緒にたくさん召し上がってください」
(暗転)しかしーー
T欲の深い兄は石臼のことが思いあきらめられず、とうとうこれを盗み出しました。(塀を乗り越えてくる男)
兄「ははははTやっと石臼が手に入った。これから人のいない離れ島へ渡って思う存分ぜいたくに暮らすんだ!」
兄は、家財道具に財宝、そして石臼を乗せて、船を出しました。
T兄「さて、当分の食べ物はすっかり用意したつもりだが……(荷物をチェック)Tおっと、肝心の塩を忘れた!わしとしたことがーーTそうだ、早速お臼様へお頼みしよう!」
(臼に向かってお辞儀をして)
T兄「どうぞ、塩をお出しください」
そうして石臼を右回りに回し始めるとーー塩がどんどん湧いてきました。
兄「こいつは愉快愉快!これでわしはこの世で一番の金持ちじゃ!」
ところがーー臼はどんどん右に回り続け、塩はどんどん沸いてきます。
T兄「止まれ止まれ!もうたくさんだ!」
兄はそう臼にいいましたがT左へ回してとめることは知らなかったので……(臼をとめようとする兄)どうすることも出来ません。
兄「ああ、どうしよう……T誰かとめてくれーっ!」
その間にも塩はどんどん湧いてきて、ついにその重みで船は沈んでしまいました。(臼を抱えて沈む兄)臼と一緒に沈んだ兄は、人喰いサメにひと飲みーー(臼はタコにぶつかり、タコは墨を吐く)海の底に着いた臼は、今もこうして引き続き塩を生み出しているのです。映画一巻の終わり。
脚色 青地忠三
漫画 村田安司
海の水は、最初は今のように塩辛くなかったのです。
Tむかしむかしあるところに
T兄と弟が住んでいました。
T兄は金持ち
T弟は貧乏
T正月が来るのに、弟はお支度が出来ないので、兄の家を訪れました。
(餅を搗いている兄)
弟「(臼に手をかける)手伝うよ」
T兄「よしてくれ、汚い手で触るんじゃない!T何か用か?」
弟「実は……Tお鏡をひと重ね貸していただきたいんで……」
T兄「貧乏人のくせに、正月の餅なんかぜいたくだ。さあ帰った帰った」
弟「そこを何とか……」
兄はそれっきり弟の方はちらっとも見ようとしません。
弟「弱ったなあ」
兄「まだそんなところにいるのか!早く帰れ!」
弟「……わかったよ(出て行く)」
兄「ふん!」
弟がいろいろ思案しながら歩いていると、一本橋を踏み外したお爺さんがーー!
弟「あっ、危ない!」
弟は走って行ってお爺さんを助け、一本橋を無事渡りました。
弟「(お爺さんを降ろして)危ないところでしたね、お爺さん」
お爺さん「本当にどうもTご親切かたじけない。そこでお礼のしるしに差し上げたいものがあるのじゃが」
弟「ーーえ?」
お爺さん「この饅頭を持って、向こうの森へ行ってごらん。T森の小人たちがこれを欲しがるに違いないが、お金にはかえずに、石の挽臼と取り替えなさい。お前さんの運がそれから開けますぞ!」
弟「そうですか。それはどうもありがとう(受け取って)」
お爺さん「では、ごきげんよう」
こうしてお爺さんから饅頭をもらった弟は、いわれたとおり村はずれの森に行くことにしました。森では小人たちが新しく皆で住む家を建てるため、力を合わせて働いていました。(坂道を丸太を運んでいる)
小人「それ引け、やれ引け!」
ところが突然縄が切れてーー
小人「うわーっ!助けてーっ!」
小人たち「待て待て待てーっ!」
丸太は大岩にぶつかってやっと止まりました。
弟「あははははは」
小人「ああびっくりした」
弟「小人さん、この丸太をTどこに運ぶんだ?」
小人「おいらの普請場へだ」
弟「そうかい、それじゃあわしが運んであげよう」
心根の優しい弟は、丸太を小人たちの普請場まで運んだだけではなく、家を建てる手伝いまでやってあげるのでした。
小人「(全員でお辞儀をして)このたびは本当にお世話になりました」
弟「いやいや、このくらい朝飯前のこと」
小人「そこでお礼といってはなんですがTつまらんご馳走様だが召し上がってください」
弟「いや、実はTわしもご馳走をもっているんだ」
弟が取り出したのが例のお爺さんからもらったお饅頭の包み。ひとつ手に取るとーー小人たちが身を乗り出します。
小人「親切な人、どうかTそのおいしそうなものを、ぜひおいらにも分けてくだされ」
弟「うーん、そうだなあ。でもTただじゃあやれないなあ」
小人「では、(袋から小判を出して)おいくらで分けてくださいますか?」
弟「いやT金はいらない。お前さんたちが持っている石の挽臼となら取り替えよう」
小人たち「ーーええっ!挽臼と?」
弟「(饅頭を手に取り)やあうまそうだ」
どうやら小人たちの挽臼は大変大切なもののようです。(鳩首会議)
小人たち「わかりました、ただいまあの石臼をお持ちいたしましょう」
(数人の小人たちが納屋の裏から挽臼を運んでくる)
弟「……ほう」
小人「これが挽臼でございます」
弟「うむ、では(饅頭の包みを小人の手に載せる)」
小人「この挽臼はT右へ回して欲しい物の名をいえばいくらでも出て来る。左へ回せばとまる」
弟「なるほど……ひとつやってみよう。T駕籠一挺出ろ!」
するとたちまち臼の中から駕籠が一挺!
弟「(腰を抜かして)こいつはたまげた、では今度はT駕籠かきふたり出ろ!」
今度はいかにも足の早そうな駕籠かきがふたり。
弟「やあやあ、これは誠に良いものをもらったものだ」
手を振る小人たちに見送られ、弟は駕籠に乗って帰って行く。
(ぐるぐる回る臼)それにしてもこの不思議な挽臼、
T家出ろ!
T蔵出ろ!
T田地出ろ!
T不思議な石臼のおかげで、貧乏な弟はたちまち村一番の長者になりました。弟は金持ちになっても穏やかで優しい性格のまま、あれだけ邪険にされた兄を招いて新年の宴を開いたのでありました。
兄「のうのう弟よ、Tそのありがたい石臼様をちょっとの間わしに貸してはくれまいか?」
弟「いや、あの石臼はT兄さんのようなお金持ちには用のないものですよ」
兄「ーーなに?」
弟「それよりも兄さん、Tさあ今夜は村の衆と一緒にたくさん召し上がってください」
(暗転)しかしーー
T欲の深い兄は石臼のことが思いあきらめられず、とうとうこれを盗み出しました。(塀を乗り越えてくる男)
兄「ははははTやっと石臼が手に入った。これから人のいない離れ島へ渡って思う存分ぜいたくに暮らすんだ!」
兄は、家財道具に財宝、そして石臼を乗せて、船を出しました。
T兄「さて、当分の食べ物はすっかり用意したつもりだが……(荷物をチェック)Tおっと、肝心の塩を忘れた!わしとしたことがーーTそうだ、早速お臼様へお頼みしよう!」
(臼に向かってお辞儀をして)
T兄「どうぞ、塩をお出しください」
そうして石臼を右回りに回し始めるとーー塩がどんどん湧いてきました。
兄「こいつは愉快愉快!これでわしはこの世で一番の金持ちじゃ!」
ところがーー臼はどんどん右に回り続け、塩はどんどん沸いてきます。
T兄「止まれ止まれ!もうたくさんだ!」
兄はそう臼にいいましたがT左へ回してとめることは知らなかったので……(臼をとめようとする兄)どうすることも出来ません。
兄「ああ、どうしよう……T誰かとめてくれーっ!」
その間にも塩はどんどん湧いてきて、ついにその重みで船は沈んでしまいました。(臼を抱えて沈む兄)臼と一緒に沈んだ兄は、人喰いサメにひと飲みーー(臼はタコにぶつかり、タコは墨を吐く)海の底に着いた臼は、今もこうして引き続き塩を生み出しているのです。映画一巻の終わり。
