夫は秘密主義なところがある。

 

息子や私には『隠し事はするな』という癖に、自分は隠し事をする。

 

その中の一つに含まれるのが貯金。

 

以前ちらっと聞いたのだが、かなりの額の貯蓄があるらしい。

 

これは別に私が聞きだそうとしたわけではなく、勝手に夫がカミングアウトしたのだ。

 

だけど、それは結婚する前に貯められたものだから共有財産ではない。

 

人の懐を当てにするようなことはしたくないので、今まで額をたずねることは無かった。

 

基本的なスタンスはたぶんそれで正解なのだと思う。

 

でも、これまでに幾度もの家計のピンチがあって、少しだけでも助けてくれないかな?と期待したこともあった。

 

それほどの額があるのなら、ちょっとくらい助けてくれてもバチは当たらないだろうに、と。

 

そんな風に期待しても、夫が応えることはない。

 

厳しい状況で助けが欲しい時でも、夫が『少し出そうか?』と言うことは一切無かった。

 

たとえそれが息子の用途で必要になった時でも同じ。

 

『無理をせずに今できる範囲でやれば良い』と諭すように言うが。

 

生活していたらそのタイミングで絶対に支払わなければならないものがある。

 

結局最後までどれくらいの額があるのかは分からなかった。

 

自分が仕事を辞めてからは、ほんの少しずつでも息子のために積立している私を見て、

 

「増えていって良いなー」

 

と言い、

 

「こっちはもう増えることはないから」

 

と不満そうだった。

 

そりゃーそうだろう。

 

今あなたは働いていないのだから。

 

私だって、働いているとは言っても生活費を出したらほとんど残らない。

 

残らないなりに息子の将来のために少しずつ貯めていかなければと必死なのだ。

 

 

 

 

子供はあっという間に大きくなってしまう。

 

中学校、高校、大学とかかる金額も段々と大きくなる。

 

親のせいでやりたいことを諦めることになったら、それこそ大きな後悔が残るだろうと思うから。

 

そうならないためにも頑張って残そうとしているのに。

 

まるで私がズルをしているかのように『良いな』と言った。

 

去年、定期預金が満期になったとかで通帳をまじまじと見つめていることがあった。

 

何をしてるんだろうと思って見ていた私に気づき

 

「全部見たら驚くよ」

 

と言った。

 

その後に

 

「まあ教えないけど」

 

と言うので、アホらしくなってその場を離れた。

 

夫の目論見では、皆で義実家に戻って生活しつつ私が正社員の仕事を続けるはずだった。

 

それなら今後も安泰だと考えていたようだ。

 

自分の貯金は老後まで取っておかなければならないような感じだったので、ちょっと驚いた。

 

えっ、これからもずっと働かないつもりなの?と。

 

以前義父が

 

「アルバイトでも始めてみたら」

 

と助言したのだが、とても嫌そうな表情で拒否した。

 

それ以上何か言うことを許さないような雰囲気になり、そういった話をすることも無くなった。

 

恐らく夫はアルバイトという働き方を馬鹿にしているのだと思う。

 

正社員じゃなければ働く意味が無いと前に言っていた。

 

そういうところが自分自身を追いつめているのかもしれない。

 

プライドだけでは生活できないのに。

 

余談だが、私が仕事を失って職探しをしている時には『もっと貪欲に活動しろ』とはっぱをかけた。

 

『能力のない奴のプライドなんて何の役にも立たない』と吐き捨てるように言った。

 

そう言われて必死になって活動したけれど、本当は不安な時には優しい言葉をかけて欲しかった。