”次期行政長官に李家超氏確実香港マカオ式信任投票へ” | ウインのワクワク「LIFE」

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次期行政長官に李家超氏確実 香港
候補1人のマカオ式信任投票へ

 

香港政府トップの林鄭月娥行政長官が再選不出馬を決め、香港政府ナンバー2の政務官で警察出身の李家超氏が5月8日に行われる行政長官選の立候補を表明した。中国政府は李氏が唯一の候補と伝えており、返還後のマカオ行政長官選と同様の信任投票に一変し、民主派を徹底排除し、競う複数候補すら許諾しない中国式の形式上だけの投票となりそうだ。(深川耕治)

 

 

▲4月4日、香港行政長官選挙への再出馬を辞退する発表をした直後の林鄭月娥行政長官

 

 

国家安全維持法(国安法)が施行され、一国二制度が機能しなくなった〝非常事態〟の香港では、健全な政治ジンクスすら覆される中国式の信認投票の様相に一変し、「愛国者」以外の民主派は立候補できず、一般市民に投票権すらない、民意とはほど遠い一党独裁型選挙に変容する見通しだ。

 

 

▲香港行政長官への立候補を表明する李家超(ジョン・リー)氏
4月6日、香港にある中国政府の出先機関「中央政府駐香港特別行政区連絡弁公室(中連弁)」は行政長官を選出する権限のある選挙委員(定数1500人)の集会で「李家超氏が唯一の支持できる候補者」と伝えた。

 

 

1999年にポルトガルから中国に返還された一国二制度のマカオは行政長官選で候補者が常に一本化され、信任投票の形だった。マカオ行政長官は初代の何厚●(金ヘンに華)氏、二代目の崔世安氏は2期10年を全うし、三代目の賀一誠氏も中国の意向通りの順当な政権運営を続けており、香港も、マカオ方式に一変させることで政治的安定を掌握したい中国政府の強権的意図が透けて見える。
 

▲李家超氏(右)と歌唱する夫人。愛妻家で知られ、警察畑だけに個人的な写真が少ない中での貴重な1ショット。二人には長男、次男がいて、二人とも香港大学卒業のエリート。23歳の時に生まれた長男はフランス留学後、修士号を取得し、一般企業に勤務している。李家超氏本人は2012年に英国籍から離脱しているが、妻子は英国籍を取得したままの二重国籍状態

 

行政長官選は親中派が99%を占める約1500人の選挙委員だけが投票できるシステム。立候補する場合、中国政府お墨付きの全国人民代表を含む188人の推薦が必要となる。李家超氏は13日、過半数となる推薦人786人を得て立候補手続きを行い、当選確実の情勢だ。

▲香港行政長官選挙の推薦人集めに動く李家超氏(中央)。広東語の発音の李家超と日本のアニメ主人公ピカチューの発音がきわめて似ているため、ピカチューとの愛称で呼ばれることもあるが、拒絶していないという

 

香港警察出身の李氏は、19年の大規模な反政府デモでは治安機関トップの保安局長としてデモ阻止のために催涙ガスを発射したり、若者を多数逮捕。民主派の取り締まりを主導した強硬派として知られる。

 

出馬の記者会見では「安定こそ、最優先」と話し、行政長官の資質は「愛国者であること」と習近平指導部への忠誠心を強調。「国家に忠誠を尽くし、香港を愛し、市民への責任を果たす」と基本的なスタンスを示した。とくに住宅難で一般市民が住宅を購入できない現状を「私も若い頃、公営住宅で過ごした。困難はよくわかる」と話すが、本人は何文田の高級住宅に住んでいる。

 

 

英国に亡命した民主活動家の羅冠聡氏は李氏の出馬についてツイッターに「絶対権力を付託された邪悪な独裁者」と投稿した。国家安全維持法(国安法)が制定されて以降、民主派が正面から政府批判をする発言が皆無に近い中、海外在住の民主活動家は未だに健在で逆に新鮮に思えるほど重苦しい空気が香港に蔓延している。

▲李家超氏の行政長官立候補を歓迎、支持表明する葉劉淑儀(レジーナ・イップ)新民党主席(中央右)と会談を終えたばかりの李家超氏(中央左)