夫の新しい電話番号は既に着信拒否にしてある。
もちろん義実家や古い番号も。
だから、知らない番号からかかってきたら大抵はセールスだと思う。
セールスだって出てしまったら面倒なので出ることはない。
本当に連絡を取りたい人は留守電にメッセージを入れるだろうし。
そのおかげで『夫からかかってくるかも』と闇雲に恐れる必要がなくなって楽になった。
かかってきた瞬間にドキドキしながらディスプレイを確認することもなくなった。
すっかり安心しきっていた訳だが………。
またしても知らない番号からの着信があった。
しかも相手はセールスなどではなく夫。
えっ?
だって新しい番号も着信拒否設定にしたばっかりだよ?
どういうことなのだろうかと考えていたら、メッセージの最後の方に、
「この番号は○○(夫友人)のなので折り返さないでください」
と言っていた。
誰だっけ………?
名前は聞いたことがあるような無いような。
もちろん最初から折り返すつもりなんて全く無いのだが。
まさか友人の携帯からかけてくるとは思いもしなかった。
しかも、その○○さん(夫友人)というのがほとんど記憶にないくらいの影の薄い人で(失礼)。
どんな人だったのか。
なんで夫に協力しているのかもサッパリ分からない。
というか、こちらが『そんな人居たなぁ』というレベルなのだから。
相手だってそんなことに電話を使われて困っているのではないだろうか。
夫の周りでは友人たち数人が話をしている様子。
ガヤガヤとした音声も入っていて、みんなで楽しい時間を過ごしていることが伝わってきた。
なんでそんなタイミングでかけてきたのかは分からないが。
どうせ友人たちと一緒に居て気が大きくなってしまったというところだろう。
結局義父が倒れたというのも嘘だったのかな。
途中までそんな思いで聞いていたのだが、どうやらそれは本当らしかった。
でも、すぐに家に戻れるらしいので重病ではなさそう。
そうでなかったら、こんな風にバカ騒ぎなんてしていられないだろうし。
メッセージを消去した後、私はどっと疲れた。
何というか、最近の楽しい日々と夫から連絡が来た時の嫌な気持ちの落差が大きい。
そんな私をよそに息子は日々を満喫している。
息子たちは毎日めいっぱい楽しんでいて、夜は気づいたら寝ていたということも少なくない。
リビングで寝てしまった息子を兄が運んでくれた時、
「○○(息子)も重くなったよなー。子供はどんどん大きくなるよな」
と言った。
兄にとっては何気ない一言だったのかもしれないが、私はその言葉に何故か感極まってしまった。
色んなことがあったけど、こうやって元気に成長してくれている。
それが嬉しくて。
姪っ子たちがお泊りをしている時には朝誰かが起きると他の子を起こして回る。
それでみんなでこっそりリビングに行ってテレビを見ているのだが。
その姿を後ろから見るのが好きだ。
何気ない日常の中にも『幸せ』がたくさんあふれていることを実感できる瞬間だ。