「春ちゃん」

 その声が聞こえたのは夜の廊下の方だった。
 帰ろうと自習室を出てすぐ。
 電灯が点いていても薄暗い廊下に声の主がいた。春海先生といるスーツ姿の見知らぬ男。

「直くん」

 少し戸惑いを含んだように返事をする春海先生。

「ゴメン」

 僕がいるのも気付かず二人のやり取りが続く。

「頭なんか下げないでよ。それじゃ、それじゃ私があなたを傷付けたみたいじゃない!」

「いや、そんなつもりじゃないんだ。ただ、傷付けてしまった事、謝りたくて」

「もう、いい加減にしてよ! これで何度目よ。もう、嫌なの......」

 最後は消え入りそうなほど、小さく悲しげな声になっていた。

 僕はいたたまれなくなって、逃げるようにその場を去る。
 遠くの方の別の階段から一階に降りると、出入口で幸が待っていた。明らかにいつもより元気がない。

「どうしたの?」

「あ、高井くん......」

 それだけ言うと、幸は僕から目線を反らす。
少し目が赤いような気がした。
 それが何故か、早く帰れ、と急かされてる様で、少しの戸惑いと苛立ちがない交ぜになった感情がぐっと沸き上がる。
 僕は逃げるようにその場を離れ、一人で家路に着く。
 一人で歩く帰り道は久しぶりで、何だか寂しさが漂う。
 幸が後から走り寄って来るかと思ったのに、結局駅まで着いても彼女が僕を追う事はなかった。

 当たり前になってた幸との日常。
 いつも一緒の昼休み。帰りも一緒で下らない話をしてたっけ。いつも合格しようって励ましあって、授業後にノートを見せあって、同じ目標を目指してた。
 僕は何も分かってなかった。

 走った。
 
 来た道を走って戻る。

 あの桜の公園。
 薄暗い中桜の木がさわさわと優しく揺れた。
 花は散り、もう葉桜。
 そこに一人幸が立ってる。

「幸」

 僕の言葉にゆっくりと振り向く。

「高井君」

「一緒に帰ろう」

 彼女は黙って頷くと僕の手を取った。

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しっくり来ない部分もあるのですが、とりあえずこれで終わりです。

反省点しかないわ。

やっぱりもっとコツコツ継続的に書かないとダメだねえ。時間が開くと感覚が戻らないし大変。完結させるので精一杯でした。
もっと足さないといけないエピソードもあるのですが、無理‼️
掌編なのにこれじゃね、まだまだだね。

お目汚し失礼しました🙇