お墓参りに行くため、事前に場所は聞いておいた。
詳しく聞いていたはずなのに、実はちょっと迷ってしまった。
何を隠そう私はかなりの方向音痴なのだ。
公共交通機関の乗り換えなんかでも間違えることがあるし。
駅から外に出るようなケースではスムーズに着いたためしがない。
徒歩10分なんていったら、もう未知の世界。
以前初めて行く場所で、本来なら徒歩5分と書かれていたのに。
気が付いたらかれこれ30分近くも歩いていた。
途中でおかしいなとは思ったんだけど交番もない。
それで不安そうな顔で歩いていたら見知らぬ方が、
「どこに行くの?」
と声をかけてくれた。
暗がりの中行き先を答えたのだが、その方は驚きながら、
「反対方向だよ………」
と呟いた。
「おじさんもそっちの方に戻るところだから一緒に行こう」
と連れて行ってもらえたが、あの時ばかりは自分の方向感覚の無さを呪った。
これでバスなんかが必須の場所ならもう大変なことになる。
行く前から大冒険にでも出るような気持ちだ。
実は今回もバスが必須の場所にあった。
私は緊張しながら見知らぬ街に降り立った。
これまでの人生で一度も来たことのない場所で、見る風景は新鮮だった。
駅前には結構人が居て、それぞれが思い思いの休日を過ごしている。
まずはそこから見えるバス停に移動して時刻表を確認し、まだ少しあるからと近くのお店に入った。
と言っても悠長にお茶をしていたら出てしまうので、ただぶらぶらとウィンドウショッピングをしただけ。
もう少しでバスが来るかな?という時刻になり、再び先ほどの乗り場に戻った。
バスはだいたい時刻通りに到着。
電車と違ってバスって分かりにくいことが多い。
私の利用したバスも例外ではなかった。
いくつめで降りるのかもイマイチ分からないまま、次の停車場のアナウンスを聞き漏らすまいと耳を澄ませていた。
そうこうしているうちに、だいぶ静かな場所に入った。
先ほどの駅前の喧騒が嘘のように静かな所だった。
道行く人もほとんどおらず、穏やかな時間が流れている。
『あの人はここで育ったんだな』と思いながら窓の外を眺めた。
目的の場所に到着して降りると、目の前に広がっていたのは自然がいっぱいの風景。
私は大きく伸びをしながら深呼吸した。
バス停からはすぐだった。
曲がるところもないから迷わず到着。
ただ、入ってからもやっぱり迷うんだよね。
まぁこれは仕方がない。
目印なんて無いんだから。
端の方だということだけは聞いていたので、もう手当たり次第に端の方をくまなく探した。
それで見つけた。
見つけたけど何だか実感がわかなかった。
ここに眠っているのか。。。
すぐにお花を置こうと思ったのだが、何故かちょっとだけ後ずさりしてしまった。
そして少しだけ離れた場所からじーっと眺めていた。
あまりにもずっと眺めていたので不審人物にでも映ったのだろうか。
お寺の方が掃き掃除をしながらすぐ傍まで寄ってきてチラチラ見ていた。
でも、私はそれにも気づかずにただじーっとお墓を見ていた。