第二章「親の態度で子どもも変わる」 | 元校長先生のブログ

第二章「親の態度で子どもも変わる」

卒業後の進路は誰が決めるのかーその(1)

 中学校には、3年生になると高校や専門学校の受験先を決めるための「三者面談」がある。高校等の学費を払うのは親だから、生徒一人で進学先を決めるわけにはいかない。生徒・保護者・教師の3人で何度か話し合う。

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 保護者側の大方は、母親が学校に出向いてくれる。こんなときこそ父親の出番だとは思うのだが、まだまだ日本は「男は仕事・女は家事」という意識は強いし、父親が休暇をとって学校に出向くという文化は育っていないので、父親が三者面談に同席するケースは極めて少ない。

 外国には、出勤前に父親が学校に出向いて、他の子どもの勉強を手伝う「学校ボランティア」の活動が定番化されているという国がある。この国では、たとえば夫は週4日勤務、妻は週3日勤務など、家庭によって勤務形態を選べるそうだ。所得を優先させるか家族や子どもとの触れ合いの時間を優先させるか、それぞれの個人や家庭が選択できる仕組みになっている。

 このことは、家庭や子育てに対する文化的土壌の違いと共に、政府や企業の「労働の在り方」の考え方の違いが根底にあることを示している。だから、日本からそれを眺めたときに、決して真似のできることではないし、個人の力ではいかんともし難い、制度上の大きな問題が横たわる。現在の日本で父親が三者面談に出向いてくれるには、仕事上での恵まれた条件やよほどの自覚的意志がないと、なかなか実現しにくい。

 
 父母ともに揃って面談にやって来てくれた家庭がある。父親は、役所勤めの休暇を取ってくれたようだ。母親は、いわゆる専業主婦である。

「どこの高校を受験したいと考えてますか?」誰にでも聞く質問である。

「大学付属のA高校です。」と答えが返ってくる。ただし、それは生徒本人からのものでなく、父親からの答えだった。幼児や小学生にも、こういう例はある。子どもに質問しているのに、親が答えてしまうのだ。そういう場合、間違いなくその子の成長は阻害される。親が自ら子の成長を止めてしまうというわけである。

 さて三者面談(四者面談)はどうなったか。担任の私から見れば、その時点でのその生徒の成績では、父親の希望する私立A高校には、とてもとても合格できない。中学校の学級担任は、卒業後の行き場所のない生徒を作り出したくないために、いわゆる安全策をとりがちなのは確かだ。しかしこの場合、現実の成績到達点と希望の高校の合格ラインとでは、あまりの開きがあり過ぎた。それは、生徒本人もよく知っているはずだった。ところが父親はどうしてもその高校にこだわる。

「A高校の関係者に知っている人がいるので、その人にお願いすれば大丈夫です。」父親が突然言い出した。しかも子どものいる前で、である。裏口入学を自ら認め、子どもにそうしろと言っているのだ。

 「君も、そこを受けたいと思ってるの?」仕方なく私は、本人に確認する。「はい・・」と彼は答える。結局この面談で生徒本人が発言したのは、この一言だけだった。母親は、ついに何も発することなく帰っていったが、その母親は後に「先生から、勝手にしろと言われてしまった!」と、周辺にこぼして回ったと聞いている。

 近所の人の話によると、この母親は子どもが幼稚園のころ、衣服の着脱など何でもかんでも手を出してしまうタイプだったという。小学校のころには、学校に持っていく物を親が揃えて忘れ物を防いでいたそうだ。高学年になるまでそれが続いていたため、周辺の人たちは心配していたと言うのである。なるほど、と私は思ったものである。

 
 一方、その三者面談(四者面談)の直後に、別の生徒との三者面談があり、これもたいへん珍しく、今度は父親のみの出席という形になった。父子家庭というわけではない。事務員を何人か雇っているいわゆる自営業と言える立場の親なので、学校に出向くための時間調整はつけやすい。

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