「理想郷」という意味で

「ユートピア」という

単語が使われたりします。

 

平和で自由で差別無き社会のような

意味を込めて「ユートピア」を使うと、

それは誤りだったりします。

 

そもそも「ユートピア」とは、

1516年にイギリス人思想家

トマス・モアの著作であり、

そこに出て来る架空国家の事を指します。

 

一見すると、

古代ギリシャの哲学者

プラトンが目指したような

理性が本能を抑制し、

平等を実現させる理想的な社会ですが、

そこは徹底して

個人の自由が奪われた管理社会であり、

「ユートピア」の反対語である

「ディストピア」にも通ずる

全体主義的な要素が

そこにあったりします。

 

私有財産を禁じ、

平等な社会を作る一方で、

人の生活様式まで徹底的に管理し、

不正が無いように

監視を行き渡らせる社会は

共産主義や独裁国家など、

全体主義そのものでした。

 

 

この「ユートピア」的世界に

反発した運動に

バロック芸術があります。

 

絵画ならレンブラントやフェルメール、

音楽ならJSバッハなどを輩出した

バロック芸術は

画一的なものに反発した運動です。

 

 

一方から見れば

「ユートピア」となるものも、

他方から見れば同じ要件であっても

「ディストピア」となる。

 

視点1つで価値が大きく変わる単語が

「ユートピア」ですので、

簡単に「理想郷」として用いると

危険なんですよね。

 

 

同様に、

視点1つで捉え方が異なる単語に

「メメント・モリ」があります。

 

ラテン語で

「死を忘れるな」という意味ですが、

捉え方は2通りあります。

 

死後の世界を重視する

キリスト教社会では、

生前の善行が死後を分けるので、

 

「自分がいつか死ぬことを忘れずに」

 

という教訓として捉え、

行動への戒めとします。

 

 

他方、

キリスト教以前の社会では、

「いつか死ぬ」という

前提は変わりませんが、

死後に向けて現在を慎む、

のでは無く、いつか死ぬのだから

 

「今を全力で楽しめ!!」

 

の発想となります。

 

 

正しくは古代ローマの詩人が遺した

ラテン語の詩の一節

「カルぺ・ディエム=その日を掴め」

となります。

 

旧約・新約両聖書に、

快楽主義的な信仰無き者の行動として

否定的に書かれる思考ですが、

この詩は古代ギリシャ哲学

エピクロス派の思想を表しています。

 

記事前半で古代ギリシャの哲学者

プラトンが登場しましたが、

理性が本能を抑制する

哲学を目指すプラトンに対し、

その死後に生まれた

エピクロス派の哲学は

「快楽こそが善」

という考え方となります。

 

その中で生まれた

快楽的な「メメント・モリ」、

エピクロスの死後300年程で生まれた

キリスト教によって完全否定され、

言葉はそのままに

善行への教訓と変わります。

 

 

そんなキリスト教社会の中で、

「ユートピア」の発想が生まれ、

それに反発するように、

ヨーロッパに実は受け継がれていた

エピクロス的「メメント・モリ」や

「その日を掴め」の思想が

バロック芸術の柱となっていきます。

 

 

こうして

ヨーロッパ的価値観を俯瞰していくと、

 

プラトン的理想主義と

エピクロス的快楽主義が

 

せめぎ合って

宗教から芸術から社会まで、

交互に隆盛を極め、

ミルフィーユのように

なっているのが分かります。

 

 

 

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