宝石の「首飾り」と言っても

マリー・アントワネットとは関係無く、

「真珠の首飾り」でも

ジャズの名曲とも関係は無く、

安全保障戦略の話です。



日本の日々の生活は

ペルシャ湾や紅海から

アラビア海を抜けインド洋、

マラッカ海峡を超えて南シナ海、東シナ海と続く

「シーレーン」によって支えられています。


安全保障??難しいし、遠い話~と

思うかも知れませんが、

かつては「海のシルクロード」と呼ばれ、

歴史的にも伝統的なこの海の道が無ければ、

我々日本人は電気すら享受出来ず、

電車は勿論、車も走らず、

文明は江戸時代に一気に戻ることでしょう。


日本で暮らす全ての人の

日常的経済活動を支えるのが、

この海の道なのです。


つまり、この記事を私が書き、

誰かが読む行為の前提が

海洋安全保障ですので、

安全保障は常に私たちの隣にあります。



先程述べた海のシルクロードの道ですが、

ここにここ数年で存在感を

急激に増して進出しているのが中国です。


中国からマレー半島まで「南下」し、

マラッカ海峡からバングラデシュまで「北上」、

そこからインドを抜けるために再び「南下」し、

ペルシャ湾まで再度「北上」する

海洋ルートですので、

地図上の航行路が首飾りのようなことから

中国の「真珠の首飾り戦略」と言われています。


この海域における

中国の勢力が増すと言うことは、

そのまま日本の安全保障に

重大な影響を及ぼします。


いざ何か対立することが起きた時、

この海域を封鎖されてしまうと、

日本には電気も無い状況となってしまいます。



何故国が原子力政策を進めて来たのか。


こういう背景も理解しなくては、

批判すら本当は成り立たないのです。


現状では火力発電が主ですから、

価格の変動が大きい石油に依存し、

安全保障上のリスクがある海域を通らなくては、

日本の電力が維持出来ないため、

リスクヘッジの手段としての側面を忘れては、

原発を巡る議論は出来ません。


また、シーレーン依存が高まるほどに、

日本はこの海域への

影響力を維持する必要があるのですが、

日本の海外での

軍事的影響力を増すことを嫌う方に、

脱原発派が多いのも事実。


地下資源の輸入とシーレーンに依存しなければ

立国出来ないと言う、

日本が持つ地政学的リスクを、

どのように考えているのでしょうね。



中国の影響力がこの海域で増していく中、

安倍総理は9月に同地域を訪問しています。


また、中国に対抗すべく

インドが同海域で

「ダイヤのネックレス戦略」を取る中、

日本は武器輸出三原則の定義の変更もあり、

海上自衛隊で使われている

国産のUS-2飛行艇を

輸出する方向となっています。



元外務省キャリアの評論家の方で、

安倍総理のバングラデシュ訪問などを

税金の無駄遣いと批判している方もいますが、

外務省で勤めてきた割には、

この海域の持つ重要性と、

中国の野心をご存じ無いんですかね。


軍拡と同様に、ODA拡大競争もまた、

国家財政には負担となるチキンレースですが、

この真珠の首飾り、

是が非でも競り落とさなければ

日本はそれ以上の損失を受けることになります。