第四章「大人にできること」
標準家庭・標準家族―その(1)
マンションや戸建ての家を売る場合、あるいは電気代などの公共料金を算出する場合、その標準となる家族構成を想定する。その想定に使われるのが、「夫婦と子供二人」という仮定上の基準である。かつては「両親と子供4人で計6人が標準」という時代もあったそうだ。家庭科の教科書でも、男親と女親がいて子供がいる、それが家庭というものだ、と書いている。今はまだ「夫婦と子供2人で計4人」が平均的に「標準」と言える時代ではあるが、さてこれから先それらが揺らいできている。核家族とか少子化とか言われた時代を超えて、新たな時代を迎えようとしているのではないか。
1975年、「夫婦と子供」で暮らす世帯は、日本全体の家族構成の40%を占めていたが、現在では30%代に減少し、夫婦だけの世帯が10%代から20%代に増加している。さらに、単身世帯も、20%から25%へと増えた。(直近の国勢調査では「1人暮らし」が31%に達し、「標準家族」と言われた「夫婦と子供」の世帯は、ついに29%となっている)「家族は核家族から個人化へと変化している」と精神科医師の斎藤学氏は言う。(2011.4.2朝日新聞)さらには、母子家庭・父子家庭の増加もあるだろう。
隣近所にも、教員仲間にも、中高年の独身者がいる。身近には50歳で初婚の女性もいたが、これは極めて稀な例である。男女を問わず、このまま一生結婚しないだろうと思われる人が増えているのは確かなことだ。2030年には、男性の3人に1人、女性の4人に1人が単身生活になる、という予想値もある。すでに厚生労働省の調査では、1969年生まれの40歳女性のうち、27パーセントが「子どもを生んだことがない」というデータが出ている。にわかに信じていいのかどうか戸惑うところではあるけれど、少子化はいっそう進むばかりだ、ということになろう。
その上、長引く不況の影響もあって、雇用が安定しない。格差社会とも言われる。「産みたくても産めない」どころか「結婚したくても経済的に不安定だから結婚できない」という層も増えている。
30代後半になる知人のフリーライターは、夫婦ふたりだけの生活が長く、子どもはいない。「今の世の中で、子どもを育てていく自信がないからだ。」と言う。経済的な問題や健康の問題ではないそうだ。「現在の日本に、子育ての環境が整っているだろうか?子どもが幸せになれるだろうか?」という疑問が消えないらしい。なるほどと思いつつ、少子化はますます進み、家族というものが「核家族化から個人化」へ変化していくのかもしれない。「標準家族」が標準でなくなりつつあるわけだ。

