昨日の記事で、

中世日本における

武士団の価値観は、

「忠義」に基づくのではなく、

それぞれが独立領主として

領域、家臣団を束ね、

その上で力の強いものを

連合体の長として担ぐ、

という組織体系だったと書きました。

 

それは江戸時代の藩も

体系としては同様で、

「徳川幕府」とは言うものの、

徳川宗家が治めていたのは

約2200万石ある全国のうち

約200万石程度。

 

幕末の動乱でも分かるように、

日本国中が敵に回れば

日本全国の11分の1程度の

支配しか出来ていない将軍では

成す術がありません。

 

その後の日本は

国家・国民意識が強くなり、

今に至りますが、

だからこそ現在の

世界の紛争・内戦を巡る

報道を耳にした時、

感覚のズレが生じます。

 

 

主に中東地域において、

テロ組織や

反政府武装勢力などとはまた異なり、

部族・軍閥という存在があります。

 

テロ組織などは戦う事のみを目的に

集まった集団であり、

江戸時代的に言えば、

野盗集団であり、

火付け盗賊改め方の長谷川平蔵に

成敗してもらう対象です。

 

一方で、

部族・軍閥などは

その地域を安定的に支配する勢力で、

普段は政府の方針に従い、

国家の一部を形成していますので、

江戸時代的に言えば藩にあたります。

 

例えば、独立前は600程の「藩王」が

各地を支配していたインド。

統一国家内における地方勢力が

日本の藩に似ているのは

単語からも分かりやすいと思います。

 

この「藩王」、

より今日的な単語を使えば

「マハラジャ」などとなります。

 

 

また、UAEが「アラブ首長国連邦」

と呼ばれるように、

中東地域では

部族や軍閥の影響が強く、

そのリーダーである首長や部族長が

連合国家を作ったり、

一部は国王として

国を治めていたりしますが、

国内各地の多くの部族勢力が

緩やかな連合体として

平時には国に従っています。

 

しかし、時に政府の方向性に

納得が出来ない場合や、

外国勢力からの

誘惑などがあったりした場合、

緩やかな連合体なだけに

簡単に国家に反旗を翻します。

 

それが中東や中央アジアにおける

混乱を根深いものにしているのですが、

国民国家体制が定着した

先進諸国においては、

国家は1つであり、

国家に反するものは反政府勢力、

と短絡的に考えてしまう傾向があり、

安全保障議論をする際にも、

知識の前提条件に

ズレが生じてしまったりします。