バレンタインの時期になると

よく流れる名曲がある。

「My Funny Valentine」というジャズの名曲です。


この曲のタイトルを見て、

ジャズ好きの人は必ずChet Bakerという

ジャズマンを思い出すと思います。

彼の代表曲ですし、

この曲の最も有名なバージョンを

歌ったのが彼でもあり、

曲とミュージシャンが相思相愛の仲です。


この時期、色んな人のバージョンが

街に流れますが、やはり彼のバージョンを

越える存在は無いと思います。


Chet Bakerは私が最も好きなジャズマンで、

1950年代前半に全盛期を迎えた

トランペッターでヴォーカリストです。


同時期に活躍した人物に

ジャズの帝王マイルス・デイビスがいますが、

50年代前半は、甘いマスクの白人である

Chetの方が人気がありました。


その全盛期に出した

『Chet Baker Sings』というアルバムに

収められたこの曲は、世界中を魅了します。


ではChetの魅力とは何かと言うと難しい。

まずトランペットが下手で歌も下手。

ミュージシャンとして

何が良いのかと言えば「哀愁」。


技量的に彼を圧倒的に凌ぐ人物は

ジャズ界には多数います。


しかし、下手だけど

独特の哀愁がある彼のプレイは、

甘いマスク以上に観客を魅了しました。


彼もこの時代の

ミュージシャンの例に漏れず、

麻薬中毒者となります。

そして多くのミュージシャンが

麻薬などから早世してしまう中、

売れないミュージシャンとなりながらも

欧州に渡り80年代まで

ジャズを吹き続けます。


最後は他殺とも自殺とも分からない

死に方をするのですが、

やけになることも無く、

自分流のジャズを晩年まで

淡々とプレイし続けたジャズの旅人、

多くの天才ミュージシャンの影に

隠れてしまいますが、

2月だけは他の誰のものでもなく、

Chetの為の月だと思います。


カカオ成分の濃いビターチョコを食べながら、

クセの強いアイラのモルトをストレートで飲む。


人生の甘さも苦さも知る男の

哀愁のジャズには、

ビターな夜が良く似合う。


そんな夜にマッチする、

トップではないし、不器用だけど哀愁がある、

そんな男にいつかなりたいなぁ(^^)