スペインの300年の歴史を持つ教会で、天使像の修復が大失敗に終わり、文化遺産保護団体が「修復とは言えない」と激怒し、悲惨な天使像の写真をXに投稿。解決策が見つかるまで教会が閉鎖された。
もともと繊細に作られた天使像は、全身が粗雑に白く塗り直され、真っ赤な唇と太い眉毛、シンプルな顔立ちとなった。近くに飾られている、修復されていない像と比較すると、修復の悲惨さが際立つ。
文化遺産保護団体「ソリア・パトリモニオ」は修復に激怒し、Xに「何をしたんだ?」「修復とは言えない」と画像を投稿した。
スペインの教会修復と言えば、否応無く思い起こされるのが、2012年北東部の都市ボルハでキリストフレスコ画の修復が行われたが大失敗し、「サルのキリスト」と称されたのが鮮烈だったが、今回の天使像も中々に味のある修復だと認めざるを得ない。
修復前は教会全体が白一色で統一され、繊細な天使像が見受けられたが、修復後は何故だか教会の柱がオレンジ色に塗られ、御丁寧に天使像にも雑に色付けされている。
パッと見で山崎方正に見える雑さだが、何処かで見覚えのある造形に思いを巡らせると、私自身が幼少期に作っていた粘土細工である。
幼少期より絵や造形が好きで、図画工作展にも出展していた私だったが、今にして思えば修復工事の推進者であるオスマ・ソリア司教区が失敗を認めざるを得ないレベルの図画工作展であった。
何れにせよ、スペインに於ける歴史的資産の修復は何故この様な顛末になってしまうのか?
先述の通り、2012年スペイン北東部の都市ボルハでキリストフレスコ画の修復が行われたが大失敗し、「サルのキリスト」が爆誕した。
2018年スペイン北部ナバラ州の教会では16世紀の木彫りの聖ジョージ像が、ブリキのおもちゃかに造り変えられてしまった。
2020年スペイン北西部の都市パレンシアにある銀行のファサードを飾っていた優雅な女性像は、どう見てもハニワになってしまった。
意図的に笑わせようとしているとしか思えない、余りにトホホな顛末ではあるが、仮に日本の国宝であり我が愛する京都「三十三間堂」に於ける千手観音が、山崎方正に造り変えられていたらと思うとゾッとする。
調べてみるとスペインの保全・修復の専門家の多くは廃業しており、修復技術自体が失われていると言う。
また同時に専門家以外が芸術作品を修復する事を禁止する法律は無く、是等残念な修復は素人の善意によって成されているとの事だ。
イエス・キリストの肖像画をまるでサルのように「修復」して世界中から失笑を買ったセシリア・ヒメネスさん(82)も騒動当時、「何とか修復したいと言う一心で手掛けたが、私には無理だった」と言う発言をしている。
上記の通り、余りに酷い修復後の画像は世界中に広まり、嘲笑や非難の対象となった。
しかしその後、「サルのキリスト」を一目見ようと、修復後1年間で5万7000人もの観光客が同教会を訪れ、人気観光地として盛況。
またワインボトルのラベルからマグカップ、Tシャツまで、ありとあらゆるマーチャンダイズが未だ飛ぶように売れていると言う。
修復を手掛けたヒメネスさんの個展も大盛況で、莫大な収益を上げている。
確かに素人の修復家によって修復不可能なダメージを受けたスペインの文化遺産だが、経済的には大いに貢献している訳で、何とも難しい評価ではある。
山崎方正化した天使像に対して、スペインの保存修復協会会長フランシスコ・マヌエル・エスペホ氏は「あの目と描かれた唇は本当にひどい。修復の失敗だけではなく、私たちの遺産に対する攻撃なのです」と語り、修復工事の推進者であるオスマ・ソリア司教区は失敗を認め、問題が解決するまで教会を閉鎖すると発表した。
修復問題を真剣に捉え、厳しい対応をする程に、実にフリの効いた笑いとなる訳で、一層山崎方正化した天使像が輝き、一目見て笑おうと観光客が殺到する。
ハハーンこれ、スペインが国を挙げてヤッてるな…?
かとぅ