このブログも書き続けてきて
かれこれ7年ほどになるだろうか。
それなりに
長くブログは書いてきているが
今まで自分の過去に目を向けたブログは
書いてないに等しく、ほぼない。
今回、ほぼ初めてであろう
自分にある過去のひとつに目を向けて
ブログを書かせて頂こうと思う。
これまで
ブログを読んで頂いてきた読者の皆さん
誠に有り難う御座います。
大したことではないが
また、今回も読んで頂けたら幸いです。
▼見えてる景色は違いながら
僕は三十代の半ば
事故で左眼を失いかける怪我をした。
それなりに大怪我だったが
不幸中の幸い瞳を失うことなく今に至る。
仕事中の一瞬の出来事。
そして、左眼 眼球の怪我。
本当に現実は
自分の心の状態で
一瞬でカタチを変えてゆく。
自分に起きた出来事に悔しい気持ちで
顔を歪めたまま
救急車で
大学病院に運ばれて即手術だった。
病院に到着し
車椅子を押されて移動し
腕に注射を打たれて
ぼんやりする意識の中
気がつけばいつの間にか手術台の上にいた。
当たり前だが眼の怪我なので
手術中に左眼は開けられたままで
ただ煌々と光る幾つもの手術ライトを
ぼんやりと見ていた。
手術中は麻酔をされたが
ぼんやりと自分の意識はあり
左眼の直近で動く
鈍く銀色に光る手術器具を眺めなから
眼球を触られている感覚と
白衣の先生達の手の動きや会話は
今でも何となく覚えている。
切れた眼球の部分を縫って
萎んだ眼を元に戻す手術。
ぼんやりと痛みを堪えながら
開いた左眼に写る光景が
ただ 委ねるままに
ただ 過ぎてゆく時間。
そんな手術だった。
▶︎普通とは何とも基準なき存在
今でも
針で縫った傷は左眼に残っており
眼球の傷跡部分は
透明なビニール袋を指で引っ張っように
波を打っている為
視界が歪んでいて
乱視が酷い状態となった。
牛乳瓶の底から覗き見るほどの
見えにくい景色ではないが
それまで見えていた
多くの人が見える普通とは
同じではなくなってしまった。
真っ直ぐなものが真っ直ぐでなく
ひとつのものはひとつではない。
左眼が見る世界は
歪み滲んでこの世界を見ていて
人と同じ世界に居ながら
人と同じ世界には見えていない。
見えてるものも見え方も違う。
そんな見え方が
僕の普通となった。
生まれながらに歪んで見えていたのなら
一般的な普通の見え方の方を知らないので
歪んだ世界が普通であっただろうが
今までとは変わるということは
今までの自分は通用せず
変化を受け入れなければならない。
日々、生きる人生と同じこと。
今までの普通から変化したことが
普通 常識 当たり前 など
多数なら一般的と
個々の人の中に
それぞれ出来上がったものに
考える頭を与えてくれた。
▼長年の付き合いで得た感覚
元々小さい頃から眼は良い方だったので
見え方は変化したけれども
視力を調整するメガネやコンタクトを
使用したことはない。
人は誰も
光の当たり方や自分がいる場所
時間帯などで
同じ景色も
違う様に映って見てる毎日で
歪んだ眼 と 普通の眼 は
互いに同時に入る違った情報を
頭は勝手に調整して
見ることに不便なく過ごせている。
通常、人間の体は
自ら常にバランスをとっており
人が思う 悪さ や 足りなさ を
自然と補ってくれる。
もちろん 悪さ や 足りなさ が
強まり過ぎると
自然と体の補ってた力は追いつかず弱まる。
例えば、どちらかの足を怪我した時
片方の足が歩くのに必要な筋肉が増して
自然と補って歩けるみたいに
人生の道のりを
自然と前に進もうとしている。
今でも 片眼ずつ見ると
それぞれの見え方は全く違うが
突然の変化を対応し
日々の中で映るものが違う両目は
ただ見るために働き
筋トレのように脳を鍛えてきたのだろう。
長く この眼と付き合ってきて
得た不思議な感覚である。
▼気づいていない未熟者
怪我をした その日
周りのことも顧みず
僕は病室のベッドの上で
「クソっ!なんで眼を失うのが俺なんだっ!」
と大声で叫んでいた。
人間的にも小さく
ただ ただ 焦って仕事をした自分が
悔しかった。
本当に
単なる馬鹿野郎でしかない。
そこから新たに
ただ自分と向き合う日々が始まる。
元通りに戻るかは分からない。
もしかしたら
片眼を失うかもしれない。
今までと同じことが
正解だろうか
今までと違うのは
不正解なのだろうか
今までとはなんなのか
違いとはなんなのか
人のありとあらゆる出来事が
人の数より増して心の状態で生まれ
常に揺れ動きながら
天文学的数字ような答えの世界で
空気のように形がなく
だが確実に人にある
無限でありひとつは
いつも定まって人の世界にあった。
ただ ただ 考える日々。
眼帯で覆ったズキズキと痛む眼と
何ともない普通の眼を閉じて
未熟者は頭を捻っていた。
▼瞳との向き合う時間
人間の眼球は、左右同時に動き
瞳孔も左右同時に動く。
そんなこと言わずとも知れた
多くの人の当たり前のことなので
普段は
わざわざ考える必要もない。
誰もが毎朝起きてから
自分の腕を見て
「よし、腕がある。」なんて確認はしない。
自分に
当たり前な標準装備であり
普段は目を向けることはしないもの。
その、普段 人が考えない当たり前を
考える頭を貰った。
眼帯の下で閉じている左眼は
右眼が動く度、同様に動いて
右眼が光を捉えれば
左眼の瞳孔も自然と閉じる。
手術をした左眼は痛みもあり
出来るだけ動かさずにいたいが
片眼だけ動かさずにいることはできない。
右眼と同時に動く左眼眼球には
強い激痛が走り、あまりの痛さに
指で眼玉を引き抜きたいほどだった。
痛み止めの薬も、然程効かず
痛みが走る度に左眼を手で覆い
顔をしかめながらうずくまる毎日。
それが毎日
眼を閉じて眠るまで続く。
眼球が痛いとはこんなにもなのかと
毎日 歯を食いしばっていた。
そんな状態だったので
右眼も出来るだけ動かさない様にする為
右眼も眼帯で塞ぎ
両眼を見えない状態にして
約一年程を過ごすこととなった。
ほとんど光のない真っ暗な世界。
暗闇だから
動きや明かりに反応して
眼を必要に動かすこともなく
激痛も減り
暗闇は幸いで有り難かった。
見えないとは嫌なもの
暗闇とは怖いもの
そう言った一般論とは違い
痛みの減らしてくれた暗闇は
僕に安息を与えてくれる
良いものでしかなかった。
そして更に
見える日々が見えない日々に変わり
暗闇の日々の中で自分の感覚は
そうしようとするでもなく
勝手によく感じようとしており
普段は
瞳に頼り過ぎて拾えていない
実は 誰にでも感じれるように
そこに存在しているありのままの世界。
鳥の声
子供達の声
看護婦さんの安心感
食べ物の味
日差しの暖かさ
モノの距離
風の流れ
音の方角
心臓の鼓動
内臓の動き
それ以上に現実の上に動く
微細な流れも
小さくも感銘受ける大きさも
時代の流れも
見えなくても
わざわざ意識しなくても
感覚は
様々な数多くを捉えていた。
いつの間にか
見る以外の感覚を勝手に冴え渡らせた。
そして もう一つ。
本当に有り難いと
強く思ったこと。
暗闇の中でも
自分に湧き出るイメージの存在が
自分の中にあること。
見えずとも
頭の中ではイメージが
瞬時に目の前を浮かび上がって教えてくれる。
それらイメージは
自分の中に存在するものなのだと
失うことも奪われることもない
自分のみのもの。
言い換えれば 自分なのだと
見えない自分だからこそ
自分に伝えてくれているようで
生きていくとは生きる糧を
自分の内側に蓄えるようなものだ
と教えてくれた。
見ずとも自分を動かせる
本当に有り難くも
愛しく思えるイメージ達。
手を伸ばす先にある
コップや箸を右手が持つことも
見ずして上手く出来るように
自分にある。
それら自分の中にあるものが
今日を生きる為に
自分を動かす生きる証なのだと分かり
見てないことを
苦痛には感じなかった。
そんな日々を過ごして退院をし
傷も治って眼帯も取れ
若い頃から落書きのように描いていた
ドラゴンボールの悟空の顔を
ふと、両眼を閉じて描いみようと思って
紙にサラサラと描けた時は
見えなかった時間の自分を
「流石やな」と鼻で笑えた。
▼自分の枠で制限された人の感覚
誰の眼や耳にも同じように届いている
見える景色や聴こえる音。
それらの多くは
自分と交わる瞬間に消されて無くなり
もとあるものとは変わってしまう。
いわゆる
それぞれ人の持つ五感の幅。
人の五感も
皆んな同じようには感じておらず
ましてや感じる幅は
自分で無意識に線を引いて狭めている。
いつの間にか
自分の中に勝手に出来上がった
正しさ 固定概念 既成概念
先入観 常識 弱さ
あらゆる様々なステレオタイプの思考が
一人のありとあらゆる考えや思いに
無意識で無条件に線を引き枠をつくる。
自分の中に ここまでだ と。
だが、その線を引いた向こう側では
ありのままに 景色も音も 存在していて
今 感じているものとは全くの別物。
ほんの一部しか捉えられてはいない今は
自分の知らないもっと多くで出来ている。
木漏れ日の光を眼で聞いて
川の流れる音を耳で見て
体全部で拾い集めた
感覚全ては
この世界を感じようと生きている。
見るべきもの
聴くべきおと
気づかずに引いた
線の向こうに存在するそれらは
別世界なのだ。
当たり前な毎日の中に
もっともっと使ってない自分が
誰でも皆んな存在している。
今の自分と世界を越えて
今の自分と世界を感じれる。
自分の経験の一コマ。
些細なことだが
何処かの誰かの役に立てば有り難い。
起きた不幸は
そのまま幸せであって
また逆もしかり
なのだ。
まだまだ
書きたいことは山ほどあるが
長くなったのでまたいつか改めます。
この眼と共に
まだまだ見てる景色の向こうにある
沢山の風景を見ながら
進む日々の方向へ流れて行こうと思う。
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