1921年「ロイドのパパさん」
I do.

監督 ハル・ローチ
脚本 ハル・ローチ
   サム・テイラー
夫 ハロルド・ロイド
妻 ミルドレッド・デイビス
男の子 ジャッキー・モーガン
赤ん坊 ジャック・エドワーズ

(カーテンのブランコで遊ぶ子供)知人の子供を預かることになったハロルドとミルドレッド夫婦。

ロイド「おいおい、何をやってるんだよ!(抱えて下ろす)これはブランコじゃないよ!ええと、どうやってつけたのこれ?よいしょ!(尻餅)あっ!(太鼓が破れる)」
子供「あっ!太鼓が壊れちゃった!おぢさんのばかばかばか!」
ロイド「ああ、ごめんよ……弱ったな……じゃあさ、これで新しいのを買っておいで(金を渡す)」

こんなことで自分も父親になれるのだろうかーー思い悩むハロルド青年。

ロイド「ねえミルドレッドーー」
Tミルドレッド「静かにしてくださいよ。1時間もかかってやっと寝かしつけたとこなの」
ロイド「わかったーーどれどれ(ゆりかごの中で眠る赤ん坊)
T眠っているときだけはほんとに天使だねーーは、は、ハクション!」

(赤ん坊、目を覚ます)

ミルドレッド「ああ、起きちゃった……Tわざわざここでくしゃみをしなくてもいいじゃありませんか!」
ロイド「ごめんよ」
Tミルドレッド「洗濯物を片付けて来ますから、今度はあなたが寝かせてください」
ロイド「わかったよ(赤ん坊を抱き抱えて)よーし、よしよし、泣きやんでおくれよぉ」

そのころ、T坊やは花火をうんと買い込んだ。
(花火を抱えて店を出る坊や)悪戦苦闘するハロルド。

ロイド「弱ったなあ。お腹がすいてるのかい?(哺乳瓶を手にする)空だね、空じゃダメだよね(絵の具を見つける)そうだ!これをこうして……」

(泣きじゃくる赤ん坊)

ロイド「よし、出来た!さあさあ、ミルクだよー」

(無心に吸う赤ん坊)

ロイド「ははは飲んでる飲んでる……空っぽなのに」

(すやすやと眠る赤ん坊)

ロイド「寝ちゃったな……T赤ん坊をだますくらいは訳なしだ……さて、と(抜き足差し足で部屋を出る)」

しかし油断大敵!(オモチャの車に足を乗せるロイド)

ロイド「うわーっ!(階段から転がり落ちる)」

その音に、赤ん坊が目を覚ましーー(泣き出す)

ロイド「しまった……」
ミルドレッド「あなた、何をやってるの?」
ロイド「ごめん」
Tミルドレッド「滑り台ならお庭の方でやってください!いいですね!」
ロイド「しかたない……」

(たんまり買った花火を仕分ける坊や)そこへご婦人が訪ねてきた。

ロイド「はいーー何か?」
ご婦人「あの男を見てちょうだい。
Tあの変な人が毎日このへんをうろつくんです。近頃強盗騒ぎが多いんですから、用心してください」
ロイド「そうですか、教えてくれてありがとうございます。気をつけます(こちらを見る男)中へ入ろう」
ミルドレッド「本当に心配だわ」
ロイド「そうだね……(新聞を広げて)おや?」

T新聞記事
Bold bandit attacks, robs major steele
大胆なる強盗、退職少佐邸を襲う……

ロイド「強盗……」

人並み以上の想像力を持つハロルドの頭の中で、まるで目の前で見ているかのように惨劇が繰り広げられる。

ロイド「……」

(玄関のブザーが押される)

ミルドレッド「あなた!」
ロイド「だ、大丈夫だよ、僕がいるから。きっとさっきの親切なご婦人だよーー(開ける)」

しかし玄関に立っていたのはーー
(暗転)
Tその夜、窓を照らす不審な光は、眠っているハロルドの姿もくっきりと照らす。

ロイド「ん、ん、なんだ?強盗か?……強盗なのか?」

(ランプの紐と間違えて引っ張る)

ロイド「(上から何か落ちて来て)うわっ!(人形だとわかって)なんだ、びっくりさせるなあ」

(猫の悪戯)

ロイド「今度はなんだ?(ドアを開ける)そこに隠れているのはわかってるんだぞ!いない……(マネキンが振り向く)うわっ、出た!(バットを持って)よーし、やってやるぞ!」

決死の覚悟で強盗を撃退すべく攻撃するハロルド。

ロイド「こいつめ!ーーあれ?マネキンじゃないか!」
ミルドレッド「(起きる)はっ!何、あの音は?」

暗闇の中、お互いの立てる音に驚くふたり。(ロイドに抱きつくミルドレッド)そして猫の悪戯は続く。(階段を落ちるボール)

ミルドレッド「あの音はーー?」
ロイド「(耳を澄ませて)やっぱり誰かいる」
ミルドレッド「誰かって?」
ロイド「強盗だよ!」
ミルドレッド「あなた怖い!」
ロイド「大丈夫、僕に任せて(ガウンを着る)」

(顔入りの風船)

ロイド「じゃあ行ってくるよ!ーーよーし……あっ!」

闇に浮かぶ風船。ハロルドにはそれはーー

ロイド「ーー強盗だ!ちくしょう!えいっ!(階段を落ちる)あれ?……どこに行った?え?え?確かに気配はするのに……」

(ゆっくり歩くロイド。風船はついてくる)

ロイド「はっ!誰だ?どこにいる?(銅像の棒の先が頭に)あ、しまった……(両手を上げる)助けて……(風船が破裂)うわー撃たれた!(倒れる)……あれ?何ともない。良かった……」

罪作りな猫はまだまだ元気いっぱい。(白い袋?に入り込む)

ロイド「(歩き回る猫を見て)うわ!お化け!」

住み込みのメイドさんも起きて来た。猫はメイドさんが大好き(飛びつく)。

メイド「ギャーッ!」
ロイド「な、何だ!(ぶつかる)一体どうしたんだ?」

メイドの落とした手燭の火が花火に引火。ロケット花火が飛び交う!

ロイド「うわわーっ!戦争か?戦争が始まったのか?」

(メイドのお尻に花火が直撃)

ロイド「誰か助けて(ドアを開ける)」
男「どうしました?」
ロイド「強盗だーっ!」
男「待って!」
ロイド「来るなーっ!」
男「ちょっと、開けてください!」
ロイド「開けるもんか強盗め!」
T男「僕は夜番です。なんですかお宅の騒ぎは?何時だと思ってるんです?」
ロイド「え……?なんだ、そうか」
メイド「あやしいやつ、みんなあいつのせいね」
男「開けてくだーー」
メイド「こいつめ!こいつめ!」
ロイド「ああ、やめてくれ!この人はあやしい人じゃないんだよ!ちょっと落ち着いて!」

当然赤ん坊は目を覚ます。

ロイド「いけないーーあっ!」

(男の子が赤ん坊にロケット花火を向けている)

ロイド「やめてやめて!(花火を取り上げる)ダメだよまったく……こんなものはここにしまって(箪笥の引き出しを開ける)……あれ?これは?(赤ん坊の産着)」
ミルドレッド「(恥ずかしそうに)」
ロイド「ミルドレッド……もしかしてTまた赤ん坊?」
ミルドレッド「また、じゃないわ。初めての私たちの赤ん坊よ」

ついに父親になるのだーー嬉しい気持ちととも前途多難だぞこれは、と気を引き締める新米パパであった。「ロイドのパパさん」これにて全巻の終わり。