「Point of no return」

 

帰還不能点と訳され、

それ以上飛ぶと出発地に戻れない点、

そこから様々な事象の

「引き返せない点」を指しますが、

2018年の国際政治は

戦争へ向けたPoint of no returnへと

近付いているのではないかと

危惧されます。

 

 

第一次世界大戦を招いたのは

同盟の硬直化と言われています。

 

同盟の硬直化とは

A、B、Cが同盟を組み、

D、E、Fの同盟と

対立している状況です。

 

この時、

AはDと対立していても、

EやFとは同盟関係にある、

CはFと対立しつつも

Dとは友好国である

などの柔軟性があれば

対立を避ける道も模索出来ますが、

同盟が強固になり過ぎ、

柔軟性を欠くことで

戦争の危険性を高めます。

 

 

第一次世界大戦時の

ドイツ首相ベートマン=ホルヴェークは

開戦直後、

「どうしてこうなったのか」

と問う知人に対し

「それが分かっていれば・・・」

と疲れ果てた表情で語ったと言われます。

 

ドイツ首相でさえ望まなかった戦争に、

参画していくことになったのは、

当時の国際情勢が

Point of no returnを

越えてしまっていたからでしょう。

 

 

国際政治の世界では、

「反実仮想」という思考実験があります。

 

事実に反することを仮想してみる、

という思考です。

 

「サラエボでオーストリア皇太子が

暗殺されなかったら」

とはまさに反実仮想ですが、

それのみが戦争の

Point of no returnでは

無かったと思われます。

 

硬直化していく同盟関係の中、

どこかで他の要因で戦争に至った

可能性も高いと思われます。

 

 

21世紀となり、

ブッシュ政権のイラク戦争以降、

「中東の民主化」を

アメリカは正義の旗印にしていきます。

 

オバマ政権時代に

「アラブの春」が起こり、

中東各地で

民主化デモと政権転覆が勃発します。

 

リビアのカダフィ政権打倒を援助し、

エジプトの親米政権の転覆を黙認し、

民主化を褒め称える一方で、

独裁的かつ残虐性を持つ

サウジアラビアへは

最大限の援助を続けるという

二枚舌外交を展開します。

 

そんなアラブの春の集大成が

シリア内戦です。

 

オバマ政権はリビア同様に

介入を決定します。

 

しかし、それは中東情勢を

甘く見過ぎた決定でした。

 

中東における

数少ないシーア派政権である

シリアの崩壊を、

シーア派の大国イランが

放っておくことは無く、

またロシアもメドベージェフ政権が

影響力を持っていた

リビアのカダフィ政権の転覆を

許した教訓から、

プーチン政権が軍事基地を有する

シリアの政権転覆を許すことは無く、

さらに折しも世界共通の敵ISが

勢力を拡大しており、

複雑に思惑が絡み合う内戦へと

拡大していきました。

 

これらの結果生まれたのが

大量の難民問題、

無政府状態のリビアやイエメン、

短期間に政権が変わる

混乱状態のエジプトやチュニジアです。

 

同盟関係も硬直化し、

トランプ大統領も

勇ましいツイートを

連発するに至っています。

 

最新兵器の開発にも成功し、

挑発的言動も辞さないロシア、

強気な外交姿勢を崩さない

アメリカとそれに追随する英仏。

 

 

歴史を振り返った時に

Point of no returnは

既に越えていたのか否か、

まだ分かりませんが、

最近の国際情勢を見ていると、

第一次世界大戦同様に、

誰も望まなかった戦争へと

選択肢が狭まっていっている、

そんな危惧を感じてしまいます。

 

 

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