ドタバタ撮影所

制作年不詳であるが、登場する女優「パール・ブラック」は、1910年代に「連続活劇の女王」と呼ばれたパール・ホワイト(1889〜1938年)のパロディと思われる。

ここは映画の都ハリウッド。T変わり者の脚本家ジョニーくん、住み慣れたホテルを追い出され、今はただ愛用のタイプライターだけを大切に抱えて

「痛いっ!」
「大変! 大丈夫ですか?Tまあ失礼いたしましたわ、痛かったでしょう? T私、こういう者ですの。では急いでおりますので」
「綺麗な人だなあ……パール・ブラックさんか。T女優さんだな。あ、落し物だ! ちょっとブラックさん、ハンカチを落としましたよ! ちょっとったらー!」

大女優パール・ブラックはそのまま撮影所へ。

「よいしょ、ふう」
「いてて……まったく」
T「おいおい、入ってはいかん。関係者以外立ち入り禁止。さあ、帰った帰った」

こちらはスタジオ。

「おまたせ」
T「おお、君の来るのを待ってたよ」
T「あら、そう、ちょっとまっててね。準備してくるわ」
「おい、ダメだっていってるだろう!」
「いや、だからブラックさんに落し物を。ずいぶん力持ちだなあ。よーし……ねえねえ君たち、T早いとこ一周回った方に5ドルやるよ」
「よし! 任せろ!」
T「ワン、ツー、スリー!」
「あいつらが!」

ジョニーくんそのすきにゆうゆうと中へ。

「こいつめ!」

一方のスタジオ。人気者のお猿のジョージ。

T「あれ、俺が向こうにいるのかな? ここにもいる」

好奇心旺盛なジョージ。

「洞窟だ、探検しよう!」
「ううん、よし。い、痛い!足が!T ああ、痛え!な、なんだなんだなんだ、イタタタタタ、あ、猿、猿か!この野郎!」
「ここにも洞窟が!」
「ええい、どこに行った?あ、ははは、やっぱり猿だな、ははは、それで隠れてるつもりか、ははは、Tこのくらいにしておいたら少しは懲りるだろう。そこで反省しておけ」

ジョージは反省しない猿。

「おいおい、ずいぶん手間どっちまったぞ。んん! イテテテテ」

こちらは、真面目な掃除人のボブ。

「うわっ! 靴がひとりで! お、おばけ!」

T撮影開始。演出にも熱が入ります。

T「さあそこで気分を出して大いにやるんだ! いいぞー!」
「助けてー」「あ、大変だ、今助けるぞ! えい!」「いたいー!」

そこに出くわしたのがジョニーくん。

「うわっ! く、クマだ! 大変だ大変だ! えいっ! みんな、逃げてー! クマが出たよー!」
「あの野郎、よくもやったな!」

ジョニーくんのせいで撮影は中断。大混乱に陥った現場。

T「せっかくの撮影が台無しだ」
「僕におまかせを!」
「こら、待て!」
「助けてー!」

アクションスターばりの運動神経の持ち主ジョニーくん、するりするりと逃げ回ります。鉄柱を登るジョニーくん、追うクマ。

T「おーい、助けてくれー! 誰かー!」

クマから逃げ切ったジョニーくんが降り立ったところは……

T「あ、ライオンだ!」

驚くとずりあがる仕様。

「うわっ! 逃げろー!」

ライオンたちにとっては時間外のおやつみたいなもの。

「ん? なんだなんだ!Tああ、こりゃ大変だ、おいおい、そこの人大丈夫かい? ちょっと待っててくれ、今開けるから……ちょっと……あれ、Tカギが折れちゃった」
「早く、早く助けてー!」
「ちょ、ちょっと待って、今、今開けるから」
「待ってられないよー」

自ら穴を掘り始めるジョニーくん。

T「ああくたびれた」

しかしついに火事場の馬鹿力を発揮して向こう側へ。ところが一難去ってまた一難!

「わわーっ! ライオンの隣がワニだなんて聞いてないよー」
「ガブリ」
「いてっ!」

厚手の冬物ズボンで本当によかった。しかし気が動転したあまり隣のライオン舎へ戻るジョニーくん。

T「助けてくれー!」
「ふう……よし、おーい! 開いたよー! 早く早く! わわーっ!」
「開いたってよ」
「開いたのね」
「どうぞどうぞ、お通りください! いってらっしゃーい!」
「助けてー!」

かわって撮影現場。

「監督、Tもういっぺんやり直さなくてはダメだ」
「うむ。ではみんなスタンバイ!」

野に放たれたライオンたち。
気を取り直し、撮影再開。

「いたいー!」

目の前に現れたのは……。

「うわー!」
「いいぞいいぞ! Tあ、こりゃいけない!」

再びスタジオ内は大混乱であります。

T「おーい、誰か来てくれーっ!」

ジョニーくんにご執心のライオンが一頭。

「助けてー! よし、鍵をかけて、と。あれれ、なんだこれ!」

ボブも仕事中にライオンを目撃。早速身を隠す。

「助けてー! あ、ここにいいものが!」
「天に在します我らが神よ、われを救いたまえ清めたまえ、アーメンソーメン冷やソーメン……」
「古くないそれ?」
「あっ!」

恐怖を感じるとずり下がる仕様。
一方のジョニーくん。

「抜き足差し足忍び足……うわやばい! はあ、助かった……んん、このネコ科な感じは……やっぱり!」

ついにジョニーくん、車の中へ。

「おいおい、T君、急いでくれたまえ」
「はいはい、わかりました」

車はスタート、ついに危地を脱したか、と思いきや……ジョニーくんの様子がおかしい。一体車内で何が起こっているのでありましょうか。

「お客さん、どちらまで?T何だかヘンだぞ。んん、うわー!」

光と影の織りなす絢爛たる夢の都ハリウッド、Tかくしてジョニーくんは猛獣のために散々追い回され、九死に一生を得ました。映画「ドタバタ撮影所」全巻の終わりであります。