息子が一年生になった頃、新しい友達ができた。
保育園の時にはいなかったような活動的なタイプの子で。
自分とは違う部分に憧れているようにも見えた。
入学直後の春頃はまだそれほど接点はなく、夏休みが明けたくらいから段々と仲良くなっていった。
放課後に誘われることもしばしばあったのだが。
夫は息子が友達と遊びに行くのを快く思わない。
というよりも、全力で不機嫌になって時には直接
「人が具合が悪いのに、よく遊びに行こうなんて思うよな」
と嫌味を言った。
そう言われてしまうと、息子としても出かけるわけにはいかない。
阻止しようとする父親を振り切って出かけようものなら、その後にどんな仕打ちが待っているか分からない。
何度も何度も誘われたのだが、結局一緒に遊ぶことができたのはたったの1回だった。
その時は夫がちょうど病院に行っていて居なかったそうで、不安に思いつつも思い切って出たらしい。
一年生くらいだと、それほど長時間遊ぶこともなく割とすぐに帰ってくる。
幸いにも夫が帰宅する前に家に到着することができ、事なきを得た。
そんな感じだったので、もうすぐ二年生になる頃にはお友達も誘うのを諦めているような雰囲気があった。
『どうせ行けないんだろ?』
そう言葉に出して言わなくても、態度で分かるものだ。
学校内では一緒に遊べても、放課後は遊べない。
いつしかそれが周りのお友達の間でも暗黙の了解となり、声をかけてもらえることも減った。
放課後つまらなそうにしている息子を見ると、週に何度か来ていた義父母が
「買い物に行こう」
とか
「○○で遊ぼう」
とか声を掛けた。
でも、息子の不満が義父母と過ごすことで解消されるはずもない。
そうこうしているうちに間もなく春休みという時期になった。
「春休みは一緒に遊ぼう。一回くらいなら良いだろ?」
しばらく声を掛けてもらえなかったのに急に誘われて、息子は嬉しかったに違いない。
いつもなら『お父さんに聞いてから』と言うのに、その時はすぐにOKしてしまった。
黙っていくことはできないから、数日前から夫に伝えて様子をうかがう。
最初は聞いても『ふーん』という感じだった。
でも、とうとう翌日が約束の日というタイミングになって急に難癖をつけはじめた。
「小学生になったのに遊んでばっかり」
「宿題は全部終わったのか」
「こっちは春先になると体調が悪くなるつってるのに」
色んな理由を付けて断らせるように仕向けた。
だけど、楽しみにしていた息子がなかなか首を縦にふらない。
約束の日になり、仕事に出かける前に夫に
「前から約束してたんだから遊びに行かせてあげてよ」
と声を掛けた。
小さな子たちだから外食するわけにもいかない。
公園で食べられるようにとお握りや卵焼きも持たせた。
仕事から帰り、
「今日はどうだったの?」
と息子に聞いてみた。
そうしたら、
「楽しかったんだけど………」
と言った後に何やら言いにくそうにしてた。
これは何かあるなとピーンときて、夫が居ないのを見計らって話を聞いた。
息子の説明はたどたどしかったが、要約すると
出る直前にお父さんが文句を言ってきて、本当に行くのかよく考えろと迫った。
それでも『行く』と意思表示したら、急に怒り出したそうだ。
「お父さんは言ったからな!よく考えろって!」
と怒鳴りながら、
「もうお前には何もしてやらねー!」
と言って私が用意しておいたお昼ご飯を取り上げた。
お昼が奪われてしまった息子は呆然として、どうしたら良いのか分からなくなった。
固まっていると、夫から
「早く行けよ!」
と強引に玄関の外に出されてしまった。