第二章「親の態度で子どもも変わる」 | 元校長先生のブログ

第二章「親の態度で子どもも変わる」

子どもと友だちになりたがる親―文化が伝わらない(2)

 

親は親、子は子である。親は子どもの衣食住を保証するばかりでなく、子どもが将来世の中を生きていくための、知恵や文化を伝えていかなければならない。倫理観も養わなければならない。だが、親が「友だち化」して、その機能が薄らいでいる。




元校長先生のブログ-子どもと友だちになりたがる親(2)



「ぼくは息子と友だちになりたいんですよ。」と言った父親の、その息子は「正月の三が日は、勉強どうするの?」という私の質問に、「三が日って、なんですか?」と応答する。中学3年生である。


その子の学校の先生は、「彼は学力が低いものですから、分かってやってください。」とフォローしてくれる。しかしこの種の問題は、学力では語れない。生活の問題であり、文化の問題である。


たとえば、お箸の正しい持ち方ができている子は、もはや半数に満たないと小学校の先生が嘆く。まさか、ここまで教員が教える義務はあるまい。家庭という「生活」の中で、日本人としての「文化」を伝えていくのが、親の役目だ。


1992年から小学校1~2年生に「生活科」が導入された。従来の理科や社会科の時間を削っての創設である。賛否両論届いたが、本来家庭で親が教えるべき「生活や文化の習得」が充分になされていないため、この教科ができたのではないかと疑っている。


たとえば私は、部活動の大会や練習試合に生徒を引率することがあったが、中学1年で切符の買い方を知らず、券売機の前でウロウロしている生徒に出会っている。聞けば、どこかへ出かける時はいつも、お父さんかお母さんの運転する車に乗せてもらっていたと言う。SUICAやPASMOの無い時代の話である。ちなみに今、小学校2年生を駅まで先生が連れて行って、「切符の買い方」を「生活科の時間」で学習させているそうだ。親子の「友だち化現象」の中で、家庭の役割を学校に担わせる傾向も増した、と言える。


「食育」もその例のひとつだろう。2005年制定の「食育基本法」に基づくこの教育に対して、「お上が家庭のことにまで口出しするのか!」とネット上で否定的見解と反発を示した人たちがいる。


なんとも平和な「反権力」である。そのような意見の持ち主は、「子どもの好きなものを食べさせるのが親の役割だ。」と信じて、毎日ハンバーグを食べさせ続けて子どもにおもねる母親がいる、というその現実を見ようとしない。「栄養があるから」と言って、毎日玉子かけご飯ばかりを食べさせ続けている家庭の存在があることを知らないのである。当然、子どもはコレステロール過多となり、肥満となる。


また一方では、肥満でもなんでもない普通の体型の女の子が、小学生のうちから「ダイエットしている」と言うことがある。保健室の養護教諭がいくら諭しても聞き入れない。男の子に「モテたい」のだそうだ。小学生の言動とは思えない。「スリムこそ美」という宣伝惹句に踊らされるマスメディアからと、親からの影響が、そこにはある。母親が小学生の娘を連れて渋谷に買い物に行く。目的は娘の「化粧品」を買うためだそうだ。小学生に化粧品? 親の美意識の押し付けなのだが、これも友達感覚なのである。


 

親と子は、友だちではない。人間の命として親と子は平等ではあるが、決して対等ではない。大人は、人間が培ってきた生活の知恵や文化や、これから生きていくためのさまざまなことがらを、子どもに伝えていかなければならないのである。生きるための基本としての食生活をはじめ、このまま親にだけ任せていたのでは子どもの将来が危うい、というところまで現実は進んでいるように思われてならない。それを促進しているのが、親と子の「友だち化」現象であろう。


 

『週刊少年マガジン』の副編集長・朴鐘顕氏が、漫画の主人公の描かれ方の変化について興味深いことを述べている。


「20年前、漫画の中のお父さんお母さんは、主人公にとって『立ちはだかる壁』だった。子どもの世界を理解できない存在の象徴として夢や希望進路の傷害となり、主人公が超えるべき壁として作品内でも重要な役割を担っていた。この時代は、大人が子どものことを分からないことが当たり前だった。


10年前、漫画の中のお母さんは『傍観者』となってきた。主人公の夢や進む道が理解できず不安がり、話が進んだ後に追認する存在として登場した。『家族の友達化』が進み、大人にとって子どもは『分からないと不安な存在』となった。(中略)


『親VS子ども』という構図が縮退するに連れて漫画の中での役割も小さくなり、(両親の)登場回数が減ってきている。」(朝日新聞教育欄)

と言うのである。「漫画に描かれる家族像は、時代の世相を反映している」として調べた結果だそうだ。「う~む、なるほど」と納得させられる。現実が先か漫画が先か。昔に戻れとは言わないが、親子の「友だち化現象」はなんとかしたいものである。


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