「民法」の授業。
教科書通りに教えても、生徒たちの興味を惹くことは難しい。そこで、毎年、10問の○Xクイズで、知っているようで知らない、結婚や離婚、夫婦のお金についての知識について話しています。
 
クイズは、牧野カツ子氏の「家庭科ワークブック」より抜粋し、一部アレンジしたものです。



20年以上前に出版されたこの本。今でも斬新だと思うアクティブラーニングのネタにあふれています。

学習プリントです。(表)


クイズの解答

※法律の変わり目なので、⑨は◯にしました。


プリント裏には、18歳成人の詳しい資料を載せました。


板書


クイズが解けたら全員起立して、間違えたら座る方式で、自分がどの程度の民法の知識があるかを実感させました。正答率は半分程度。知っているようで知らない家族に関する法律。

知ってる知らないに関わらず、私たちは法の下で生活しています。知らないかったと言っても、法に触れたら裁かれます。でも、改めて学ぶ機会は少ないと話した上で、解説を行いました。
 
①婚姻年齢
民法は改正になり、18歳成人になりました。このことで変わったことは、女性の婚姻年齢が18歳に引き上げられたことだけではありません。未成年の結婚がなくなることも大きな変更点なのです。すなわち、親の承諾は必要なくなります。成年年齢が20歳だった時は、男性18歳、女性16歳の未成年で結婚できました。親権者である親に承諾してもらい結婚した後は、親権から外れて成人扱いになっていたのです。

みなさんは、成人と未成年の違いは何か知っていますか?

プリント裏で、成人と未成年の違いについて確認しました。成人と未成年の違いは、①1人で契約を結べること。②親権から外れること。の2点です。
高校卒業前に成人を迎えるみなさんは、高校卒業前に親権から外れます。すなわち、進路や住む所は自分で決められると言うことです。もちろん経済的に支援してもらう親の意見は最大限に尊重するべきだと思いますが、自分の意見をきちんと持って、判断する力を今のうちから育てておいてほしいと思います。
また、成年年齢が下がり、未成年者取消権が18歳から使えなくなると、消費者トラブルが増加することが懸念されています。消費者教育は、家庭科でも丁寧に扱いますが、何か困ったことがあったら、188(いやや)に連絡。最寄りの消費生活センターにつながり、専門家が解決の手段を一緒に考えてくれます。トラブルへの対策は、早ければ早い方がいいので、必ず覚えておいておき、すぐに連絡しましょう。

※前回の授業の番号と紛らわしいので、板書で確認しました。


②婚姻禁止の範囲
3親等内の血族間では婚姻できません。
3親等とは何かを教科書の表で確認しました。
 
③同性婚の問題

現民法では、同性婚は認められていません。

しかし、最近、ニュースでよく取り上げられている同性婚に対する集団訴訟。判決は、違憲、合憲で割れ、大きな話題になっています。

世界で同性婚が認められている国や地域は、20%ほどあるそうです。プリントには、パートナーシップ制度のある私たちの住む市の市報の記事や、同性婚のニュース検定の資料や同性婚に対する政党の立場の資料を載せました。


⑥夫婦別姓
現在、夫婦の姓は同姓で、どちらでも自由に選べます。しかし、実際は96%が夫の姓を選んでおり、平等に選択されているとは言いづらい。そこで、別姓も選べるようになるとよいのでは?と、20年ほど前から審議されています。
 
⑦離婚後の氏
離婚届と一緒に出せば、名前をそのまま使い続けられる書類を紹介しました。

⑧離婚の種類と証人
婚姻届と離婚届を提示し、どちらも2人の証人が必要なことを確認しました。

⑨女性の再婚禁止期間
現行民法施行当時から、男性の再婚禁止期間はありません。妊娠した時の父親把握のため、女性はかつて6ヶ月の再婚禁止期間が設けられていました。2016年、100日に短縮され、さらに、2024年夏頃、女性の再婚禁止期間が撤廃されることが決まっています。

1996年に答申された民法改正案。
20年近く動きがなかったのですが、ここ数年でバタバタと変更されました。
③同性婚や⑥夫婦別姓も認められる日は近いのかもしれません。

最後の11の3択クイズは、挙手でみんなの傾向をつかみます。
専業主婦とサラリーマン。
夫の収入は誰のもの?
 
大半が、Cの夫婦共同を選ぶのですが、正解はAの夫のものが正解。
日本の法律では、夫婦別産制です。

教科書では、1行しか触れられていないこの法律ですが、私たちの生活と深い関わりがあります。
 
私の友人(男)が10年連れ添った妻と離婚した際、それまで夫婦の生活費を全て自分の通帳から使って、妻の通帳を貯蓄にあてていたにも関わらず、妻の通帳は全て妻のものになってしまったエピソードを紹介し、法律は、自分の人生に大きく関わってくるという認識をさせました。
 
生徒たちに「自分ごと」として捉えられる民法の授業を目指しました。
本当にあった怖い話エピソード(離婚の時の財産分与や前回の授業で話したデートDVなど)は、生徒たちの印象に深く残るようです。
私も、学生時代、教科書の内容より先生の雑談の方が覚えていた記憶があります(笑)
授業に関係のある雑談を織り込んで、記憶に残る授業をしていけたらいいなと思います。

クイズでは不十分だった民法の内容を次の授業では、教科書で学び直しました。

 

板書です






プリント裏には、選択的夫婦別姓制度について詳しい資料を載せたり、政党の立場を比較した表を載せ、自分の意見を考えさせました。


18歳成人を目前にした生徒たち。

自分の意見を持ち、語れる力も必要です。


時間のあるクラスでは、このテーマでマイクロディベートをしたいと思います。


余談ですが、プリントの同性婚や選択的夫婦別姓制度の資料には、ニュース検定のテキストやhigh school times(年4回発行)を使いました。

タイムリーな話題が分かりやすくまとめてあり、小論文対策にもなるこのテキスト。お勧めです。


 変化の時期に生きる生徒たちが、法律に興味、関心を持つきっかけになりますように。