シモン・トルプチェスキのピアノリサイタル | WITH HOPE!!

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在英14年目、イギリスの生活を愛し、楽しんでいるMiyukiです。
イギリスで細々と演奏活動をしているので、クラシック音楽の話題、日常、イギリスの姿をお伝えしたいと思います。
バレエが好きで、ロイヤルバレエの公演を主に観ているので、その感想も。

 朝、青空だったのに、昼頃から、グレーの空になってしまったロンドンです。


 久々に、カーディフ時代からの友達とあって、おしゃべりをし、その後は、久々に、ウィグモア・ホールへ。

 このところ、バレエばかりだったので、いつ以来?と思うほど久々に、ピアノのリサイタルを聴いてきました。


 コンサートへ行くと、大抵は誰か知っている人に会うのですが、今日はいないな、と思っていたら、終演後、私の3列前に座っていて立った方は、ずっとサマーコースでお世話になっていて、プライヴェートでレッスンに行きたいな、と思っている、ルース先生。 もう87歳くらいだと思うのですが、お元気でした。 彼女も私に気がついてくださり、挨拶をしただけですが、こうして、お会いできると嬉しいものです。 

 先週は、コリセウムで、Dr.Sと共にコースを運営していらっしゃる私もよく知る方にお会いしたところ。

 こうなると、サマーコースに今年は行きたいな、と思ってしまいますが、考え中。


 さて、今日聴いたのは、シモン・トルプチェスキ(Simon Trpceski) http://www.trpceski.com/simon/  という私と同じ年の、マケドニア生まれのピアニスト。

 2001年頃、確かロンドン国際か何かで賞をとり、2003年だったかにBBCのYoung generationに選ばれたこともあり、イギリスでは演奏回数が多いピアニストです。

 私は10年くらい前、プロコフィエフのソナタ第6番を勉強し始めた時、ボスニア人の同門の友達から、このピアニストがリリースしたCDにこの曲が入っているから、聴いてみたら?といわれたのが、出会ったきっかけ。

 初めて生演奏に接したのは、2009年の夏。 

 2年半ぶりに彼の演奏を聴きました。


 聴きながら、同時に自分だったらどうするだろう? 次はこういう和声感覚、音色が来るかな?と思うと違ったり、そうだったり。 左で聴きながら、右の耳で多分自分の音楽をつくっているので、ピアノのリサイタルを聴く、というのは非常に疲れます。 これが、あまりリサイタルに足を運ばなくなってしまった理由の一つかもしれません。



 プログラムは


 シューベルト: 16のドイツ舞曲 D.783

  シューベルト: さすらい人幻想曲 ハ長調


 バッハ/リスト: プレリュードとフーガ イ短調 BWV543

 リスト: ペトラルカのソネット 104番

 リスト: エステ荘の噴水

 リスト: ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調


 アンコール:

 シューベルト/リスト: 歌曲(題名が思い出せないのですが、ラシ♭ラレーラの有名な曲)

 ショパン: 24のプレリュードより、ニ短調


 

 決して派手く、マツーエフ、ヴォロドス、などとは対極にあるピアニストです。

 レイフ・オーヴェ・アンスネス系、というと分かりやすいかもしれません。


 今日のコンサートは、ウィグモア・ホール・ライブとして、録音されていました。


 私は凄く、好きなピアニストなのですが、今日は曲によって、ばらつきが。

 音はあまり良いピアニストではありません。 でも、私は音楽性が好きなのです。

 

 テクニック的には難しいものは何も無いのですが、どう調理するかが非常に難しい、シューベルトのドイツ舞曲。 私も、昔先生から言われてやりそうになったことがあるのですが、やる前から挫折しました。

 音色、アーティキュレイションで音楽をつくっていきます。

 今日のシモンの演奏は、これが非常に明確で、ここまでできるのか!というような演奏。 

 彼は、もちろんテクニックがあるピアニストですが、こういう曲で力が発揮されます。


 が、次の楽しみにしていた、さすらい人、どうしたの?という演奏。

 まず、音楽が届いてこない。 私は今日は一番最後の列に座っていたからかしら?と思ったのですが、後半が始まると、決してそれが理由ではないことがわかりました。

 第1楽章(といってよいわけではないのですが)は、比較的ゆっくりのテンポで入りました。

 非常にあせった演奏。 ドイツ舞曲で聴かせてくれたような、音色の変化、フレージングの豊かさはありませんでした。 あのテクニック、音の粒がそろったのは見事です(私の苦手な部分・・・)。 が、必死な演奏でした。

 

 この曲は、9年位前に、第1楽章と第2楽章の途中までやったので(途中で、挫折)、いつかは仕上げたいな、と久々にこの曲を聴きながら思いました。


 

 後半は、がらりと変わった演奏でした。

 音が届いたのです。

 バッハ/リストのプレリュードとフーガは、特にプレリュードが、まさしくオルガンのような演奏。

 精密さ、音色の変化、物語が生まれ、思わず身を乗り出してしまいました。

 

 ペトラルカは、私はもう少し歌った演奏が好みです。

 プロジェクションがそれほどなく、抑えた演奏でした。


 続く、エステ荘の噴水は、きらきらと水が輝く噴水、というよりも、いってみてば、ターナーの絵の中の水のような噴水。

 ですが、コントロールの素晴らしさ、音の粒が何しろきれい。

 私の考えとは違うけれど、説得力のある演奏。

 思わず、息をのみ、耳に焼き付ける部分が多々ありました。

 この曲は私のタイプではないけれど、憧れていて、たまに楽譜を眺めている曲。

 聴きながら、これを勉強して、ぜひ、ルース先生のレッスンを受けたいな、と思っていたので、終演後、まさか彼女が3列前に座っていらしたことに驚きました。

 今日の演奏を聴くと、勉強したくなってしまいました。


 そして、有名なハンガリー狂詩曲第2番。

 前半は、自由で、面白みがある演奏。 後半は、ただ弾いているだけになってしまいました。

 とはいいつつも、オクターブの連続などは、見事。 最後の音をはずしたのはご愛嬌。


 

 と色々と書きましたが、やはり、同じ年のピアニスト、私が手ほどきをしていただいていた頃には、彼はもうピアニストとして、活躍していた。 やっぱり、遅く始めると、どうにもならない壁があるのだな、といまさらながらに思いました。

 

 

 久々に、刺激を受けました。 私も久々のコンサートに向けて、あと2週間、頑張らなくてはいけません。