私は経理をしている。

 

これから行われる定額減税の動向はずっと気になっていた。

 

6月からその処理が始まるということで。

 

まずは社内で調整を始めた。

 

その打ち合わせを会議室でやっている時。

 

上司と私は具体的な業務について詰めていて、担当割り振りも話し合った。

 

事務の人数は少ないので、ゆっくり準備していると間に合わない。

 

税理士の先生が巡回に来てくれるとは言っても丸投げできるわけではない。

 

だから事前にやるべきことや主な流れの情報を貰って早めの準備を始めた。

 

いつもの業務にプラスされたイレギュラーな仕事。

 

やはり誰もやりたがらない。

 

それでも誰かがやらなければならないので、仕方なく自分から手を挙げた。

 

実際の業務の半分以上を引き受けてしまった。

 

そのため、せっかく年次決算が終わったというのにまた忙しい。

 

その会議をしている最中、パワハラ社員が聞き耳を立てていた。

 

こちらはまだ話し合うことがあるのに途中で割り込んできて、

 

「私は妻と子供を養っております。どれくらいお金をもらえるんでしょうか」

 

という質問をしてきた。

 

丁寧なように聞こえるかもしれないが、口調はかなり威圧的だ。

 

社員皆がこの人を苦手としていて私もできれば関わりたくない。

 

それを知っているから、上司がすぐに対応してくれた。

 

答えてもらったのだからそれですぐに立ち去るかと思われたが、その後も

 

「どのように貰えるんですか」

 

などと聞いていて、

 

「給与で控除していくので、6月支給時に詳細を記したPDFも一緒に送付しますよ」

 

と教えてもらっていた。

 

 

 

 

今度こそ解放されるかと思いきや、今度は『今知りたい』とゴネた。

 

この人はいつもこんな感じだ。

 

こちらは社員へのお知らせと実務を円滑に行うための事前打ち合わせをしているのに。

 

自分が知りたいと思ったら今全て教えてもらわないと納得できない。

 

そういう性格を知っているので、上司が

 

「それではお知らせが出来次第、先にお渡しするので確認してください」

 

と言ってくれたのだが、

 

「今教えてもらわないと困ります」

 

と食い下がった。

 

私たちも『また始まった』と辟易していた。

 

けれど、こちらがどんなにドン引きしていようが困ってようがパワハラ社員はお構いなし。

 

自分の要求をぐいぐいと突き付けてくる。

 

結局会議とは無関係の人なのに10分以上も居座って打ち合わせが妨害された。

 

やっと去った後は担当者たちが顔を見合わせて苦笑い。

 

いや、笑っているけど誰もが疲れた感じで引きつった笑いになっていた。

 

どうして周りの人のことを考えられないのだろうか。

 

きちんと処理するし、詳細もお知らせすると言っているのに。

 

私たちのことを信用していないみたい。

 

上司のことも信用していないので、不利な処理をされるのではないかと疑心暗鬼になっているように見えた。

 

結局誰のことも信用できない人なんだな。

 

威圧的で攻撃ばかりするから苦手だけど、可哀そうな人だとも思った。

 

この定額減税は本人分と扶養している人の分が対象となる。

 

1人あたり4万円だけど、そのうち3万円が所得税で1万円が住民税。

 

6月分で減税しきれない場合は7月以降に減税ということで。

 

しばらく手取りが増えるから嬉しい。