ワインへの入口 | 「かつのブログ」

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ごく適当なことを、いい加減に書こうかとw

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ワインについて知りたいので書いてくれ、という人が結構いるので、私の考えることなど語ってみたいと思います。



先ず言いたいのは、貴方のお好きなように

ワインは何処から入ればいいのか、というのも良く訊かれる話ですが、基本的には「どうぞお好きな所から」で良いと思いますw 何を学ばねばならないとか、そういうものではなく、これは単に自分の舌に合うのがなんなのかを知る作業に過ぎないのでして。

スポーツなんかでもそうですね。基本的にはゲームであり、楽しむことが最初にあると欧米人はよく理解していますから、お馬鹿な根性論なんか唱えませんが、日本ではプロスポーツですら体罰が問題になったりするのは、物事の本質が理解されていないからだと思います。(ましてや、少年野球とかで軍隊方式での訓練など、虫唾が走ります)

ただ、自分が好きなものを探すためのヒントになる事、というのはあります。
大きく分けて、重要な要素は四つです。品種、土地、作り方、そして人、の四つ。



まず第一には、ぶどうの品種、第二に畑のある場所です。ただ、品種と土地は分けるのが難しい所があります。

品種には国際品種と地場品種があって、国際品種は主として
白用:シャルドネ、ソーヴィニョン・ブラン、セミヨン、ピノ・ブラン、ミュスカ、リースリング、シュナン・ブランなどなど
赤用:カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、ピノ・ノワール、カベルネ・フラン、シラー、グルナッシュ(ガルナチャ)、プチ・ベルドなどなど
があります。これぐらいは何となく覚えておくと、幸せになれる確率が上がるかもですw

地場品種というのは、特定の地域だけで作られるので、当然ながら畑のある場所に大いに関係します。

例えば、イタリアのキャンティというワインは、トスカーナ地方の地場品種であるサンジョベーゼを主体にして作られます。サンジョベーゼは他にも、極めて多くの有名ワインに使われていますが、何故か国際品種ではありません。
「ワインの王にして、王のワイン」 と讃えられる、イタリアワインの帝王 「バローロ」 も、やはりピエモンテ州の地場品種であるネッビオーロから作られます。

フランスワインの名醸地で作られている ぶどうは、ほとんどが国際品種です。というより、フランスワインが世界で有名になったからあちこちに植えられて、国際品種にされたのですがw 
しかしミュスカデなどのフランスの地場品種というのもあるにはあります。ミュスカデと似た名前でミュスカという国際品種がありますが、これは日本語で言うマスカットで違うものです。

日本だけで作られる品種もあります。白の甲州とか、赤のマスカット・ベーリーAなどがそれです。日本という土地で作られたワインの味を語るのに、これらの品種を抜きには語れないものがあります。

国際品種でも、気候と土地柄によって向き不向きがあります。
グルナッシュは比較的暖かい土地で作られます。シラー(オーストラリアではシラーズ)もあまり寒い土地では作られませんが、比較的高地でも作られていて、ローヌ地方の高級ワインに使われています。

ジンファンデル(イタリアではプリミティーボ) などは国際品種ではありますが、実質的にアメリカのナパ・ヴァレーでしか高級品はありません。この土地にあった品種だったのが、世界を回ってめぐりあったのです。

ブルゴーニュの高級ワインは全て100% ピノ・ノワールですが、この品種は土地の影響が大きく味に現れ、ピノの味よりもその土地の味を出しやすいと言われています。実際、新世界(ワインの世界では欧州以外をこう呼びます)のものなどは別物に感じます。ブルゴーニュの味はブルゴーニュに於いてのみその味を作れるので、「神に選ばれた土地」とか言われます。

この品種は、以前お話したシャンパーニュでも使われます。白の国際品種であるピノ・ブランとかピノ・グリージョはこの品種の変種です。
ドイツではシュペート・ブルグンダー、イタリアではピノ・ネロと呼ばれています。比較的冷涼で乾いた土地で作られます。
私はこの品種が一番好きです。ということは、ブルゴーニュとシャンパーニュが好きだということですw

カベルネ・ソーヴィニョン(単にカベルネとも)はソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・フランの自然交配によってできた品種ですが、安定したものができ易いこともあって赤用の貴品種として世界で最もメジャーなものです。ボルドーはこの品種とメルローを主として用います。ただ、メルローは冷涼で湿潤な土地が向くので、それがカベルネと違う点です。
概ねボルドー左岸はカベルネ主体、右岸はメルロー主体ですが、ボルドーは大概アッサンブラージュされて作られますので割合の問題です。もちろん単一で有名なものもありますが。

日本の長野県では、高級赤ワインでメルローが案外と多いです。



三番目は、作り方です。これも品種や土地に深くかかわっています。
貴腐ワインとか聞いたことがあると思いますが、これは作り方によります。

貴腐ワインという甘口ワインは、貴腐菌がぶどうにつくことでカビが生えてぶどうの甘みを凝縮します。これはセミヨンやシュナン・ブラン、リースリングなどの限られた品種でしか起こりません。

貴腐ワインで有名なのは、セミヨン種ならボルドー県のソーテルヌ地方、フルミント種というハンガリーの地場品種から作られるトカイ地方のトカイ・ワイン、ドイツのライン地方で作られるトロッケン・ベーレン・アウスレーゼ (基本、リースリング主体だが地場品種もある) のものなどがあります。

極甘口の白ワインには色々な作り方があって、アイスワインというのもあります。これは木に実ったまま氷結したぶどうが、その水分を飛ばしてしまうことからできるものですが、当然、そういう土地でしかできず、その寒さに耐える品種でのみ可能です。だからリースリングのような寒冷地でできるものでしか存在しません。という事はオーストリアとドイツとカナダでしかできません(というか、国際標章でそれ以外はアイスワインを名乗れない)。
カナダには、ヴァイダルというアイスワイン専用品種があります。

イタリアのヴィンサント(聖なるワインの意)は、ぶどうを干して甘みを増したものから作ります。
クレオパトラが愛飲したので有名な、キプロスのコマンダリアもこれに似た作り方です。
しかし、干したものから作れば必ず甘口になるわけではありません。イタリアのアマローネ(苦いの意)は陰干ししたぶどうから作られますが、非常に濃厚な辛口赤ワインです。

シャンパーニュ製法については以前、詳しく述べましたが、この方式で作られるものには、シャンパーニュ地方以外のものは:
フランスではクレマン、イタリアではスプマンテ、スペインではカヴァ、ドイツではゼクトと呼ばれます。
泡が出ていても、シャンパーニュ製法でなければそう呼んではいけません。後から炭酸ガスを加える製法もあって、そういうワインをフランスではヴァン・ムスー(泡のワイン)と言います。

また、畑の作り方も重要です。
最近の流行は「自然派」と呼ばれるもので、リュット・レゾネ(減農薬)とかビオ・ロジック(無農薬で有機栽培)、或いはビオ・ディナミという人智学で有名なルドルフ・シュタイナーが提唱したオカルト(白魔術)を元にするものもあります。
経験的に、私は自然派のものが好きなケースが多いようです。



四番目は作る人です。
もちろん、畑の作り方とかワインの醸造方法とかは、その人と土地によるので、密接に関わってきますし、品種が違えば畑や醸造方法だって変ってしまいます。
それでも四番目が「人」だと言うのは、ブルゴーニュワインとか最近のイタリアワインなどは、人が違えば違うものとしか言いようが無いからです。

ブルゴーニュでは、ドメーヌと呼ばれる小さな生産者が自分でぶどうを栽培して自分で収穫して自分で醸造します。だから品種どころか、ぶどうの木も土地も同じでも、人が変われば別物になります。
「ブルゴーニュの神」と呼ばれた、故アンリ・ジャイエが亡くなって、その最良の土地 「クロ・パラントゥ」 を継いだエマニエル・ルジェとメオ・カミュゼという二つのドメーヌがありますが、前者は確かに味筋が似ているものの、後者は全く違うものです。
良い・悪いではなくて、「違う」のです。

私の嫌いな品種にカベルネ・フランがあります。
フラン100%で作られるので有名な、フランスのシノンで美味いと思ったことはありません。
しかし、イタリアのルカ・ダットーマの作るフランの味は、フランとは別物である、としか感じられません。

八王子のあるイタリア料理店に通い始めた頃、私が絶対に日替わりのメニューでメルローが出ても頼まないので、マスターに一度飲んでみてくれと言われて、メルローに対する考えを改めた事がありますw



じゃあ人が一番じゃないのか?、と思われるかも知れませんが、それでも品種が一番で土地が二番ですw
ピノ・ノワールの繊細さは、他のぶどうでは得られません。中でもその女性的な優しさは、シャンボール・ミュジニの村で得られるのものが私にとっては最良です。
メルローから作られるイタリアのレディ・ガフィは間違いなく最高のワインですが、しかしシャンボール・ミュジニとは住む世界が違うのです。

ピノ・ノワールは酸味が強くて薄いので嫌いな人もいます。好きな人はそれが好きです。
カベルネ・ソーヴィニョンはタニックで堅くて飲みにくい人もいます。好きな人はそれが好きです。

ソーヴィニョン・ブランはボルドーやロワールでは緑の香りが強く、新世界ではそれがありません。新世界の住人は無いほうが美味いと感じ、欧州の人達はあった方が美味いと感じる人が多いようです。爽やかな緑の香りと感じる人と、猫の小便のような匂いと感じる人がいますし、実際どちらに寄っているかは作り手や土地次第でもあります。



マリアージュと言って、食事に合わせるというのもありますが、これは難しいので最初はお店に任せたほうが宜しいかとw
ピノ・ノワールは赤い肉に合いますが、ソース次第では白身の魚だって良いのです。ソーテルヌはデザートワインだけではなくて、フォアグラのパテなんかにも最高のマリアージュだったりします。ピノと醤油は意外に合いますが、カベルネだと最悪に近い気がします。だから、赤は肉で白は魚、なんて事を言ってると痛い目を見る確率が高いです。

未だに誰も信じてくれませんが、お好み焼きとブラン・ド・ノワールのシャンパーニュは合いますよ、これマジで w

お好み焼きとシャンパーニュとか言うと馬鹿にする人もいます。
だからこそ最後にもう一度言いますが、「ワインは、自分の好きなように楽しむものです