<2024年5月29日>
 玄関から10mくらいしか離れていない土手で雉が卵を抱いている。60年以上生きてきたが、雉の抱卵を直に見る機会は初めてである。

  

 一体どのくらいの野鳥が暮らしているのか、と思うほど、鳥が元気に鳴いている。ウグイスが春先の不器用な泣き方から、いわゆる「ホー、ホケキョ」と鳴けるようになる変化も楽しむことができる。知り合いに、「鳥博士」と呼ばれている野鳥好きがいて、以前裏山で録音した音を聞いてもらった。「あ~○○がいますね、遠くで△△も鳴いてますよ」と解説してくれた。印象的なのはガビチョウ(画眉鳥)で、これがまぁ、何を喋っているのかと、笑いたくなるくらい喋り続け(鳴き続け)る。英名では「笑うツグミ(laughing thrush)」と名付けられているのも納得である。
 4月になると「ケン、ケーン」というキジ(雉)の鳴き声が聞こえるようになる。田のあぜ道や草むらで雄の赤い頭が見えたり、耕された田で雄と数羽の雌が何かをついばんでいる様子も見ることができる。そしてこの頃から、草刈り機(刈払い機)を使った除草作業が本格化する。休耕地や山林・土手・竹林など、面積が広いので、作業は結構大変である。手を抜くと荒れ地になってしまう。所有者が不在になって土地が荒れていくのはやむを得ないが、怠け者の家と思われるのは癪である。景観上もきれいに草が刈られた風景は気持ちが良い。とはいえ、急傾斜の法面等、やりきれないところもある。それでもできるだけ広く、と思ってもう一歩進めると、そこに野鳥の巣が見つかることがある。草刈りシーズンのスタートは野鳥の繁殖時期と重なってしまうのだ。
 1週間前、家の前の坂道沿い石垣の土手際を刈っていたら、バサバサッと雌の雉が飛び立った。幸い、巣の上側に被さった草を刈っただけだったので、巣を傷つけることはなく、10個ほどの卵も無事だった。

 すぐに草刈り作業を中止し、「戻ってきてくれ~」と願っていたところ、程なく雌が戻ってきて卵を抱き始めた。石垣の上から土手をのぞき込むと、ちょうど見える!見事な保護色で、草に溶け込んでいる。(長い尾が見えます)

 以来、そっとしておいた方がいいとわかっているのだが、ついつい様子を覗いてしまう。東を向いたり西を向いたり方向を変えながら、頑張っている姿は可愛い。一昨日の雨の1日は心配だった。傘を差してやるわけにもいかず、早く雨がやむのを願うばかり。雨上がりの朝には、何事もなかったかのようにちょこんとすました顔が見えて、ホッとした。

 登下校小学生の見守り隊、ではないが、今我が家は、「キジ(雉) 見守り隊」といったところ。無事に雛がかえることを家族で願っている毎日である。