日本史の話題でも、

世界の安全保障に関する話題でも、

前提に対する認識の差から、

話にズレが生じる事があります。

 

それは武士団=軍事組織における

組織体系について。

 

 

江戸時代、

武士には所属する藩や

旗本であれば幕府に対する

忠義が求められました。

 

朱子学の影響で、

人が上下に分けられ、

下の者は上の者に

無条件・滅私奉公で仕える事が

正しい事とされました。

 

その影響は今にも残り、

日本史を考察する上での障害となるのは、

朱子学が体系付けられる以前の日本でも、

「忠義」という視点で

大名と家臣の関係を見てしまう事です。

 

戦国時代の武士団は、

江戸時代のような

「サラリーマン武士」ではなく、

「ヤクザ」に近い組織体系です。

 

よく「〇〇組」や「〇〇会」という

名称が出てきますが、

「〇〇組」傘下の

「△△組」があり、

その傘下の「××組」がある、

というような組織体系になっており、

それぞれに組長が居て、

組の構成員が居ます。

 

つまり、

「〇〇組」の一括統治ではなく、

独立勢力の集合体であるのが実情です。

 

 

それは中世のヤクザ組織、

武士集団も同様です。

 

 

江戸時代、

「徳川幕府」が直接支配出来るのは、

徳川宗家の直轄地のみであり、

一族の土地であっても

尾張藩、紀伊藩、水戸藩の

領地にも藩士にも

将軍の威光は直接的には及びません。

 

ましてや長州藩、薩摩藩など

外様大名の藩士ともなれば、

徳川家には何の恩もありません。

 

だからこそ

幕末期の動乱に繋がるのですが、

戦国時代ともなれば、

それ以上に大名家と家臣団の関係は

緩やかな連合体となります。

 

 

例えば、

「長篠の戦」と言えば、

信長が3000丁と言われる

鉄砲を組織的に用いた、

武田勝頼VS織田・徳川連合の

戦いで有名です。

 

その発端となるのは、

武田家が徳川家の

長篠城を攻めた事から始まります。

 

こう書くと、長篠城は

徳川家の城のように思えますが、

長篠城は「奥平家」の城であり、

付近は奥平家の領地です。

 

奥平家は江戸時代には

10万石の大名となりますが、

戦国時代初期は今川家の家臣であり、

徳川家と今川家が対立すると

徳川家に付きます。

 

しかし、徳川家康が

武田信玄に大敗を喫する

三方ヶ原の戦いの頃は、

武田家の家臣でした。

 

その後、信玄死去を受けて

徳川家から家康の娘の輿入れ及び

領土加増を条件に徳川家に乗り換え、

それを受けての

武田家の長篠城攻めの結果が、

長篠の戦となります。

 

つまり、

今川⇒徳川⇒武田⇒徳川と

渡り歩きますが、

一貫して領地は

奥三河の長篠城付近であり、

自分たちの

勢力・領域・武士団を持ったまま、

その時その時

強そうな側に付いているだけです。

 

徳川も武田も奥平氏を

「家臣」にはしているものの、

長篠城付近を

自分たちの領域には出来ず、

奥平氏が味方をしていくれているから

「こちらの領土」というくらいの

緩やかな支配で

「殿の為に命を捨てる所存!!」

のような江戸時代を描く時代劇のような

忠義の意識は

家臣側にも大名側にもありません。

 

 

いつ裏切るか分からない

独立勢力の領土と武士団を

「家臣」というよりは

「一時的従属」という立場で

影響下においている、

それが戦国大名の実態です。

 

 

武田家は同じ甲斐の豪族家臣に

裏切られて信長に敗れ滅ぼされ、

信長は家臣の明智光秀に討たれ、

明智光秀は「与力」である

細川藤孝・筒井順慶が味方せず

秀吉に敗れ、

織田家は多くの家臣団が

秀吉に従属する事で

秀吉と主従逆転を許し、

柴田勝家も与力の前田利家が

土壇場で裏切り秀吉に敗れ、

その秀吉の豊臣家も

子飼いの多くの家臣団が

家康に味方し滅びます。

 

そんな事は戦国時代、

日常的に起こっていた事であり、

「忠義」が

価値観の根本にあったのではなく、

自分が天下を取りたい!!

という野心でも無い限り、

「最も大きな利益」をもたらす権力者に

従属する事が

生存競争における「正義」でした。

 

強い事が「正義」

 

それが戦国武士団の価値観です。

 

だからこそ、大名は

「最も大きな利益」を

従属者に与え続ける必要があり、

いつ裏切るか分からない独立勢力でも、

成敗する事が出来ず、

緩やかな連合体を作る程度の

上下関係を構築していました。

 

 

この視点で見なければ、

戦国時代の武将たちの動きって

理解出来ないんですよね。

 

 

現代の安全保障に関しては

明日に続きます。

 

 

 

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