モカの特徴であるすっきりとした酸味がすごくいい。そして芳醇な香りから口に含んだときのほどよい苦みと甘み、品の良いコクもあり、まるで熟成された赤ワインのような味わいです。
モカは酸っぱい!という印象があり敬遠する人が多いですが(私もそんな先入観を持っていました)、焙煎したての新鮮なモカをぜひ一度味わってみてください。とてもフルーティで爽やかな酸味は、酸っぱい!とは違いコーヒーのおいしさを引き立ててくれます。「モカハラー」は飽きのこない逸品です。
こちらのサイトでどうぞ => http://www.tonya.co.jp/a/a10/1-100.html
このイタリアワインを想い起こさせる上質なコーヒーを飲みながら読む本は、
「イタリアからの手紙」塩野七生(著)
あえて言うまでもなくという感じですが、著者はイタリアに住みイタリアを中心にしたヨーロッパの歴史小説を多数執筆しています。
著者の書くエッセイも定評があります。
本書はイタリア生活で見たり出会ったりした風景を、まるでスケッチのように描いていたり、そこから連想される歴史上の出来事やイタリア人の気質などが、ユーモラスに書かれていて、著者の多彩さが存分に味わえる作品です。
24編の中で、私のお気に入りをいくつか。
「永遠の都」
歴史の都ローマをなんと娼婦に例えています。ローマは次々と歴史上に登場する男たちを惑わせている不滅の娼婦であり、自らは全く生産能力を持たない。だからこそ永遠の都であり得るのだという著者の見方がとてもおもしろい一編です。
「イタリア式運転術」
ローマの旧市街地は元々道もそんなに広くない上に、路上駐車が当たり前。さらに狭くなった道をローマ人が慎重に走るわけはありません。隙さえあれば割り込んでくるし、標識なんてないようなもの。歩行者だって車を気にすることなく堂々と道を横断します。
その分常に不測を予想して運転しているため、返って大きな事故は起きないとか。ローマでは技術と勇気がないと運転できないですね。
「ナポレターノ」
陽気なイタリア人の中でも、最も陽気な人たちがナポリで生まれ育ったナポレターノたち。治安が悪く、窃盗などは日常茶飯事のこの地域に住むナポレターノに騙されたりしても、なぜか憎む気になれないという著者。待ち合わせには1時間以上遅れることも当たり前というのは、日本の沖縄でもよく聞く話であり、やはり温暖な気候の土地特有の気質なんだなと腑に落ちます。
あと、シチリアをテーマにした4編「シチリア」「マフィア」「友だち」「シチリアのドン・キホーテ」は、シチリアの歴史を改めて学ぶことができる、エッセイとして読み流してしまうのはもったいないような内容の濃い作品です。
モカコーヒーの爽やかで上品な味わいの向こうに、地中海の温かな風を感じられる優雅なひと時を過ごしています。
(了)