アメリカの新政権が発足した2日後、

中国は、

日本の海上保安庁に相当する

機関である海警局の船舶に対して、

武器の使用を認める

法律を成立させました。

 

現実的に言えば、南シナ海では

既に武器を使用しており、

現状を追認しただけの

法律とも言えますが、

尖閣諸島では

そのような事態は発生しておらず、

今後は法的根拠を得て

発砲してくる可能性は出てきます。

 

 

法律が無くても発砲していた南シナ海と、

今まで発砲事案は無かった東シナ海。

 

 

この違いは

ベトナムやフィリピンの

沿岸警備隊や海軍の戦力と、

米軍を後ろ盾にもしつつ

戦力の整った海上自衛隊や

海上保安庁の戦力の差と言えます。

 

 

これが安全保障のリアルです。

 

強い敵には簡単に挑まない。

 

国際政治は理想では無く

ジャイアンの居る世界です。

 

強いか否かは、

そのまま中国海警局が発砲したり、

ベトナムの船舶を沈めたりしている現状と、

それが起こってはいない

日本の差になります。

 

とは言え、

武器使用の法的根拠が与えられた事で、

状況に変化が生じる危険性はあります。

 

これがアメリカ新政権の

発足2日後であるという

タイミングを考えても、

中国がどのように新政権を

見ているのかが分かります。

 

 

なお、

このような安全保障の話が出る時に

2つの過った言説があり、

注意が必要です。

 

 

1つは

「アメリカは日本を守らない」

 

だから尖閣も沖縄も

守るはずがないという事を、

まことしやかに語る人が居ますが、

聞き流して下さい。

 

アメリカが本気で

日本を守るかは分かりません。

 

しかし、

アメリカは確実にアメリカを守ります。

 

中国が尖閣諸島、沖縄と

どんどんと太平洋に進出する事は、

そのままアメリカの

安全保障上の脅威となります。

 

次のターゲットは

グアム、ハワイとなりますので、

中国海軍に

太平洋に出られては困るのです。

 

ですから、南シナ海と、

陥落すると即太平洋へのゲートが開く

南西諸島では戦略的価値が異なり、

アメリカはアメリカを守る為にも

同海域での中国の横暴は容認しません。

 

それを中国も理解しているからこそ、

東シナ海において発砲は行わないのです。

 

 

もう1つは

「海自が出て行って中国船を沈めろ!!」

 

という一部右派からよく聞く言説です。

 

これは私に言わせれば

「お前は中国のスパイだな」

となります。

 

海上保安庁が行う行為は

「警察行動」であり、

海上自衛隊が行う行為は

「軍事行動」となります。

 

中国の海警局の船舶は

海上保安庁と同じ位置付けですので、

彼らにとっての警察行動となります。

 

国際政治には、

相手と同じレベルの

鏡写しの対応をする、

という慣例があります。

 

すると、例え彼らの船舶が

領海侵犯をしていようとも、

それが警察行動である限り、

日本が取り得る対応は

海上保安庁による発砲を伴わない

警察行動が限度となります。

 

これが、海上自衛隊が出動し

「軍事行動」となると、

当然ながら中国海軍の出番となりますし、

その海自が発砲するとなれば、

中国海軍に発砲へのお墨付きを

与える事となります。

 

中国がそれを狙って挑発している時に、

日本から発砲する事態となれば、

 

「日本が発砲してきたので、

仕方なく応戦した」

 

というメッセージを世界中に発表され、

中国海軍の軍事行動こそが

正当化される事態となります。

 

その上で尖閣諸島を奪われたとしても、

それは日本の身から出た錆、

と国際社会は捉えるでしょう。

 

だからこそ、海上保安庁の方々は

どんなに挑発をされようとも

警備行動以上のアクションを

起こさないようにしているのです。

 

 

そのような状況にもかかわらず、

 

「弱腰政府め!!

中国に忖度して、

中国船に発砲しないんだ」

 

とSNSなどで積極的に発信している方を

見る事がありますが、

これこそが扇動でありプロパガンダであり、

日本人の愛国心を煽っているように見えて、

中国こそを利する行動ですので、

このような言説に出会った場合は

注意して下さい。

 

 

さて、

恐らく新法が出来たからと言って、

中国は東シナ海で

簡単には発砲しないでしょう。

 

しかし、中国海警局と

日本の海上保安庁の

戦力に関して言えば、

今では逆転してしまっているのは事実です。

 

簡単には発砲しないながらも、

仮に発砲、応戦などの事案が発生した折、

日本が勝てるのかとなると

難しい話となります。

 

現在、海警局には

76㎜砲を備える

12000トンクラスの警備艇まであります。

 

海上保安庁は

40㎜機関砲装備の

6千トンクラスの船舶が最新鋭であり、

これも中国海警局の増強に合わせて

安倍内閣で整備が進められたもので、

まだ戦力配備が完了していません。

 

冒頭で述べたように、

強いからこそ攻撃されないのが

国際政治の現実です。

 

海上保安庁の船舶が

新鋭かつ強力なものとなるには

まだ数年かかります。

 

新法を成立させた中国と、

水面下では無く水面上の緊張が

続く事となります。

 

 

 

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