嘘をついても良い日だそうな。
確か、午前中の嘘だけが許されるんでしたっけ?
昔、とんでもない嘘をついてしまい、慎悟さんを振り回してしまったことが懐かしい。
『役者、辞めます』
この一言に対して慎悟さんは驚き、必死で止めてくれました。
毎晩、私の家に来ては役者の素晴らしさを語ってくれたものです。
『有名な俳優になったらどんな遊園地も顔パスだぞ!』
とか、
『売れっ子俳優になったら猫がたくさん飼えるぞ!』
とかとか。
あまりにも慎悟さんが熱弁するので、今さら『嘘でした~、てへッ♪』なんて言えず、私はそのまま『もう少し役者を続けてみます』と告げたのでした。
すると慎悟さんは私に"役者を辞めずに踏みとどまった記念"と称して素敵なプレゼントをくれました。
それは…
手作りの煮豆。
意味がわかりませんでしたが、とりあえず煮豆を食べました。
そして驚愕の味を体験しました。
なんと表現すればいいのか悩みますが、敢えて例えるならば一週間ほど醤油に漬けたマンゴーのような味がしました。
おかげで三日間ほど味覚が麻痺し、本気で病院に行こうかどうか悩んだほどです。
その時、もしかして慎悟さんなら殺傷能力のある料理をいとも簡単に作れるのではないか、そう考えました。
そして後日、私は検証してみたのです。
私『慎悟さん、この前の煮豆が美味しかったので、さらに美味しい煮豆を作ってください』
慎『よし、任せろ!』
そうして出来上がった煮豆を慎悟さん自身に食べて貰いました。
すると…
慎『これ、ヤバい、めっちゃ美味しい!』
と自信満々な表情を浮かべるじゃありませんか。
それを信じて私も食べました。
…
………。
信じた私が馬鹿でした。
そこからは食事もろくに喉を通らず、なかなかに苦しい日々を送ることになりました。
今となっては笑い話ですが、あの時あんな嘘さえ付かなければこの煮豆事件は起きなかったんです。
ということは、以下の方程式が成り立つというわけです。
【嘘=煮豆】
皆さま、安易に嘘を付くと地獄が待っておりますのでご注意くださいね!
それでは、良い四月を!