夫から留守電が入っていて、義父が倒れたことを知らされた。

 

一大事って言えば一大事なんだけど。

 

大したことではないのに大げさに言っている可能性もある。

 

それに私たちはもうすぐ他人になるんだよね?

 

今はまだつながりがあるけれど、間もなく切れるご縁なのだから。

 

これ以上深入りすることは避けなければいけないと思った。

 

もちろん息子にも知られないようにしたかった。

 

だから、留守電のメッセージはすぐに消したし、着信拒否設定も済ませた。

 

これで安心だと思っていたのだが。

 

私たちよりも早く息子は聞いてしまっていた。

 

うちには家電が無かったので息子にとっては実家の家電が物珍しい存在。

 

時々用も無いのに何やら操作しているのを目にすることがあった。

 

今回も触っていて留守電が入っていることにいち早く気づいてしまったのだろう。

 

それでこっそり聞いてしまい、夫からのメッセージを知った。

 

だけど、知った後も自分からその件に触れることは無かった。

 

何事も無かったかのように振舞っていた。

 

それなのになぜ分かったのかというと、食事中に母が、

 

「向こうのお父さんはー」

 

とついうっかり話題に出しそうになり、私がハッとして目配せで止めるように合図を送った。

 

それを見た息子が『知ってるよ』という感じで、

 

「おじいちゃん、どこか悪いのかな」

 

と真顔で聞いてきた。

 

周りは『えっ?!』と驚いて思わず息子の顔をまじまじと見つめた。

 

咄嗟に言葉が出てこない母と私。

 

そんな私たちをよそに、穏やかないつも通りの口調で息子に問いかけたのは父だった。

 

「○○(息子)ちゃんは何で知ってるの」

 

そう聞かれた息子は、

 

「電話のボタンを押したらお父さんがそう言ってるのが聞こえたの」

 

と教えてくれた。

 

 

 

 

さぞかし驚いたことだろう。

 

怖くて怖くてたまらない相手の声がいきなり聞こえてきたのだから。

 

一生懸命普通にしていたが、内心はみんな動揺していた。

 

「あら~、○○(息子)ちゃん。操作の仕方分かるの?凄いわぁ」

 

沈黙を破ってくれたのは良いが、こういう時に母はテンパって訳の分からないことを言う。

 

私もかなり焦っていたので、

 

「まあ大丈夫だよ」

 

と何の根拠もなく自信たっぷりに言い切ってしまった。

 

それにしても自分からその話題を振ったということは、何か気になることがあるのかもしれない。

 

こういう時は変に隠そうとするのではなくストレートに聞いた方が良いのかもと思って、

 

「嫌な気持ちになっちゃった?」

 

と聞いた。そうしたら、

 

「違うの。ぼく、会いに来てって言われたら困るなと思って………」

 

と眉毛がㇵの字になった。

 

「会いになんていかないよ。きっとすぐに良くなると思うし」

 

と伝えると息子は頷きながらホッとした顔になった。

 

しかし、その後に

 

「でもさ。もし会いたいって言われて嫌だって言ったらダメなんだよ」

 

と言うので、ちょっと意味が分からずにどういうことなのかと聞いたら、

 

「前にお父さんが困っている人には優しくしてあげないと自分に返ってくるよって言ったの」

 

と教えてくれた。

 

言葉足らずの息子の言いたいことを理解するのは難しい。

 

その後も少し話をしてようやく分かった。

 

夫や義両親が『困った』という時には優しい気持ちで力になって欲しいということのようだった。

 

優しい気持ちで接しなければ、それがいつか自分に返ってくるよ、とも。

 

自分のことは棚に上げてよく言えたもんだ。

 

息子に何か言った時に拒絶されないように予防線を張ったんだろうけど。

 

言葉巧みに幼い息子をコントロールしようとするなんて。

 

やっぱり夫はおかしいのだと思う。