間違った仮説を考察させる(慶應大学医学部2024年物理題3問) | 受験で実力を得点に変えよう(家庭教師の心がけ)

受験で実力を得点に変えよう(家庭教師の心がけ)

家庭教師歴約25年。医学部東大など難関大学受験生中心に教えてきました。ちょっとした工夫でケアレスミスを防ぎ実力が点数に反映させる実践的方法や受験生の質問の多かったポイントや過去問などのブログにする予定です。ご連絡あればkatekyo424-public@yahoo.co.jpまで。

少し仕事が忙しくなり、動画の更新が滞ってしまいました。暇ができたら再開する予定でしたが、今年度はありがたいことに早めに仕事の依頼が数件あり、時間がなかなか作れなそうです。落ち着いたら、徐々に時間を見つけて、仕事に差し支えない範囲で動画を再開するつもりです。

 

例年は大体4月下旬までゆっくり休むのですが、すでに依頼を引き受けた以上、昨年度結構ゆっくりしすぎてしまったこともあり、長期休暇なしで仕事をしようと思っています。


やる気のない生徒を強制的にやらせてほしいという案件は、お断りさせていただいています。ブログは難関大学向けですが、志望校のレベルの高い低いや現時点での実力関係なく、「やる気があるなら」もしくは「理解することでやる気を引き出す仕事なら」、全力を尽くします。

 

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に詳しくあります。ここ数年は、対処できる範囲であれば大学生もやっていますので、ご依頼やご相談などありましたら、遠慮なくこちらへメールして下さい (いただいたメールが迷惑メールに入っていることもたまにありますので、万一返信が遅いときは、コメント欄に一言いただければ助かります)。



ニュートンビーズ


さて、今回は久々にオリジナルの解答速報的なやつです。ニュートンビーズの現象を考察させるとても面白い問題なので、動画にしようとも思ったのですが、ニーズがあるのかなぁ?というのと、問6が全く自信がないので、とりあえずブログにしました。以下は自分の授業用のまとめをGoodnotesの変換機能用いて作ったものです。思ったより大変でしたが、手書きを変換できるなんて便利な時代になったものです。。

 

問題は予備校のサイトなどでご確認ください。僕は、解答は必要に応じて軽い確認以外なるべく見ないようにしているので、問題のみを早めに公開してくれる代ゼミの解答速報を利用させてもらっています。

 

本問は、「間違った仮説や想定を提示して、どこに問題点があるかを考えさせる」ことで、劇的に難易度が上がっています。当たり前ですが、解いていて「こんな仮定やばくね?」という疑問を受け入れながら解く感じになるので、出題者の出題意図がとにかく捉えづらく、気持ち悪い感じでずっと解いていました。普通の入試問題より、本気で物理を考える脳を使わされた気がするので、「こういう問題がメインの時代がくると、いよいよ解く側は対策しづらくなり、大変になるだろうなぁ」とも思います。

 

問1は問題の誘導に従うだけですが、案外盲点になりやすいのかなぁ?高校物理の範囲を超えますが、積分使える人であれば、あまり考えずに解けると思います。問2では、撃力次第では中心が等速で動く可能性も否定しきれないとは思いますが、(中心からの視点で考えればどちらで考えても同じなので)素直に中心を固定してほしいはずだと考えて、運動方程式と束縛条件で解きました。線密度を使って質点と同様に微小領域を扱う感覚がないと、ここが山になったかもしれません。いつのまにかこんなのも入試範囲に侵食してきてるんですね。物理の基本とはいえ正しい方向なんだろうか??

 

 

問題の先読みをサボったため、問3あたりから「なぜ重力無視?ありえなくね?なんか問題読み間違えてる?」と疑問がわき始めます。ただ、とりあえず素直に誘導にしたがって解いていきました。で、問4で「ニュートンビーズ」の誘導だったのか!と感心したのですが、「あれ?今まで重力ないとしてるはずだけど??」と思い、問題文全体を読み確認したところ「想定の問題点を考察させる問題」ということにやっと気づき(←遅い。。)、この問題の本当の面倒なところを捉えました。


想定の問題点を最後に考察しないといけないので、以降は解きながら疑問や違和感をメモしました。最初は「g=0の張力や遠心力をg≠0で使って大丈夫なわけないよなー?」という疑問でした。


とはいえ素直に誘導に従うしかないので解いていきます。試験ならすぐに割り切ってそうやっていたと思いますが、仕事の準備なので、再度今までやったことと自分の認識に矛盾がないことをここで再確認しました。


丁寧な誘導をしてくれていますが、単位面積の力である圧力を単位長さの遠心力に置き換えていたりと、線密度面密度の扱い知らないと、「本当にこんなことやっていいのか?」やや不安に思いながら解くことになるはずです。(大学の電磁気学の電荷の線密度や面密度扱う問題知ってれば簡単なんですが。。。)


 

次に「(f)の下向きの外力って重力しかないのに重力と張力を別の外力として分けるの大丈夫なの?」と思います。通常の問題なら「絶対自分が何かを見落としてるはず」なんて考えてリカバーするのですが、そもそも半円部への重力無視が意味不明な上、本問では設定に問題があると明記されているので、とりあえずそのまま進めていくしかありません。


結局問4も問5も、問題の仮定や想定を一応受け入れて、やれと言われたことに従ってやる感じで解き、問5の想定1までは解法自体は案外迷わずにいけました。

 


最初に解くときに引っかかったのは「想定2」の方です。たるんだヒモの張力の方向との釣り合いで、「下向きの力がなんなのか?」は少し考えました。存在できない力を仮説として考える問題を古典力学で作るとは思えないので、「まあ等速運動させるために残ったヒモの部分が、(少しグレーな表現ですが)固定点のように下方向引っ張り返していると素直に考えてほしい想定だろう」とすぐにわりきりました。この辺は試験のときでもある程度は考える気がします。


さていよいよ本題の問6です。これはめちゃくちゃ悩みました。しかも全く自信ないです。。。実際の試験では、じっくり考える時間はとれないので、問5まで誘導に従って処理して、問6は捨て気味に軽く書いて妥協し、他の問題の見直しするのが現実的かもしれません。



まず、問題点はあちこちにあるので、本問ではそれぞれの想定で仮定した内容のみの問題点に絞って答えるのが出題意図だろうと判断しました。そこで想定1は「ひも全体が失う位置エネルギー」=「右側のひもの下端が失う運動エネルギー」ということの問題点、想定2は「同じ高さの上昇しているひもの張力にひとしい」ということの問題点に絞ることに決めます。


想定1の脳内を軽くフォローすると、ある微小時間に


1.「右側のひもの下端が失う運動エネルギー」=「ひもの左端がうけとる運動エネルギー」であること

2.「ひもの各微小領域の位置エネルギーの変化」=「重力がひもの各微小領域にする仕事」であるから、「ニュートンビーズを形成しているひも全体で失った位置エネルギー」= 「重力のする仕事」と捉えられること

3.ニュートンビーズの運動の左側のコップから上へ飛び出す上への撃力を生み出す外力は、ニュートンビーズ右側の下向きの重力しか考えられないこと


この3点から、Q.3(d)を使いそうなことは見えたのですが、g=0と仮定した撃力fを、Q.4(f)で張力ρv^2と重力ρ(L+H)gを分けて考えている状況で、その重力を外力として使うことに違和感があり、かなり悩みました(未解決)。Q.4(f)でg=0と仮定した張力や遠心力をg≠0で普通に用いていること自体が危ういので、スッキリと出題者の意図はこれに違いないと、自分が納得できる結論がまとまりません。ここでは上記の理由3から、重力をQ.3(d)における外力と置き換えるしかないと妥協して4枚目の画像のようにまとめました。が、正直微妙で今も気持ち悪い。。。何か見落としているのかなぁ?


想定2は、上記のQ.4(f)でg=0と仮定した張力をg≠0で普通に用いてつりあいの式をたてていることを問題点としておきました。こちらはまあこんなもんだろうと最初に解いたときには特に迷いはなかった気がします。


問6に確信持てなかったので、念のため予備校の解答速報を確認させていただきました。想定1は概ね駿台とは近い感じでしたが、他はもっとシンプルに書いていました。想定2も一応駿台の解答の一部なので、目の付け所はそこまでおかしくなさそうです。他予備校のL=0がおかしいという解答は、なるほどーとも思ったのですが、そもそもおかしいということに目をつぶれば、「極限状態自体を否定して解答として成立するのだろうか?」といった疑問も感じるので、やはりなにか僕が見落としている可能性がかなりあると思います。。。なにかおかしいことなどありましたら、遠慮なくご指摘ください。いずれ時間あるときに、一度リセットしてからちゃんと再検証するつもりです。


初めて考える設定で、問題点のある仮定で解き、その問題点を考察するのはこんなに悩むものかととても勉強になりました。高校物理の範囲なんだろうか?という疑問もありますし、試験問題として時間内に解くのは厳しいですが、物理学科にいく人が必要なのはこういう問題点を考察する思考力なのかもしれませんね。でも医学部の問題なんだよなー。


去年の東大物理もかなり難問でしたが、こっちの問6は別の意味でそれ以上の難問だと感じました。。。


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