家の電話に夫から留守電が入っていた。
母に着信拒否設定にして欲しいと頼んだのにスッカリ忘れていたらしい。
この間のように兄が居たわけではないので途中で切ることもできなかった。
ちょうど家に誰も居ない時間。
以前使っていた番号とは違っていたから。
最初は私が出ないのでわざわざ番号を変えたのかと思った。
でも違っていて、義実家で使っていなかったものを使わせてもらっているらしい。
自分で携帯料金を払っている夫にとって月々の固定費は負担だったはず。
それを削れるのは大きいと思う。
留守電の声はいつもより力が無かった。
「実は伝えたいことがあってこの間から電話をかけてるんですけど………」
室内でかけているのだろうか。
周りの音は無くシーンとしていて夫の声はやや震えていた。
「先週、親父が倒れました。一応知らせておこうと思いまして」
それだけ言うと電話は切れた。
『連絡をください』でも無ければ『お見舞いに来てください』でも無かった。
最近は私もずい分強くなったという自覚がある。
大抵のことでは動じない。
今回も『そうなんだ。大変だな』という感じて聞いていたのだが。
もしかしたら私たちの離婚の件で心労をかけてしまったのではないかと少しだけ責任を感じてしまった。
仕事もリタイアして悠々自適になるはずが、未だに息子たちの面倒を見る生活。
孫にも会えず、金銭的にも負担が大きい。
健康に気を遣おうなんていう前向きな生活を送れるような状況ではない。
だから、いつかこんなことが起きるのではないかと危惧していた。
義母もあまり体調が良くなかったはず。
この状況に自分が絡んでいなかったら可哀そうだと思って助けようとしたかもしれない。
でも今回は自分たちのイザコザも絡んでいて、関わるわけにはいかない。
戻るという選択肢ももちろんない。
だからできることは無いんだけど。
心の隅っこの方で、私の我が儘なのかなと思ってしまった。
そういう弱い気持ちが出てきたら、息子がされた仕打ちを思い出して自分を思いとどまらせている。
でも、もし息子が居なかったら迷ったと思う。
ここまでくる前に戻ってしまったかもしれないし。
倒れたなんて聞いたら飛んで行ったかも、とふと思った。
そう考えると守るべきものがあるって大事なことなんだなぁ。
ある意味、息子が私を守ってくれているのだ。