重そうなカバン。

「重そうなカバンですね。手伝いましょうか？」

「大丈夫です。中身は空っぽなので。」

「えっ」

「見てみます？」

「本当だ。空っぽだ。なのになんでそんなに重そうなんですか？」

「あえて詰め込んだんです。色んなモノを。私が抱えなきゃダメなんです。私にしか抱えられないんです。」

「そうなんですか。空っぽだから捨てるにも捨てれませんね。」

「大丈夫です。無いのも解ってます。ただあえてそうしたいんです。」

「私ならその形無いモノを形に出来ると思います。」

「えっ。そうなんですか？」

「はい。見えたら少しは軽くなるかも知れません。あえてそうしなくても良いかも知れません。」

「確かに。」

「一度やってみませんか？」

「ご親切に。でもここまで来ました。も少しこのカバンを抱えて行きます。」

「そうですか。その空っぽの重いカバンは何時から持ってるんですか？」

「気がついたら持ってました。何故なのかも、どうして持ったのかも解りません。ただあえてそうしてるのだけは解ります。」

「もう一度聞かせて下さい。手を貸しましょうか？」

「ご親切に。ありがとうございます。でも大丈夫。ところであなたは何方様ですか？」

「私ですか。私はあなたです。」

「えっ」

「その空っぽの重いカバンを持たせたのも私」

「えっ」

「私が持たせたんです。」

「あなたは私なのですか。何故この空っぽの重いカバンを私に持たせたのですか？」

「それは私には必要無いから。だから私はあなたに持たせた。」

「えっ。でもあなたは私でしょ。」

「はい。私はあなたを傷つけた。だからあえて課せたんです。自分への罪として。」

「そんな。私はあなたのせいで空っぽの重いカバンを持たなくてはいけなかった。そうやっていつの間にかココまで来ました。有る様で無いゴールを目指して。」

「ごめんなさいは言いません。でも今ならその空っぽ重いカバンを捨てれます。だってあなたは私だから。私はあなただから。そっとてを離してください。」

「良いんですか。」

「はい。」

「ここまで来たのに良いんですか。」

「はい。」

「あれ。」

「どうしました。」

「カバンなんて元々無かった。カバンは存在しなかった。今なら解る。空っぽは空っぽじゃ無かった事が。カバンなんて無かった事が。過去の今日が今日という事ではなかった事が。」

「全ては私。私次第。」

「そうです。カバンは荷物を運ぶ便利な物でなく。カバンが荷物なのです。」

「全ては私。全てが私なのですね。」

katsu

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katsu

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