ポケットから文庫本シリーズ、本シリーズ2回目の登場になる作家堀江敏幸氏の作品。
前回はエッセイのような書評「本の音」でしたが、今回は著者の代表作ともいえる短編小説集です。「雪沼とその周辺」堀江敏幸(著)
著者の美しく優しい文章が秀逸であることは、文芸界では周知の事実ですが、この作品でもそれを存分に堪能できます。
7つの短編に登場する人物は、みな過去に心の大きな傷となるような出来事を経験しています。
そして雪沼という山あいの田舎町での静かな暮らしの中で、あるモノとの関係、そのモノとつながる人との関係を通して、少しずつ傷が癒されていく何気ない日々の生活を、まるで著者が町のどこかからそっと見守っているかのように、優しく描かれています。
過去の出来事や今の暮らしの全てが明らかにされるのではなく、微妙にぼかされた表現で書かれているため、読みすすめるほどに一層想像を掻き立てられ、雪沼の暮らしの中に引き込まれていきます。
読後には、切なさと癒しとが入り混じったような、心地よい静かな余韻が心を満たしてくれます。
7つの物語間に直接的なつながりはないのですが、おそらく雪沼という田舎町の中で、どこかで誰かと誰かがきっと出会って同じ時間を共有しているのだろうなと想像できます。
そこから新たな物語が生まれてくるのではないか、なぜかそんな、わくわくする期待感を持ってしまいます。
繰り返しになってしまいますが、堀江敏幸という優れた現代作家の実力を、存分に味わうことのできる作品です。
私の中の3ツ星小説のひとつである事は、間違いありません。
(了)
7つの物語間に直接的なつながりはないのですが、おそらく雪沼という田舎町の中で、どこかで誰かと誰かがきっと出会って同じ時間を共有しているのだろうなと想像できます。
そこから新たな物語が生まれてくるのではないか、なぜかそんな、わくわくする期待感を持ってしまいます。
繰り返しになってしまいますが、堀江敏幸という優れた現代作家の実力を、存分に味わうことのできる作品です。
私の中の3ツ星小説のひとつである事は、間違いありません。
(了)