米露間の「新START」が

米新大統領の方針転換により

延長される事となりました。

 

 

「新START」とは、

より詳しい日本語訳では

「新戦略兵器削減条約」

となります。

 

つまり、

大陸間弾道ミサイルや核兵器などの

「戦略兵器」と呼ばれる

大国のパワーの源泉である

大量破壊兵器の数を制限する条約です。

 

この条約に

「新」と付いていることから分かるように、

この条約の歴史は長いです。

 

 

戦略兵器の歴史を紐解けば、

ミサイル技術に関しては

ナチスドイツが1940年代においては

一歩先んじていました。

 

そして核兵器技術ではアメリカが先行し、

その中で迎えた

1945年の第二次世界大戦の終戦。

 

ドイツ人科学者は

アメリカ・ソ連による奪い合いとなり、

科学者確保の為の

特殊作戦まで行われた程でした。

 

その後、

ソ連も核実験に成功し、

世界はアメリカ・ソ連の

2大超大国を中心に動いていく

「冷戦」の時代に突入します。

 

宇宙開発競争においては

ソ連がアメリカに先んじますが、

それはミサイル技術において

ソ連が優位に立った事を意味し、

ソ連が1957年に打ち上げた

世界初の人工衛星スプートニクは、

「スプートニク・ショック」として

アメリカに衝撃を与えます。

 

アメリカに核兵器があっても、

それは爆撃機で運搬し、

投下しなければならないのに対し、

ソ連からはミサイルで打ち込まれる

可能性が生まれたからです。

 

このショックが、

アメリカの理系教育の

教育改革を呼んだことは拙著

『国境を守る7つの道』

『教科書から読み解く日本の未来』

に詳しく書いています。

その後、

アメリカのミサイル技術も向上すると、

 

1969年

SALTⅠ(第一次戦略兵器制限交渉)

 

1972年

SALTⅡ(第二次戦略兵器制限交渉)

 

1991年

STARTⅠ(第一次戦略兵器削減条約)

 

1993年

STARTⅡ(第二次戦略兵器削減条約)

 

2002年

SORT(モスクワ条約)

 

2010年

New START(新戦略兵器削減条約)

 

と双方で大量破壊をもたらす兵器を

制限、削減しようという取り組みが

継続的になされてきました。

 

STARTⅠでは

米ソ双方6000発だった

大型核弾頭の配備上限も、

新 STARTでは

米露双方1550発上限と

大幅に削減されています。

 

個人的には最後の50発って

誰がこだわったの??

と思いますが(苦笑)

 

 

さて、

この新STARTから

「トランプ大統領が一方的に離脱した」

というのが良く見聞きする言説です。

 

そして、新大統領が

「新STARTへ復帰」となれば、

平和を壊す者と

平和を望む者との対比の完成です。

 

 

しかし、

世界はそんなに甘くありません。

 

 

このSTARTは

「米ソ」という

2つの大国の時代の遺物です。

 

現在、世界には

「米中露」の3つの大国が存在します。

 

そして、トランプ大統領が望んだのは、

この条約に中国を加える事でした。

 

中国の核戦力だけが

制限を受けていない現状では、

世界のパワーバランスが

変わってしまいますからね。

 

そして、

アメリカの頑なな態度に

ロシアが譲歩案を提示していた状況で

アメリカの政権が変わり、

先日合意に達した新STARTの延長では、

ロシアの譲歩案すら消え、

元通りの新STARTが

5年延長されることとなりました。

 

当然ながらロシア側は大歓迎。

 

ロシアメディアも

アメリカ新大統領を持ち上げます。

 

ロシアは世界の大国として、

アメリカの潜在的脅威であり、

仮想敵国であることは変わりません。

 

その仮想敵国に大歓迎され、賞賛される

条約の急転直下での合意は

何を意味するのか。

 

詳しく書かなくても、

今回の合意が

誰にとって喜ばしいもので、

誰を利するものだったかは

分かると思います。

 

ロシアは喜び、中国はほくそ笑む。

 

ビジネスパートナーが

満面の笑みで握手をしてくる時、

それはこちらが不利な条件を飲んだ時、

というビジネスの非情なリアルを

知り尽くした前大統領と、

メディアが報じる

「平和を愛する新大統領」の

安全保障戦略の差が出た形です。

 

 

米露の新START、

ロシア有利の次の5年間の

国際情勢がスタートしたようです。

 

 

 

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