「I've had one desire since I was born; to see my body ripped and torn(生まれたときから願いはひとつ この身体が引きちぎられるのが見たいと)」
デスメタルバンド「ブラッドバス」(Bloodbath=大流血、虐殺)の「Eaten(直訳:食べられた)」の歌詞は、カニバリズム(食人)をテーマにしているが、「Eaten」を聴いても、他のデスメタルの気味の悪い歌詞を聴いても、聴き手はそのせいで暴力的になったりにしないとの研究報告が、豪マカーリー大学の音楽研究所より発表された。
王立協会の学術誌「オープン・サイエンス」で発表されたこの研究では、デスメタルのファンだからといって暴力的表現に「鈍感になる」ことはないという。
シドニーにある同大学のビル・トンプソン教授は、「デスメタルのファンは良い人たちで、わざわざ出かけていって人を傷つけたりしない」と話した。
自分が初めてヘビーメタルと言う言葉を知ったのは、名古屋テレビ制作のテレビアニメ「重戦機エルガイム」であった。
原作、総監督はガンダムシリーズの富野由悠季だが、ガンダムの様な政治や閉塞した人間関係と言った重苦しさは薄く、単純にカッコいいロボットの戦闘アニメとして描かれていた。
ガンダムではロボットを「モビルスーツ」と呼び、戦闘メカ・ザブングルでは「ウォーカーマシン」、そして、エルガイムでは「ヘビーメタル」と呼ぶ。
当時9歳ではあったが、未だにその響きを覚えており、ボウズ頭&半ズボンの私は、「ウヒョー、ヘビーメタル!ムキョー!」と、その格好良さに悶絶していた。
そして何より、初めて購入したレコードが、MIOのハスキーなハイトーンシャウトが天空を突く主題歌「重戦機エルガイム」であり、コレはもう、誰が何と言おうが、音楽的に「ヘビーメタル」であった。
当時洋楽など聴いた事も無かった私は、「Show me the way to you(Heavy metal).Lead me now where you are(Heavy metal)」と、いきなり英語で突き付けられた訳で、稲妻に打たれたかの正にヘビーメタルとの邂逅であった。
同じくMIOの歌う「ダンバインとぶ」、串田アキラの歌う「疾風ザブングル」も合わせて、超弩級ロボットアニメタルであると、此処に宣言させて頂きたい。
さて、エルガイムでヘビーメタルと遭遇した若かりしかとぅではあったが、そこから一気にメタル化が進んだ。
時はバンドブーム。
聖飢魔Ⅱ、X、そして、私にとって筋肉少女帯の衝撃は、30年経った今もソレを臆面も無く目指し、未だバンド活動している事からも御理解頂ける事であろう。
中学生になると、いきなりMETALLICA、MEGADETH、SLAYERとスラッシュメタルに突撃し、高校生になると完全にデスメタル、グラインドコアを爆音で聴き込み、家族を心配させたが、それから30年経った今以って、変わらずデスメタル、グラインドコアを愛聴しており、家族を心配させている。
そして遂に、私は人工股関節置換手術により大腿骨にコバルト合金をブチ込まれた、名実共に筋金入りのメタル野郎となり、今や晴れて身体障害者3級である私ではあるが、コレが空港の金属探知機でピーピー鳴りまくり、左足に探知機を当てた係員が怪訝な表情を見せる中、必死で「Metal insert me!」と訴える私に、苦笑いの係員だ。
日常生活では全く支障は無いし、車いすや義手を利用する様な障害と比較は出来ないのだが、私が100mを0.2秒で走ったとしても、オリンピックには参加出来ず、パラリンピック選手となってしまう程度ではある。
人類を超えた速さを手に入れる為に、大腿骨にコバルト合金をブチ込んだ事で、オリンピックに出場出来ないとは何とも皮肉な事ではある。
さて、戯言はこの程度として、ある人に言わせると「ヘビーメタルは生き方」との事で、「自分を貫くスタイル」とか、「反骨精神」とか言うが、私は音楽としてのヘビーメタルが好きだから聞いているだけである。
残念ながら私には、自分を貫くスタイルも無ければ、反骨精神も無い。
ただ、メタルを愛する気持ちと、デスボイスはソコソコのモノと自負するモノである。
そして30年に渡り、デスメタルに呪われ、自身もお笑いデスメタルバンドを率いながらも、女性を襲ったり、カニバリズムに傾倒したり、暴力的になったりと言った犯罪行為に手は染めてはいない。
何故なら、「デスメタルの気味の悪い歌詞」といった所で、英語が分からない日本人のみならず、英語圏のデスメタルファンであっても、「ズモモモモモモモ…」と未知の生物の唸り声だったり(グロウル・ヴォイス)、「グゴゴゴゴゴゴゴゴ…」と石臼でそば殻を轢いていたり(ガテラル・ヴォイス)、「ゴボゴボゴボゴボ…グボゴボゴボゴ」と下水道を流れる水の音だったり(下水道ヴォイス)、「フォシュー!フフフォフフフォシュー!」と吸い込まれていたり(掃除機ヴォイス)、「ジー!ジー!ジジッ!ジー!ジジッ!」とセミが鳴いていたり(ハーシュ・ヴォイス)、「ヴィヴィヴィッ!ヴィーヴィー!ヴィヴィヴィヴィッ!」とブタが鳴いていたり(ピッグスクイール)、「ピチャッ!クチュッ!ペロペロペロペロ!」とアソコを舐めていたり(ペッティング・ヴォイス)、こんなモノ、どう考えても”トンでもない馬鹿”であり、健全なる当ブログ読者諸氏に至っては、衝撃的な笑撃を受ける事だろう。
仮に歌詞には「I've had one desire since I was born; to see my body ripped and torn(生まれたときから願いはひとつ この身体が引きちぎられるのが見たいと)」と書かれていたとしても、実際に聞こえるのは「ズモモモモモモモ…グゴゴゴゴゴゴゴゴ…ゴボゴボゴボゴボ…グボゴボゴボゴフォシュー!フフフォフフフォシュー!ジー!ジー!ジジッ!ジー!ジジッ!ヴィヴィヴィッ!ヴィーヴィー!ヴィヴィヴィヴィッ!ピチャッ!クチュッ!ペロペロペロペロ!」な訳で、爆笑するのは分からんでも無いが、こんなモノで暴力的になる筈も無い。
ブラッドバスのリードボーカルを務めるニック・ホームズはBBCニュースの取材に対し、「問題とは思っていない。研究が示すように、歌詞は無害な遊びだ」と語った。
そして、「Eaten」の歌詞については「個人的な思いとして書いていない。もしEatenを聞いて人食いに食べてもらいたいと願う人がいたら、正直驚くと思う」と付け加えたと言う。
真面目か?
無害か有害かは分からないが、ともかく笑える。
思い切り笑いたい方、どうしようも無く寂しい方、そして、日常のストレスに苛まれる全ての現代人に、須らくデスメタルはオススメだ。
かとぅ