8月末の記事で、

IS後の中東地域で

クルド人が独立を試み、

それがさらに多くの流血を産む、

と記しましたが、

イラクではクルド人が

国際的な反対の中で住民投票を進め、

独立賛成の選挙結果を武器に

イラク政府との交渉を

開始しようと試みました。

 

しかし、当のイラク政府だけでなく、

クルド人自治区が国境を接する

イランもトルコも国境を封鎖し、

頼みの欧米各国も

表向きは支持表明しないなど

四面楚歌の状況に

逆に追い込まれました。

 

そして始まったのは

イラク政府軍及び民兵組織による

油田地帯への侵攻。

 

少しでも

中東問題を知る人にとっては、

そうなるだろうと

予見してきた通りに展開しています。

 

 

安全保障の世界において、

 

「プレゼンスの空白は

他のプレゼンスを呼び込む」

 

ことは通説となっています。

 

プレゼンスとは

軍事的・政治的影響力のこと。

 

双方のプレゼンスが

極度に交差すれば戦闘となりますが、

ある地域にあったプレゼンスを

A国が引けば、自然とそこに

B国のプレゼンスが広がります。

 

 

イラク戦争後、

強かった中東における

アメリカのプレゼンスを

オバマ大統領が引いた結果、

同地域における

ロシアの影響力は格段に増し、

現在では主導権を完全に

プーチン大統領が握っています。

 

そのような状況下において、

ISが弱体化し、イラク北部に

プレゼンスの空白地帯が生じます。

 

そこに侵攻したのが

クルド人勢力ですが、

より大きな地域的プレゼンスでは、

米国が引き、

ロシアが影響力を強めています。

 

その中で

欧米が支援するクルド人と、

ロシアが

支援や強い影響力を行使する

シリア、トルコ、イランという

構図が生まれれば、

クルド人の独立は

厳しいと言わざるを得ません。

 

シリア、トルコ、イランにも

クルド人は多数存在し、

イラクのクルド人独立を契機に

連鎖的に各国で独立、

そして一大クルド人国家の

樹立に繋がることを

中東各国は危惧していますので、

「反クルド」では

普段は対立する

シリアとトルコ・イランも

一枚岩となっています。

 

 

ISの

疑似国家としての弱体化は

地域的プレゼンスの低下となり、

その空白地には

必ず何らかの勢力の

プレゼンス拡大を産みます。

 

それが政府側でなかった場合、

次なる衝突へのプロローグに

なることは見えていましたが、

やはり・・・という感じです。